はしがき

 二〇〇〇(平成一二)年七月三一日に出版した『実況中継 まちづくりの法と政策』は一九九九年一一月愛媛大学法文学部で実施した四日間の「都市法政策」の集中講義をまとめたものですが、幸いにも多くの方々から「これはおもしろい」「こんな切り口の本が欲しかった」と好評を博しました。そんな中、都市的土地利用研究会(都土研)でお世話になっていた東京理科大学の渡辺俊一教授から、「日本都市計画学会に石川賞という賞がある。この本は石川賞の趣旨に合致したおもしろい本だ。応募してみてはどうか」とありがたいお話がありました。私は、石川賞がどれほど価値のある賞かもロクに知らないまま、「可能性があるのなら、ダメもとでやってみよう」という気持ちで〇一年一月申請書を提出しました。さらにその直後、日本不動産学会において、平成一二年度日本不動産学会賞の論文賞・著作賞・研究奨励賞・実務著作賞・湯浅賞の募集があることを知り、厚かましくもこの本を実務著作賞の対象としても応募しようと思い、〇一年三月申請書を提出しました。そして〇一年五月、なんと石川賞と実務著作賞の両者をダブル受賞するという思いもよらない結果となったのです。この受賞は、何よりも大学での四日間の集中講義というチャンスを与えていただいた愛媛大学の矢野達雄教授そして申請のお世話をして頂いた渡辺教授の尽力のたまものです。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

 矢野教授からは都市法政策の集中講義は二年に一度やってほしいと言われていたため、〇一年一月の時点で〇一年一二月七から一〇日の四日間、合計一五コマ分の集中講義の日程を決めていました。第二回の集中講義の日程が近づき、テ−マ探しやレジメづくりの作業に入った時、九九年一一月時点での都市法政策のテ−マと〇一年一二月時点での都市法政策のテ−マは大きく異なることを実感しました。すなわち、日本の都市法制の基本枠には何らの変更もありませんが、政治的・経済的・社会的状況には、不良債権処理の遅れを原因とした経済不況の深刻化と〇一年四月の小泉内閣の突然の登場という大きな変化がありました。
 また実務的な観点からは、第一回講義では地方分権と行政改革の実現が大きな焦点でしたが、今回の焦点は〇一年五月に施行された都市計画法の三二年ぶりの大改正でした。
 さらに私が都市問題に取り組むきっかけとなった駅前再開発は、地価の下落・キーテナントの撤退・保留床の売れ残りという「三重苦」の中、その多くが破綻に瀕しており、「このまま放置すればエライことになる」という強い問題意識が芽生えていました。

 他方、〇一年一〇月開設した坂和総合法律事務所のホームページにおける「趣味のページ」は急速に充実しました。映画評論の本数は約五〇本に及んでおり、「法律と映画」というタイトルでの出版を狙うところまで映画評論の意欲は高まっていました。
 二〇〇一年の日本は一九四五年の敗戦から五六年ですが、サンフランシスコ講和条約から五〇年、パールハーバーから六〇年、柳条湖事件から七〇年等、日米、日中関係において大きな節目の年でした。したがって、私がホームページに載せた〇〇年八月の大連・瀋陽の旅行記、〇一年八月の西安・敦煌の旅行記は、日中関係に焦点をあてた問題提起を兼ねたものになっており、「戦後五六年」が一つのキーワードでした。このため第二回の集中講義では、こんな私の問題意識をたくさんレジメに書き込みました。また一日目第一限の講義は、映画『宋家の三姉妹』の話から入りました。
 パートUが前著と同じく『実況中継 まちづくりの法と政策』というタイトルを維持しているのは、パートUも前書と同じ狙いの本だからです。しかしその内容においては、前著との重複を避け、〇一年一二月時点におけるわが国の都市法政策の諸問題を縦横無尽に実況中継しています。第二回の統一テーマは、サブタイトルのとおり「都市再生とまちづくり」であり、主なキーワードは@戦後五六年、A破綻する都市再開発、B小泉改革です。

 前著に続いてパートUに挑戦してみて下さい。そして余裕のある方は、前著もあわせて読んでみて下さい。パートUも前著と同じく、どのページから読んでもらっても結構です。そして「都市法政策」という難しいものにこだわらなくても結構。矢野教授から「坂和節」と評していただいた坂和流の切り口・語り口を体験して下さい。そして私に対して議論をぶつけてきて下さい。期待しています。それでは、いよいよ坂和節のはじまりです・・・。

 二〇〇二(平成一四)年五月二〇日
                                        弁護士 坂 和 章 平