洋16-70

「マネーモンスター」  
  

                      2016(平成28)年5月18日鑑賞<ギャガ試写室>

監督:ジョディ・フォスター
リー・ゲイツ(テレビ番組『マネーモンスター』のパーソナリティ)/ジョージ・クルーニー
パティ・フェン(『マネーモンスター』のプロデューサー兼ディレクター)/ジュリア・ロバーツ
カイル・バドウェル(『マネーモンスター』への侵入者)/ジャック・オコンネル
ウォルト・キャンビー(アイビス・キャピタル社のCEO)/ドミニク・ウェスト
ダイアン・レスター(アイビス・キャピタル社の広報担当の女性)/カトリーナ・バルフ
パウエル署長/ジャンカルロ・エスポジート
2016年・アメリカ映画・99分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

<ビッグネームが集結!こりゃ必見!>
 ジョディ・フォスターが監督し、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが共演。そんなビッグネームの集結となれば、そりゃ必見!本作のタイトル『マネーモンスター』は、財テク番組として人気を誇るテレビ番組。そして、リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)はそのパーソナリティー(司会)、パティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)はそのプロデューサー兼ディレクターだ。リーは「ウォール街の魔術師」と称され、奔放な司会ぶりが有名らしい。したがって、往々にしてアドリブで暴走しようとするリーを制御し、台本どおりコトを進めていくのがパティの仕事らしい。
 映画冒頭、ド派手なダンスを取り入れたリーが番組を進行してさせていく本番の様子が映し出されるが、私はその軽薄さにビックリ!近時ではNHKですら、民放のアホバカ・バラエティー色に染まっていることに私はイライラしているが、 アメリカでは本当にこんな番組を観て、どの株を買うかを決めるバカな国民がいるの?

<スタジオ内に侵入した暴漢の要求は?>
 5月26日、27日に開催された伊勢志摩サミットをめぐって日本の警備体制は厳重を極めたが、テレビ局のスタジオにはこんなに簡単に暴漢が侵入できるの?リーの番組本番中に、ある男が配達業者を装ってスタジオ内に侵入し、ホントに拳銃をぶっ放して「このまま放送を続けろ」と脅迫しながら、リーの体に起爆装置を巻きつけていくシーンにビックリ。アメリカでは、ホントにこんな暴挙がありうるの?日本では到底考えられない設定だ。
 ストーリーの進行につれて次第に素性が明らかになってくる男カイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)は、リーの勧めに乗って購入したアイビス株が暴落したことによって、6万ドルの損失を被ったらしい。その怒りのためにスタジオに侵入してきたと理解(誤解)したリーは、「損失した6万ドルを自分が用立てよう」と提案したが、どうもカイルの本当の目的はカネではなかったらしい。そして、「今回の暴落で失われた8億ドルを用意しろ」と要求してきたから、話はメチャクチャ。さて、カイルの真の目的は一体ナニ?
 それをめぐって以降のメイン・ストーリ―が続いていくが、彼の真の目的が、アイビス株の取引でのカラクリを、テレビを通してすべて世の中に暴露させることという本作の設定が私にはイマイチ納得できないため、その後のスリリングな展開に共感を持てないことに・・・。

<射殺はムリ?すると、その後の対処法は?>
 スタジオ内への特殊部隊の導入による侵入犯カイルの射殺。その点の手際の良さはさすがアメリカと感心させられるが、カイルを射殺するとリーに巻かれた爆弾が爆発し、リーの死亡はもちろんスタジオに最悪の事態を招く危険があるためカイルの射殺はムリ。そのため、狙撃手はリーの起爆受信機をピンポイントで狙うことに。これにうまく的中すればリーは大量出血するものの、命は助かるというギリギリの判断だが、何千万という視聴者の前でそんな危険な賭けができるの?
 他方、リーは番組で「今からアイビス株を買ってくれ。そうすれば株価は上がる」と訴えるとともに、時間稼ぎのためカイルとのさまざまな「対話」を試みたが、そこで見せる対話力の巧みさはさすがだ。何とも言えない緊張感の中、二人の会話はあっちに飛びこっちに飛びながら続いたが、テレビの前に釘付けの視聴者はこの会話をどう受け止めるの?

<スタジオ外でのCEOとの直接対決はホントに可能?>
 リーによる巧みな「時間稼ぎ」の間にパティが目指したのは、アイビス株が暴落した理由を明らかにすること。こんな緊張感の中でそんな難しい情報を短時間で集められることに私は大きな違和感を持ったが、それが本作のスリルとサスペンス色を強めていることはまちがいない。その調査の結果、アイビス・キャピタル社のCEOウォルト・キャンビー(ドミニク・ウェスト)と、広報担当の美女ダイアン・レスター(カトリーナ・バルフ)らの動きが浮上し、今回の暴落は「アルゴリズム」のミスではなく、ウォルトCEOによる何らかの人為的な原因が絡んでいることが見えてきたが、さてどこまでそれをニュースとして報道できるの?
 そんな悩みの中でパティが下した決断は、起爆受信機を付けたままリーがカイルを連れ出してスタジオの外に飛び出し、ウォルトCEOと直接会見し「対決」すること。そんなことは不可能、と誰でも一瞬思うところだが、それを思いつき強引に実現させるのがパティの決断力と実行力だ。もちろん、それはウォルトCEOとダイアンの二人が微妙な距離感になっていたこと、そしてパティとダイアンがごく短い時間での連絡ながら、奇妙な女同士の信頼(?)で結びついてきたことが大きく影響したようだ。
 しかして、多くの警察官が厳戒態勢で見守る中、リーとカイルの二人はスタジオのあるビルを抜け出し、ウォルトCEOの記者会見の場所に向かったが、スタジオ外でリーとカイルがウォルトCEOと会見するなどホントに可能なの?

<暴落はアルゴリズムのミス?それとも人為的?>
 株価は、まずは会社の業績によって上下するし、その時々の国の財政状況や経済政策によって上下する。さらに、昨今の日本株が、ドル高・円安基調からドル安・円高基調に変わったことや、中東の原油価格の下落によって大きな影響を受け、株安に向かったことは周知のとおりだ。しかし、これらはすべて「市場原理」による株価の上下だから、資本主義経済では当然のこと。また、アルゴリズムのミスも一応ありうることだから、仮にそれによってアイビス株が暴落したとすれば、それも仕方なし?
 そこは微妙なところだが、万一ウォルトCEOの思惑によってアイビス株を暴落させたとすれば、それは明らかな犯罪だ。しかし、もし実態がそうだとしても、そんな複雑なからくりを短時間のうちに、しかも、リーを司会者とする生番組『マネーモンスター』を放送している間に暴くことができるの?ジョディ・フォスター監督はそれが可能だと考え、そのスリリングな展開を本作の「ウリ」にしたかったようだが、さてその成否は?
 ラストに向かう中で起きてくる、あっと驚く展開はたしかに見どころいっぱいだが、私にはやはり大きな違和感がある。そう考えると、やはり本作の構想は少し無理筋だったのでは・・・?
                               2016(平成28)年5月28日記