洋17-5 (ショートコメント)

「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」

                                              

            2017(平成29)年1月10日鑑賞<ビジュアルアーツ大阪試写室>

監督・撮影:ジャンフランコ・ロージ
ピエトロ・バルトロ医師(ランペドゥーサ島唯一の医師)
サムエレ(ランペドゥーサ島の12歳の少年、漁師の息子)
ピッポ(ラジオのDJ)
2016年・イタリア、フランス映画・114分
配給/ビターズ・エンド

◆私はどちらかというとアニメ映画とドキュメンタリー映画はあまり好きではない。しかし片渕須直監督の『この世界の片隅に』(16年)は、『君の名は。』(16年)のような興行収入200億円を超えるような大ヒットではないものの、小劇場から人気がじわじわと広がり2016年の第90回キネマ旬報ベストテンでアニメ映画として初の第1位を獲得したからすごい。
 また昨年12月11日に観た『湾生回家(Wansei Back Home)』(15年)も心暖まる懐かしいドキュメンタリー映画だったし、中国映画のドキュメンタリーの名作である王兵(ワン・ビン)監督の『鉄西区(Tie Xi Qu/West Qu/West of Tracks)』(03年)(『シネマルーム5』369頁参照)や『無言歌(夾辺溝/THE DITCH)』(10年)(『シネマルーム28』77頁参照)、『三姉妹~雲南の子(三姉妹/Three Sisters)』(12年)(『シネマルーム30』184頁参照)、『収容病棟 (瘋愛/'TIL MADNESS DO US PART)前編』(13年)(『シネマルーム34』285頁参照)も、長く心に残っている。

◆他方、ジャンフランコ・ロージ監督の『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13年)(『シネマルーム33』未掲載)は、2013年の第70回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したドキュメンタリー映画だが、私には、タイトルどおり、「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」を描いた(だけの)、退屈な映画だった。
 しかして、本作はそれに続くジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリー映画で、2016年度のベルリン国際映画祭で金熊賞(最高賞)を受賞した作品。つまり、ジャンフランコ・ロージ監督は二作連続で世界三大映画祭の最高賞を受賞しただけでなく、ベルリン、ベネチアと、ドキュメンタリー映画で初の最高賞を受賞するという快挙を成し遂げたわけだが、その出来は?

◆地中海にあるイタリア最南端の島シチリア島は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89年)の舞台として有名。フランシス・フォード・コッポラ監督の名作『ゴッドファーザー』(72年)で、アル・パチーノ演じるマイケルが逃げ込んだのもシチリア島だ。他方、ナポレオンが生まれたのは、地中海の西部、イタリア半島の西にあるフランス領のコルシカ島。その面積は約8,680k㎡(日本の広島県とほぼ同じ)と、地中海では4番目に大きい島だ。
 それに対して、本作のタイトルになっているランペドゥーサ島はシチリア島から南西へ約220km、逆に南の対岸にあるアフリカ大陸のチュニジアの海岸から東へ113kmに位置し、面積は20.2k㎡(日本の鹿児島県与論島とほぼ同じ)、人口は約5500人の島だが、なぜその島の名前が映画のタイトルに?その島は何で有名なの?

◆2016年の十大ニュースのトップは、何といってもアメリカの大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が民主党のヒラリー・クリントンに勝利したこと。それに続くNo.2のニュースは、2016年6月23日の国民投票においてイギリスのEU離脱が決まったことだ。大方の予想を裏切る投票結果になった原因は、何よりもアフリカや中東から地中海を渡ってヨーロッパに向かう難民問題の深刻さだ。そんな大問題を映画化しない手はない。そう思うのは当然だが、さてジャンフランコ・ロージ監督は本作にどんなスタンスで挑んだの?
 本作の多くは難民救済にあたる現場の人々にスポットライトを当てているが、登場人物としては①ランペドゥーサ島ただ一人の医師であるピエトロ・バルトロ医師、②ランペドゥーサ島の12歳の少年で漁師の息子のサムエレ、③ラジオのDJのピッポの存在感が大きい。本作はそんな人物たちが織りなす物語(?)が次々と展開していき、プレスシートには著名人たちが絶賛する推薦文が並んでいるが、私には本作はイマイチ・・・。

◆来たる1月20日に就任式を迎えるトランプ次期アメリカ大統領の(攻撃)ツイートは日に日に激しさを増し、近時は日本のトヨタにまで及んでいる。しかして、その矛先はハリウッド女優メリル・ストリープにも及んだ。それは、メリル・ストリープが1月8日のゴールデン・グローブ賞授賞式のスピーチでいろいろとトランプ氏を批判したことへの反撃で、彼は「メリル・ストリープはハリウッドで最も過大評価されている女優の一人」とツイートした。
 もちろん私には両者の主張のどちらが正しいのかわからないが、本作に金熊賞を与えた第66回ベルリン国際映画祭審査委員長を務めたメリル・ストリープは、本作を「想像力に富み、現代を生きる私たちに必要な映画。今すぐ見なくては!」と絶賛している。それを読んだことが、私が「本作は必見!」と考えた大きな理由だが、鑑賞後にこの評価に疑問を持ち始めると、トランプ氏のツイッターにも少し賛意が・・・。

                                  2017(平成29)年1月12日記