はじめに

1 交通事故は起こしたくないもの。ましてやその被害者には絶対になりたくないもの。これは人間誰しも同じ気持です。しかし、明治時代ならともかく、今や車なしでは人間社会は成り立つことはできません。そして車の運行によって不可避的に発生するのが交通事故。飲酒運転や暴走運転は論外ですが、いくら交通法規を守り慎重に運転していても、確率的に車の事故を避けることはできません。

2 車を持つには保険、車を運転するには保険、ということはわかっていても、今や自動車保険の種類も増え、何が最も合理的な費用対効果のあり方なのかを決めることも難しくなっています。まして、いざ交通事故が発生し加害者となった場合、「まずは保険会社に連絡」とまではわかっていても、その後の示談折衝がどうなるのかがわからなければ不安いっぱいです。

3 逆にあなたが交通事故の被害者となった場合、加害者や加害者の加入する保険会社との示談折衝は困難をきわめるはずです。治療費は当然として休業補償は払ってくれるのか?また慰謝料は?どんな書類をいつ提出すればいいのか?そして保険会社の担当者が言っていることは本当に正しいのか?実に多くの不安にさらされることでしょう。そしてまた実際に交通事故の被害者となってみてはじめて、自分の考えている常識と現実の事故処理の違いにビックリすることでしょう。そんなあなたにとって、交通事故の示談処理についていまさら人に聞けないことがいっぱいあるはずです。

4 この本は、そんなあなたの疑問に答えるべく、適切な質問を用意しその回答をわかりやすくまとめました。もちろん、その中には必要最小限覚えなければならない交通事故の示談処理特有の言葉や概念が含まれています。それについては、何度も口に出してしゃべってみることによって、その言葉を自分のものとして下さい。そして、そこに書かれてあることを実際に自分で声に出して読んでみて下さい。そうすれば、いまさら人に聞けないと思いつつ悩んでいたことがきっとわかってくるはずです。さあ、興味のある設問から自信をもって読み進んでいきましょう。

                  2005(平成17)年4月26日

                     弁護士  坂 和 章 平