日16-74 (ショートコメント)

「園子温という生きもの」
     

                  2016(平成28)年5月21日鑑賞<テアトル梅田>

監督:大島新
園子温
染谷将太
二階堂ふみ
田野邉尚人
安岡卓治
神楽坂恵
2016年・日本映画・97分
配給/日活

私は、園子温監督の名前を『愛のむきだし』(08年)(『シネマルーム22』276頁参照)ではじめて知り、興味を持った。そして、その後の、『冷たい熱帯魚』(10年)(『シネマルーム26』172頁参照)と『恋の罪』(11年)(『シネマルーム28』180頁参照)を観て、今の日本にもこんなすごい鬼才・異才がいることに驚愕。しかし、それ以降は、『ヒミズ』(12年)はよかった(『シネマルーム28』210頁参照)が、『TOKYO TRIBE』(14年)(『シネマルーム33』未掲載)や『新宿スワン』(15年)(『シネマルーム35』未掲載)はイマイチ、もしくはダメだった。しかして、彼の最新作『ひそひそ星』(16年)は?新聞紙評ではそれなりのものだが、私にはイマイチ・・・。

◆本作は、2014年6月に放映されたNHKテレビ番組『情熱大陸 映画監督・園子温』に収まりきらなかった部分をドキュメンタリー映画にしたもの。その両者を監督した大島新監督は、なんとあの大島渚監督の次男だと聞いて、ビックリ。大島新監督がそこまで園子温監督にこだわった理由は、彼の「国内よりも海外での注目度が高い超個性派カルト監督」「このドキュメンタリーは、稀有な才能を秘めた珍奇な生きものの記録である」というコメントを読めば明らかだが、さて本作はどこまで、園子温監督の実態を映し出しているの?
 本作はドキュメンタリー映画だが、そこに登場してくる園子温監督本人やその妻で女優たる神楽坂恵は、カメラを意識して演じている部分もあるのでは・・・?
 私が思うに、それを許しているのは大島新監督のインタビューでの質問や突っ込み方に、田原総一朗張りの「鋭さ」がないため。嫌な質問も含めて、もっと本音に迫る質問をぶつけなければ、ホントの園子温像が抽出されてこないのでは・・・?

◆ドキュメンタリー映画はその密着性やドキュメント性において千差万別だが、人物像に迫るドキュメンタリー映画は、どうしてもそこに製作者側の主観性や登場人物の演技・演出が入ってくる傾向がある。たとえば、梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督のドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(05年)はすばらしい映画だったが、そこにはどうしても娘の目から見た父親像が入っていた(『シネマルーム12』392頁参照)。
 そんな視点で私がビックリしたドキュメンタリー映画が、本作の翌日に観た『カルテル・ランド』(15年)。これは、まさにどんな展開になるのか、映画をつくっている監督自身もわからないほど、ホンモノのドキュメンタリー映画だった。それに比べると、大島新監督が心血を注いで園子温監督の人物像に迫ったという本作のドキュメンタリー性は?そして、製作者の突っ込み方は?

◆本作は、2014年1月から6月に取材したNHKテレビ番組『情熱大陸』が6月に放映された後、さらに1年間撮影して完成したもの。したがって、そこには園子温監督の最新作『ひそひそ星』の撮影風景がたくさん入っている。しかも、本作とその『ひそひそ星』は同時公開されており、私は同じ日に『ひそひそ星』を鑑賞した。
 この同時公開は、『ひそひそ星』の宣伝を狙っていることは明らかだが、本作の客入りは『ひそひそ星』に比べると半分。そんな実態をどう評価すればいいの?また、そもそも園子温監督は、そんな小手先の「商業主義」に猛反発しているのではなかったの・・・。
                                  2016(平成28)年5月24日記