日17-38 (ショートコメント)

「ANTIPORNO アンチポルノ」
    

               2017(平成29)年3月14日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督・脚本:園子温
京子(作家)/冨手麻妙
典子(京子のマネージャー)/筒井真理子
2016年・日本映画・78分
配給/日活

◆園子温監督が「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」に「参入」したと聞けば、こりゃ必見!さらに『淵に立つ』(16年)で圧倒的な存在感を見せつけた女優・筒井真理子(『シネマルーム38』79頁参照)が出演し、ヌード姿を披露すると聞いたうえ、『キネマ旬報』3月上旬号の「REVIEW 日本映画&外国映画」では、いつも点数の辛い北川れい子氏が珍しく星5つをつけて「特に筒井真理子が素晴らしい。」と書いていたから、こりゃ必見!そう思ったが・・・。

◆行定勲監督の『ピンクとグレー』(16年)は、「前半1時間が劇中劇だった」というあっと驚くアイデアがよく効いていた(『シネマルーム37』242頁参照)。本作もそんなアイデアを借用しており、導入部では小説家兼アーティストとして一躍時代の寵児となった京子(冨手麻妙)がご主人で、典子(筒井真理子)がマネージャーという役柄だったが、実は・・・。
 『恋におちたシェイクスピア』(98年)をはじめ「劇中劇」は面白いものが多いが、本作の面白さはそのタイトル通り「アンチポルノ」の主張をどこまで貫徹できるか否かによって決まるはず。しかして、京子は「処女なのに売女 自由なのに奴隷」「ポルノ=反体制」と叫ぶが、その説得力は?

◆私は『愛のむきだし』(08年)(『シネマルーム22』276頁参照)を見て園子温監督の「力量」に感服し、「こりゃ日本のキム・ギドク監督!」と尊敬。その後の、『ちゃんと伝える』(09年)(『シネマルーム23』221頁参照)、『冷たい熱帯魚』(10年)(『シネマルーム26』172頁参照)、『恋の罪』(11年)(『シネマルーム28』180頁参照)の魅力にハマってしまった。ところがその後は、『ヒミズ』(12年)(『シネマルーム29』210頁参照)、『希望の国』(12年)(『シネマルーム29』37頁参照)、『ラブ&ピース』(15年)(『シネマルーム36』228頁参照)は良かったものの、『TOKYO TRIBE』(14年)(『シネマルーム33』未掲載)、『新宿スワン』(15年)(『シネマルーム35』未掲載)、『リアル鬼ごっこ』(15年)(『シネマルーム36』未掲載)、『ひそひそ星』(16年)(『シネマルーム38』未掲載)、『園子温という生きもの』(16年)(『シネマルーム38』未掲載)と、私にはすべてイマイチだった。
 本作で主役の京子役に起用した冨手麻妙は園子温監督の秘蔵っ子らしいが、ヌード姿で一人で踊る京子の豊満な肢体は『恋の罪』で見た神楽坂恵とそっくり。彼はその後神楽坂恵と結婚したが、本作で冨手麻妙を起用したことによって、その私生活にもひょっとして何らかの影響が・・・?

◆それはともかく、本作が「アンチポルノ」とタイトルされているのは、一見して「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の趣旨と正反対(?)だが、それでいいの?また「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」のマニフェストの1つは「10分に1回の濡れ場」だが、私には本作の「濡れ場」は「アンチポルノ」という声高な主張のためか、かなり省略されている感が強い。筒井真理子のヌード姿の披露は立派だが、「日活ロマンポルノ」と言う以上、観客を納得させる「濡れ場」シーンが10分に1回はなければダメなのでは・・・。

◆チラシには「極彩色に彩られたファンタジックな世界で展開する物語には、女性の自由とは?心の解放とは?を問う深淵なテーマが秘められている。」と書かれているが、私には本作はいかにも「漫画的」・・・。
 いくらアナーキーな園子温監督とはいえ、「総尺80分前後 10分に1回の濡れ場 製作費は、全作品一律 撮影期間は、1週間 完全オリジナル作品 ロマンポルノ初監督」という「新ロマンポルノマニュフェスト」の制約(?)の中で、そんな政治的(?)かつ、大向こう受けを狙った(?)チャレンジをしなくてもよかったのでは・・・?
                               2017(平成29)年3月17日記