SHOW-HEYシネマルーム35
  
     2015年上半期お薦め50作
が出版されました!
                     (2015(平成27)年7月15日出版)
    
                          
◆『シネマルーム35』は2014年10月16日から2015年4月17日までに観た洋画68本、邦画18本、計86本の映画から、2015年上半期おすすめ50作を選び、まとめたものです。
 第1章は恒例のアカデミー賞特集です。作品賞、監督賞は本命視されていた『6才のボクが、大人になるまで。』ではなく、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が受賞しましたが、近時の賞取りレースの問題点が少しずつ顕著になっているようです。主演男優賞を『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメインが、助演男優賞を『セッション』のJ・K・シモンズが受賞したのは、その強烈な個性のおかげでしょうが、『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーはさぞかし残念だったことでしょう。なお、外国語映画賞の『イーダ』、美術賞など4部門を受賞した『グランド・ブダペスト・ホテル』は既に『シネマルーム33』に掲載しています。
 ちなみに、2月27日に発表された第38回日本アカデミー賞は、『永遠の0』(『シネマルーム31』132頁参照)が圧勝。作品賞、監督賞、主演男優賞など8部門を受賞し、助演男優賞も、『蜩ノ記』の岡田准一がダブル受賞しました。主演女優賞は『紙の月』の宮沢りえが受賞しましたが、やはり一本の人気作に偏らず、バランスよくさまざまな映画を評価したいものです。

◆『シネマ35』には4本のスリラー、犯罪モノの名作を収録しました。『悪魔は誰だ(MONTAGE)』と『殺人の疑惑』はいずれも韓国の三大未解決事件の1つである「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」を題材とした韓国映画らしい問題提起作です。そして、中国映画の『薄氷の殺人(白日焰火/BLACK COAL, THIN ICE)』も、イスラエル映画の『オオカミは嘘をつく』も、それに負けない力作です。日本でもかつて「吉展ちゃん誘拐事件」がありましたが、今や日本では真正面から堂々とそんな事件を映画化するのは困難です。それに比べて、韓国、中国、イスラエル映画の見事さは驚くばかりです。
他方、ド派手な歌と踊りが特徴だったインド映画でも『チェイス!』『女神は二度微笑む』というミステリーの名作が生まれ、アメリカでは『デビルズ・ノット』『ジャッジ 裁かれる判事』といういかにもアメリカらしい裁判モノの名作が登場しました。また、「東西冷戦」は終わりを告げたはずですが、平和ボケした日本人には容易に理解できないスパイ映画『誰よりも狙われた男』は注目作です。それに比べると、宮沢りえの演技力には感心させられるものの、『紙の月』に見る単純な犯罪はいかにも日本的かつ現実的。そんな犯罪と、劇画タッチの架空の物語『シン・シティ 復讐の女神』の犯罪と対比してみるのも一興かもしれません。

◆今やフランスでは「法律婚」よりも「事実婚」の方が多くなっているうえ、世界的に「同性婚」承認の流れが強まっています。日本でも「夫婦別姓」論者が増えています。そんな時代状況の中、夫婦のあり方もいろいろで、『96時間/レクイエム』に見る、妻ひとすじのパターンもあれば、『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』に見る、妻が3人というパターンも・・・。また、中国の毛沢東時代、文化大革命時代には、『妻への家路(帰来/COMING HOME)』に見る、何とも悲しい夫婦もあれば、経済大国となり、海洋国家を目指す現在の習近平政権下では、『二重生活(浮城謎事/Mystery)』に見る、正妻と愛人の両立も・・・。
 結婚5年の記念日に突然妻が失踪し、夫である自分がその殺人犯に仕立て上げられたら、さてあなたなら・・・?また、子供を授かることは夫婦にとって実にうれしいことですが、「子供ができたの、あなたの子供ではないけれど・・・」と言われたら、さてあなたなら?夫婦もいろいろですから、そんな夫婦がいてもおかしくはないはず。そんなテーマで生まれた映画が、『ゴーン・ガール』と『ヴェラの祈り』ですが、これを観ると、夫婦でもいかに女ゴコロは不可解かがよくわかります。さらに、『メビウス』は、全編セリフなしの中で展開される「男性器チョン切り事件」ですが、そこでキム・ギドク監督が描く夫婦像とは?

◆2014年は、女優・安藤サクラの当たり年。『0.5ミリ』と『百円の恋』に主演した安藤サクラが、見事に2014年、第88回キネマ旬報ベストテンの主演女優賞を受賞したのは、映画ファンなら誰もが納得するものです。他方、私がベストテン投票メンバーをつとめている第10回おおさかシネマフェスティバルでは、『欲動(TAKSU)』を監督、プロデュースした杉野希妃が新人監督賞を受賞しました。彼女は女優として同作の他、『禁忌(sala)』にも出演しているうえ、今後は『マンガ肉と僕』の公開が控えており、「アジアのミューズ」として多方面にわたる活躍が期待されます。
「0.5mm」も微妙な距離でしたが、「あと1センチ」も微妙な距離だし、「5分前」も微妙な時間です。それらをタイトルにした、ドイツ、イギリス映画『あと1センチの恋』、日本、中国合作映画『真夜中の五分前』が描く男女の恋愛とは・・・?他方、必ずしも恋愛は1対1の男女で成り立つものばかりではなく、「ラブホ」を拠点として見れば、毎日毎夜さまざまなカップルの男女の恋模様が・・・。女も口説けない草食系男子が増殖している昨今、この3作品から、こんな恋愛、あんな恋愛を学びたいものです。

◆兵庫県西宮市選出の県会議員だった野々村竜太郎氏の「号泣会見」は前代未聞のニュースでしたが、国会議員はもとより、都道府県議会議員と市町村議会議員の職業意識の無さと使命感の欠如には呆れるばかりです。私は弁護士という自分の職業に誇りと使命感をもって40年間活動してきましたが、第5章「職業別生き方あれこれ」に収録した作品からは、その卓越した職業観と使命感を学ぶことができます。カメラマン(『おやすみなさいを言いたくて』)、ダンサー(『毛皮のヴィーナス』)、画家(『ビッグ・アイズ』)、映画スター(『マップ・トゥ・ザ・スターズ』)、4000m走選手(『ミルカ』)、総合格闘技(MMA)選手(『激戦 ハート・オブ・ファイト』)等の職業に誇りと責任をもった生き方をしっかり学びたいものです。そんな作品から見れば、『トム・アット・ザ・ファーム』は難解な映画ですが、「口裂け男」の寓話も考えながら、しっかりあなたの職業を考えてみてください。

◆2014年7月に集団的自衛権の憲法解釈の変更を断行した安倍晋三政権の下、自公の協議を重ねながら、今年4月まで安保法制の条文化作業が進められてきました。日本は平和を満喫していますが、ウクライナやイラクでは今なお戦争(戦闘)が続いているし、「チェチェン紛争」だって決して過去のものではありません。2015年は戦後70年の節目の年となるため、2015年下半期(『シネマ36』)では戦争映画を特集する予定ですが、『シネマ35』では「戦争モノ」として『フューリー』と『あの日の声を探して』を収録しました。また、『パリよ、永遠に』をあの時代に存在した「積極的平和主義」の1つの態様として取り上げましたが、徳川時代の1726年に岡山県真庭地域で起きた「山中(さんちゅう)一揆」もその1つの態様です。『パリよ、永遠に』ではヒトラーからパリを爆破すべしとの命令を受けたナチス将校VS美しきパリを守りたいと願うスウェーデン人外交官との対峙に、『新しき民』では「逃げた男」と「闘う男」の対峙に注目しながら、積極的平和主義のあり方を探求したいものです。
他方、『スラムドッグ$ミリオネア』に見た、スラム街に生きる少年たちも活力がありましたが、『トラッシュ! この街が輝く日まで』に見るリオのゴミの山で生活する少年たちの活力にも脱帽。そして、第9回大阪アジアン映画祭で観客賞を受賞した『KANO 1931海の向こうの甲子園』に見る台湾の嘉義農林学校の野球部員たちのエネルギーにも脱帽です。日本では第79回マスターズゴルフで松山英樹選手が11アンダー、第5位という立派な成績を残しましたが、毎早朝のテレビでそのプレーを見ていた私は、日本の若者も捨てたもんじゃない!と大いに感激しました。世界をチェンジする若者のエネルギーを私が松山クンから感じたのと同じように、これらの映画からもそれを感じてほしいものです。

◆中・高校時代を愛媛県松山市にある愛光学園というカトリック系の中高一貫教育の男子校で過ごした私は、それなりにキリスト教への興味があります。聖書をまともに読んだことはありませんが、中・高校時代に「学校推薦」で観た『十戒』『キング・オブ・キングス』『ベン・ハー』『スパルタクス』等の映画で、聖書の世界は十分イメージできています。そんな私にとって、「聖書の完全映画化」と謳った『サン・オブ・ゴッド』は、『パッション』と共に涙なくして観られなかった映画です。イエス・キリストの存在を信じる人も、信じない人もこりゃ必見!チャールトン・ヘストンが主演した『十戒』における海の割れる大スペクタクルシーンは団塊世代の人なら、誰でも覚えているはずですが、「映像の魔術師」と呼ばれるリドリー・スコット監督が、その最新版を!モーゼの神の残酷さにも注目しながら、モーゼの『十戒』をどう位置づけるのかという重いテーマにも取り組みたいものです。他方、『シネマ35』には『神は死んだのか』と『天国は、ほんとうにある』という両極端(?)な映画を収録しました。かつて、西鉄ライオンズの稲尾和久投手は「神サマ、仏サマ、稲尾サマ」と呼ばれましたが、他方で「神も仏もないものか」という嘆き節もよく聞かされます。しかして、この両作品を観れば、さて神の存在は?
                                                 以  上