洋16-72 (ショートコメント)

「トリプル9 裏切りのコード」
    

                      2016(平成28)年5月20日鑑賞<東映試写室>

監督・製作:ジョン・ヒルコート
クリス・アレン(アトランタ市警ギャング対策班の警官)/ケイシー・アフレック
マイケル・アトウッド(ロシア系犯罪組織のもとで働くギャングのリーダー)/キウェテル・イジョフォー
マーカス・ベルモント(アトランタ市警ギャング対策班の悪徳警官)/アンソニー・マッキー
ゲイブ・ウェルチ(ギャングのメンバー)/アーロン・ポール
フランコ・ロドリゲス(アトランタ市警の殺人課に籍を置くギャングのメンバー)/クリフトン・コリンズ・Jr.
ラッセル・ウェルチ(ゲイブの兄、ギャングのサブリーダー格)/ノーマン・リーダス
ミシェル・アレン(クリスの妻)/テリーサ・パーマー
エレナ・ヴラスロフ(イリーナの妹、マイケルの恋人)/ガル・ガドット
ジェフリー・アレン(アトランタ市警重大犯罪課のベテラン刑事、クリスの叔父)/ウディ・ハレルソン
イリーナ・ヴラスロフ(ロシア系犯罪組織を率いる女ボス)/ケイト・ウィンスレット
2015年・アメリカ映画・115分
配給/プレシディオ

「999─トリプルナイン」とは、警官が撃たれたとき、応援を呼ぶ際に使われる警察のコードのこと。かつてプロ野球界に厳格なドラフト制度があった時代、1978年のドラフトで作新学院から法政大学に進学した江川卓投手を巡って「空白の一日」が発生した。それと同じように、999─トリプルナイン発動時に生ずる「10分間の空白」を利用すれば、何かドデカい犯罪が実行できるのでは・・・?
 そこに目をつけたロシア・マフィアの冷酷な女ボス、イリーナ・ヴラスロフ(ケイト・ウィンスレット)は、特殊部隊の元兵士マイケル・アトウッド(キウェテル・イジョフォー)率いるギャング団に国土安全保障省の関連施設を襲撃し、刑務所に収監中の夫を救い出すためのある重要機密のファイルの入手を命じることに。しかして、999─トリプルナイン発動の前提となる、「殺しのターゲット」として指定された警官は?

◆マイケル率いるギャング団は、兄のラッセル・ウェルチ(ノーマン・リーダス)、元警官で弟のゲイブ・ウェルチ(アーロン・ポール)、ギャング対策班の現役警官マーカス・ベルモント(アンソニー・マッキー)、殺人課の刑事フランコ・ロドリゲス(クリフトン・コリンズJr.)で構成されていた。本作冒頭、このギャング団が全米随一の危険都市アトランタの銀行を襲うシークエンスが登場するが、なぜこのギャング団の中には現職の警官がいるの?
 まず、そこらあたりが不可解だ。また、マイケルはこの仕事を最後に足を洗いたかったらしいが、それを許さないのが女ボスのイリーナ。そこには、イリーナの妹エレナ・ヴラスロフ(ガル・ガドット)がマイケルと恋仲で、マイケル最愛の一人息子がイリーナの人質にされているという事情が絡んでいるらしい。
 
◆本作前半から中盤にかけては、そんな「内部事情」がいろいろと説明されるが、何せ登場人物が多く、その名前と顔が一致しないため、話がややこしい。まあ、そこらあたりは適当に流しながら観ていると、どうもキーパーソンはギャング団の人間ではなく、999─トリプルナイン発動のための「殺しのターゲット」とされた、マーカスの相棒であるギャング対策班の新人警官クリス・アレン(ケイシー・アフレック)らしいことがわかってくる。
 999─トリプルナインが発動されたことに伴い、それに対応して出動するのは、クリスの叔父にあたる重大犯罪課のベテラン刑事ジェフリー・アレン(ウディ・ハレルソン)と大勢の警官たちだが、彼らは本作で一体どんな役割を・・・?

◆私は全然知らなかったが、クリスを演じるケイシー・アフレックは、有名なベン・アフレックの弟で、多くの映画に出演しているイケメン俳優。そんな目でパンフレットを見れば、このケイシー・アフレックの名前がキャストのトップにクレジットされているから、後半からはケイシー・アフレック演じるクリスの動向に注目!
 
◆999─トリプルナインの発動はあくまで「警官の死亡」であって、「ある特定の警官の死亡」ではない。したがって、クリスの死亡によって999─トリプルナインが発動されれば、マイケルの計画どおりの手順でコトが進むが、別の警官の死亡によって999─トリプルナインが発動され、それをマイケルらが知らなければ、計画は混乱してしまうのでは・・・?
 マーカスの相棒であるクリスが、999─トリプルナイン発動のための「殺しのターゲット」にされたのは、新人警官で与し易しと見られたためだが、この新人警官は意外にしぶとく、かつしたたかだったところから、本作後半のストーリーはややこしくなっていくことに・・・。

◆本作の現場の第一線で活躍するギャング団や警官は若者が多いが、前述したように、なかなかその名前と顔が一致しない。そんな中、本作で大きな存在感を見せつけるのが、ロシア・マフィアの女ボス・イリーナ役で登場するケイト・ウィンスレット。その登場シーンは多くはないが、その冷酷ぶりは『タイタニック』(97年)のイメージとは大違いだ。
 他方、一人だけ年配のベテラン刑事として存在感を見せるのがジェフリー。ジェフリーはクリスの叔父だからクリスに対する配慮はよくわかるが、それはホントに愛情や善意から出ているの?このベテラン刑事の表情や行動から、そこらあたりがわからないところが、後半から終盤にかけてのミソになっていく。

◆本作最大の見せ場は、「ある」警官の死亡によって999─トリプルナインが発動された後の大混乱。国土安全保障省政府関連施設襲撃事件は多くの犠牲者を出しながら、次第に鎮圧されていったが、その解決はホントの解決・・・?そんな疑問がまとわりつく中、本作のラストには、女ボス・イリーナの身にもベテラン刑事ジェフリーの身にも大きな異変が・・・。
 なるほど、なるほど。新人警官クリスの意外なしたたかさに比べると、この年配の二人がラストに見せるワキの甘さは少し意外だったが、そんな中で本作が導いていく結末は?
                                2016(平成28)年5月25日記