人物交遊録          

   塩屋俊氏(映画監督・俳優)
   第1回(事務所だより第12号・2009年新年号)


(1)  08年9月中旬、私のケータイに塩屋俊監督から電話があった。それは、彼が監督した『きみに届く声』が梅田ブルク7で公開されるので是非観てほしい、といううれしい案内。これは渡辺淳一の原作『少女の死ぬ時』を眞木大輔、杉本哲太、戸田菜穂、寺島咲、西岡徳馬らの出演で映画化したもの。離島の病院を舞台とし、「強くなりたい!」というテーマで若手医師の悩みと確執が描かれる作品。9月20日から1週間の限定公開だから鑑賞した人は少ないだろうが、私が彼と知り合い交流を深めるきっかけとなった、『0(ゼロ)からの風』(07年)と同じような問題提起作だ。
(2) 弁護士登録以来35年間ずっと交通事故による損害賠償事件を扱っている私は、07年、08年と交通事故をテーマとした講演が続いている。そこで飲酒運転撲滅と事故防止をアピールするため私がいつも予告編を上映しているのが、『0(ゼロ)からの風』。これは無免許、飲酒、暴走運転で息子をひき殺しながら、加害者は業務上過失致死による軽い処罰しか受けないのなら、「私たちが法律をつくります」と宣言して署名運動を展開し、01年12月に危険運転致死傷罪を新設させた鈴木共子さんの姿を描いた問題提起作。
(3) そんな塩屋俊監督との交遊は、この映画について私が書いた評論を通じて始まったのだから映画評論を書くことの意義は大きい。彼は全国を走り回りながら多方面の活動を展開しているため会えるチャンスは少ないが、焼肉+焼酎、焼き鳥+焼酎となれば、いつも楽しい議論がエンドレス。10月4日には『きみに届く声』についての議論を闘わせ、11月29日には映画談義に盛り上がりつつ、次回作の構想を伺った。そんな塩屋俊監督の次の企画とその完成を期待し注目したい。
    
                             11月29日(土)天神橋筋商店街に
                             ある激ウマ焼肉店『万両』での食事
                             の帰り、ほろ酔い気分で。
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   第2回(事務所だより第18号・2012年新年号)

1)塩屋俊監督とは、事務所だより第12号(09年新年号)交遊録その5で紹介したとおり、『0(ゼロ)からの風』(07年)以来の交遊。『きみに届く声』(08年)に続く『ふたたび swing me again』(10年)では企画・脚本段階から参加し、クライマックスシーンの撮影には夫婦でエキストラとして参加した。さて白髪頭に気づいた方は?
彼の中国での展開も拡大し、2010年の上海万博では、阪神・淡路大震災で実際に姉を失った古筝奏者伍芳(ウー・ファン)を起用した音楽劇『彩虹橋in上海万博』を大成功させ、神戸では『彩虹橋』を凱旋公演した。そんな彼は東京で「ウィル・ドゥ」を経営すると同時に、大阪では「アクターズクリニック」を経営しているから、今や忘年会の相互参加とスタッフ同士の交流は年中行事となったが、近時は弁護士業務としての関与も次第に拡大中。
2)それは、映画監督として創造の世界に生きていく上で必然的に伴う特許権の問題や資金集め・資金回収の財務問題などが活動の広がりと共に拡大してきたためだ。最新作『種まく旅人〜みのりの茶〜』の制作、映画『原信太郎 鉄道模型の世界』の制作や学校法人大手前学園で上映するミュージカル『大手前ルネッサンス/ミュージカル』の制作などはいずれも企画段階から相談にあずかっている。近時は更に大きなプロジェクトも進行中。そのひとつは、マーロン・ブランド、ロバート・デニーロなど数々の名優を輩出したアメリカの名門演技学校である「ステラアドラー校」と相武紗季、桐谷健太など注目の若手俳優を多く指導してきた日本を代表する演技学校アクターズクリニックとの業務提携。これは彼の俳優時代のアメリカでの数々の活躍を基盤としたものだが、これが軌道にのれば、より表現力を持った若手俳優の育成に寄与できることまちがいなしだ。
3)もう1つは、11年10月から始めた「Remember 3.11」を合言葉とした「HIKOBAE PROJECT」の展開。これは東日本大震災で大きな被害を受けた相馬市の復興記録であるドキュメンタリー『HIKOBAE』の制作をメインとし、ドラマ制作やノベライズ出版、さらには日米での舞台公演などを内容とした大プロジェクトだから、弁護士として関与すべきテーマも多い。同時並行的に複数のプロジェクトを進め、東京・大阪間のみならず海外を駆け巡る彼は、頭の回転も速ければ舌の回転も速い。しかし、こちらも弁護士としての案件処理のスピードにおいては誰にも引けをとらないつもり。
4)そんな2人のすばらしい交流ぶりは、焼肉+焼酎、焼き鳥+焼酎にとどまらず、互いの本業でのぶつかり合いに深化し、かつ激化している。「新しいもの好き」と「何でも前に突っ走れ」は2人に共通する性格だが、弁護士業務として彼の業務展開をフォロー・チェックしていくためには、私の方が多少引き締めなければ、と自戒している。今後も同時並行的にあれこれの企画が持ち上がることは確実だから、細かい実務を担当してくれる強力な助っ人・坂和宏展弁護士と共に、塩屋監督の期待に応えていきたい。
             
        2011年9月、2人共お気に入りの鰻料理『志津可』にて