日17-17 (ショートコメント)

「ジムノペディに乱れる」
    

                   2017(平成29)年2月1日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督・脚本:行定勲
脚本:堀泉杏
古谷慎二(映画監督)/板尾創路
結花(映画学校の学生)/芦那すみれ
安里(若手女優)/岡村いずみ
2016年・日本映画・83分
配給/日活

◆「日活ロマンポルノ」が生まれたのは1971年。大学生だった私が学生運動に見切りをつけ、司法試験の勉強を始めた頃だ。映画界全体が斜陽の時代に入り、1971年には大映が倒産、日活も製作中止に陥る中、やむをえず従来のピンク映画に代わって、低予算で大量生産ながらも、少し上等なポルノ映画をつくり始めたわけだ。
 「日活ロマンポルノ」と名づけられたそのシリーズは、路線が終了する1988年までの17年間に合計1100本以上が製作され、その中で滝田洋二郎、高橋伴明、廣木隆一など後の多くの名監督が誕生し、白川和子、宮下順子をはじめとする多くのロマンポルノスター(女優)も誕生した。

◆近時はなぜかロマンポルノの復活の動きが顕著となり、2012年5月には日活の創立100周年記念企画「生き続けるロマンポルノ」が開催された。これを受けてテアトル梅田では、2012年7月28日から8月10日まで『一条さゆり 濡れた欲情』(72年)や『赫い髪の女』(79年)等の日活ロマンポルノを代表する14作品が上映された。さらにシネ・ヌーヴォは、2016年12月24日から2017年1月20日まで「生誕45周年 ロマンポルノ、狂熱の時代」と題して、厳選されたクラシックの傑作19本を特集した。

◆他方、2016年には「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」が発表され、シネ・リーブル梅田は1月28日から3月25日まで「豪華監督陣による表現の祭典!日活ロマンポルノが再起動」と題して、塩田明彦監督、白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督の新作5作を特集した。その「新ロマンポルノ・マニュフェスト」は「総尺80分前後」「10分に1回の濡れ場」「製作費は、全作品一律」「撮影期間は、1週間」「完全オリジナル作品」「ロマンポルノ初監督」ということだけだ。さあ、その第1弾たる行定勲監督の本作の出来は?

◆行定勲監督といえば、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)(『 シネマルーム4』122頁参照)に観た「泣かせるラブストーリー」「泣かせる純愛劇」で有名だし、『ピンクとグレー』(16年)(『シネマルーム37』242頁参照)で観た、あっと驚く設定もすばらしかった。他方、本作に主演する板尾創路は『板尾創路の脱獄王』(09年)(『シネマルーム24』178頁参照)で初監督、初主演した、さまざまな顔を持つ才人だ。
 その板尾創路が本作では、かつての名作『六月の消えた日』でベルリン映画祭で受賞した名監督ながら、今は映画製作に行き詰まり、日々自堕落な生活を送っている映画監督という、今の映画界を象徴するかのような複雑なキャラの主人公・古谷慎二役を演じている。「精神が研ぎ澄まされていれば、金がなくても映画だ」と何ともカッコいいセリフを吐く割には、古谷の生きザマは無気力で不格好だ。ところが、若い女にかけては①隣人の女、②現在製作中の映画の主演女優・安里(岡村いずみ)、③自分が教える映画学校の学生・結花(芦那すみれ)、④別れた元妻、⑤現在の妻が入院している病院の若い看護師、等毎日とっかえひっかえコトに及んでいるからこんな男はおよそダメ。でも、やっぱり映画監督という肩書きがあれば、若い女たちには少し知的なおじさんに見えるの・・・?

◆「日活ロマンポルノ」が長く人気を保った理由は、何よりもチャレンジ精神にあふれた若い監督たちのアイデア、企画を次々と実現させた日活の懐の深さだが、時代ごとに次々と生まれてきたロマンポルノ女優の魅力も大きい。私も大学時代に10本以上観ているが,
その時々の女優の美しさに感激したものだ。
 そんな目で本作を観ると、残念ながら女優の魅力が乏しく、また演技のレベルが低すぎる。また、「10分に1回の濡れ場」に登場する「絡みの演技」も、あまりにレベルが低いと言わざるをえない。さらに、私にはカメラワークや照明、美術などの専門なことはよくわからないが、どの絡みのシーンを見ても画一的に見えてしまうのは一体なぜ?そりゃ自分が歳をとったせいもあるだろうが、さてこれで日活ロマンポルノの再始動と言えるのだろうか?まだ5作のうち1作しか観ていないので、できれば残り4本を鑑賞したうえで、その総合評価をしたい。
                                   2017(平成29)年2月3日記