SHOW-HEYシネマルーム30
  
     2013年上半期お薦め50作』が出版されました!
                    (2013(平成25)年7月15日出版)
    
                          
◆2002年6月の『SHOW-HEYシネマルームⅠ~二足のわらじをはきたくて~』の出版から11年。2013年の今夏は記念すべき『シネマルーム30』の出版となりました。この間に鑑賞した映画は何と2500本余り。長い間弁護士と映画評論家という二足のわらじを履き続けてきた賜物です。『シネマルーム30』は、2012年10月31日から2013年4月30日までに観た洋画64本、邦画11本、計75本の映画から2013年上半期お勧め50作を選びまとめたものです。

◆名作・名優揃いの第85回アカデミー賞は大激戦となって一人勝ち作品は登場せず、キネマ旬報恒例の3氏の映画評論家による事前予想(3月上旬号)でも、3人がピタリと当てたのは助演女優賞のアン・ハサウェイ(『レ・ミゼラブル』)だけでした。主演女優賞で激突した『世界にひとつのプレイブック』と『ゼロ・ダーク・サーティ』を偶然同じ日に同じ試写室で鑑賞した私は、ズバリ作品賞は『ゼロ・ダーク・サーティ』、主演女優賞はジェシカ・チャスティンと予想しましたが、これは大はずれ。作品賞は『アルゴ』、主演女優賞は『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンスが選ばれました。また、主演男優賞は『フライト』で熱演したデンゼル・ワシントンを押さえて『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイスが受賞しましたが、これは当然と納得できるもの。また見逃していた『アルゴ』は凱旋公開ではじめて鑑賞し、なるほどと納得。それに対して『ライフ・オブ・パイ』の美しい映像は印象的でしたが、作品としては『ジャンゴ 繋がれざる者』の方が面白かったため、李安(アン・リー)の監督賞はちょっと意外でした。

◆『シネマルーム』では、いつも人生や友情そして男(女)の生き方をテーマにしていますが、混迷を深めている世界情勢を受けて『シネマルーム30』では男(女)の生き方を描いた映画が多くなりました。もちろん、人間の生き方は世代や政治・経済・社会情勢によって規定されるうえ、男と女の恋愛も絡んできますが、本書では、あえて第2章、第3章をすべて「生き方」に統一しました。第2章と第3章を比べると、男と女の生き方の違いがくっきりと浮かびあがるはずです。
 第2章の『キング・オブ・マンハッタン』と『ヒッチコック』は老境に入りかけた男の生きザマでしたが、それ以外の主人公はみんな男盛りの世代です。そんな世代なればこそ、『アウトロー』や『ベラミ 愛を弄ぶ男』、そして『砂漠でサーモン・フィッシング』『人生、ブラボー!』のような自由奔放な生き方を享受できたわけですが、『もうひとりのシェイクスピア』や『王になった男』に見る、「なりすまし人生」の苦しさは・・・。それに対して「女は恋が命」とよく言われますが、第3章の『アンナ・カレーニナ』『ロイヤル・アフェア』『後宮の秘密』を観れば、恋にかけた女の人生の楽しさと苦しさがよくわかります。日本は平和で安全な国ですが、『東ベルリンから来た女』『シャドー・ダンサー』を観れば、女だって激動の時代に翻弄されることが、また『声をかくす人』や『アルバート氏の人生』『イノセント・ガーデン』を観れば、女には人には絶対に明かせない、人生を賭けた秘密があることがわかります。さらに、近時中国人留学生との接点が増えている私は『ロスト・イン・北京』『ある海辺の詩人』に見る中国人女性の生き方を興味深く観察しましたが、冷え込んだ日中関係を改善するためには、是非あなたも・・・。

◆小津安二郎監督の『東京物語』が2012年英国映画協会発行の『サイト・アンド・サウンド』誌で「史上最も優れた映画」の世界第1位に選出されたのは大きな驚きでしたが、山田洋次監督が第4章の『東京家族』で60年ぶりのリメイクに挑戦したことにはさらにビックリ!同作で同監督は、「瀬戸内の小島」に住む老夫婦とその息子・娘たちの絆の危うさと、それでも次の世代に託す希望を見事に描き切りました。他方、珍しく静かなタッチで描いた若松孝二監督の『千年の愉楽』にみる「被差別部落」や「路地」の問題提起は刺激的でした。そして『アナザー・ハッピー・デイ』では問題児ばかりの大家族の絆を!さらに、第4章では、『カルテット!』『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』から老人たちの明るく楽しい生き方を学ぶと共に、『明日の空の向こうに』『命をつなぐバイオリン』『魔女と呼ばれた少女』『三姉妹』からは、時代に翻弄され命の危険にさらされながらも、力強く生きていく子供たちの姿に涙して下さい。

◆近時、戦争映画が少ないのが不満ですが、第5章では、『裏切りの戦場』『二つの祖国で』『戦争と一人の女』という一風変わった戦争映画からその「実態」をしっかり学んで下さい。また、2011年の3・11東日本大震災から2年を経た今、復興は遅々として進んでいませんが、1986年のチェルノブイリ原発事故の悲惨さを改めて思い起こさせてくれる『故郷よ』と共に、『おだやかな日常』の問題提起をしっかり受けとめて下さい。さらに、不安な世の中になると常に抬頭してくるカルト集団の危うさを『ザ・マスター』と『マーサ、あるいはマーシー・メイ』から、日本で一世を風靡した団地の今昔を『みなさん、さようなら』から学ぶと共に、『北のカナリアたち』では芸達者な若手俳優と共演した吉永小百合の「清く正しく美しく」からの脱却ぶり(?)を味わって下さい。

◆第6章では、スパイ映画は『007』、陰謀モノは『ヒンデンブルグ』が出色でした。中国流アクションは『ライジング・ドラゴン』と『グランド・マスター』でタップリと。最後に『恋する輪廻』の「これぞ娯楽!これぞボリウッド!」というド派手な演出を、『ドラゴンゲート』のそれと対比しながらタップリ堪能して下さい。
                                                   以上