洋16-64 (ショートコメント)

「ズートピア」
    

               2016(平成28)年5月4日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
ジュディ・ホップス(アナウサギの女性、新米警察官)/ジニファー・グッドウィン(上戸彩)
ニック・ワイルド(アカギツネの男性、詐欺師)/ジェイソン・ベイトマン(森川智之)
チーフ・ボゴ(アフリカスイギュウ、警察署の署長)/イドリス・エルバ(三宅健太)
ベンジャミン・クロウハウザー(チーター、警察署の受付)/ネイト・トレンス(高橋茂雄)
レオドア・ライオンハート市長(ライオン、ズートピア市長)/J・K・シモンズ(玄田哲章)
ドーン・ベルウェザー副市長(ヒツジ、ズートピア副市長)/ジェニー・スレイト(竹内順子)
フィニック(フェネック、ニックの共犯者)/トミー・“タイニー”・リスター(白熊寛嗣)
フラッシュ(ナマケモノ、免許センター職員)/レイモンド・パーシ(村治学)
オッタートン夫人(カナダカワウソ、行方不明のエミット・オッタートンの妻)/オクタヴィア・スペンサー
ガゼル(トムソンガゼル、実力派ポップスター/シャキーラ(Dream Ami)
ボニー・ホップス(ジュディの母)/ボニー・ハント(佐々木優子)
スチュー・ホップス(ジュディの父)/ドン・レイク(大川透)
Mr.ビッグ(トガリネズミ)/モーリス・ラマーシュ(山路和弘)
ヤックス(ヤク、ナチュラリストクラブのオーナー)/トミー・チョン(丸山壮史)
ズートピア警察学校の教官(ホッキョクグマの女性)/トリシア・カンニングハム(田村聖子)
マイケル・狸山(タヌキ)/芋洗坂係長
2016年・アメリカ映画・109分
配給/ディズニー

◆『ズートピア』って一体ナニ?それがディズニーの新たな(アニメ)映画だと知ったうえ、絶賛の嵐が吹いているらしいと聞き、早速鑑賞することに。もっともこれは、ハリウッドスターとして渡辺謙も出演しているガス・バン・サント監督の『追憶の森』(15年)の評判が全然よくないため、『追憶の森』よりは『ズートピア』という消極的選択だったが・・・。

◆ヨーロッパでは難民問題が大きな社会問題となり、アメリカ大統領選挙では共和党のトランプ候補が主張した「壁をつくれ!」が多くの若者たちから支持される等、現在世界は人種、偏見、差別等のテーマ(そのあり方)で大揺れに揺れている。そんな現実とは対照的にディズニーが描いた『ズートピア』では、人間以外の哺乳類が皆仲良く、「誰もが何にでもなれる」というスローガンのもと、平和に共存していた。なるほど、なるほど。
 「俺たちは野生ではないぞ!」と誇るように、それぞれのファッションに身を包んだ大小の動物たちが、いくつかの地区に分かれて生活しているものの、肉食動物と草食動物が平和に共存している姿は興味深い。今の時代、これはすばらしいメッセージだが、さて・・・。

◆『アナと雪の女王』(13年)は、女王姉妹の(成長)物語だった(『シネマルーム33』未掲載)が、本作は草食動物であるうさぎのジュディ・ホップスと、肉食動物であるきつねのニック・ワイルドの(成長)物語。いくら「ズートピア」でも性別はもちろん、動物の種による体格(身長、体重)差や腕力差等はあった。したがって、身体が小さく腕力も弱いうさぎが警察官になったためしはなく、警察官はライオンや水牛等の巨大な動物が多かったのは当然。
 そんな状況下、「誰でもなりたいものになれる」とのスローガンを信じ、ジュディは警察官を目指して懸命な努力を重ねたが、さて、その結果は・・・?

◆他方、ニックは今、詐欺師として生きていた。それは、肉食動物としてはじめてジュニアスカウトの団員になろうとしていた子供の頃に受けたいじめによって心の傷を受けたため、「キツネはうそつき」という偏見があるなら、それを逆手にとって生きてやろうという、したたかな大人に成長したためだ。本作導入部では、無事うさぎとして第1号の警察官になったジュディと、アイスの転売で詐欺(脱税?)行為を働くニックとの出会いが描かれ、以降この2人の探偵物語(?)とその中での2人の心の交流物語がストーリーの主軸になっていく。
 なるほど、なるほど。これなら『アナと雪の女王』のような単純な夢物語(?)ではなく、厳しい時代を生き抜く今の子供たちの知恵の形成に役立つ成長物語になるかも・・・。

◆「ズートピア」で今起きているのは、カワウソのオッタートンたちの誘拐事件だから、かなり凶悪。当初は駐車違反の取り締まりしかさせてもらえなかったジュディが、ニックと協力して誘拐の被害者たちが収容されている場所にたどり着くストーリーは結構スリルとサスペンスに富んでいる。そのうえ、行方不明になっていた動物はすべて野生化、狂暴化していたがそれは肉食動物だけだったから、そこには何か重大な秘密があるのでは・・・?そんな推理の下、ジュディとニックが更に捜査(?)を進めていくと、ライオンであるライオンハート市長が人口の1割ほどしかいない肉食動物の評判が悪くなることを恐れて事態を隠蔽していたことが判明。これによって、ライオンハート市長は更迭され、新たにヒツジのベルウェザー副市長(実質はライオンハート市長の秘書にすぎなかった)が市長に就任することに・・・。ここまでくると本作のストーリー構成は大人顔負けの複雑な内容になっているが、今ドキの冷めたガキどもはこれぐらいのストーリーの理解はヘッチャラ・・・。

◆山あれば谷あり。これは株の世界の格言だが、人生だってそれは同じ。誘拐事件解決の功労によって一躍ヒロインになったジュディだったが、その記者会見で「肉食動物のDNAに刻まれた本性が現れてしまったのかもしれません」と発言したことによって、ニックから「僕は肉食動物だ。僕が君のことを食べると思っているのか?」と批判され、たちまちニックとの関係が悪化。「それなら、肉食動物となんて組まない方がいいだろ!」と言われてしまったジュディは、警察官の職を辞して田舎に戻り、両親のニンジン農園を手伝うことに。まあ、都会での夢破れての故郷帰りというよくあるパターンだが、それはそれで悪くないのでは・・・。
 そう思っていたが、この田舎暮らしの中で、動物が狂暴化する原因についてあるヒントを得たジュディは再びズートピアに戻ってニックと和解し、肉食動物「狂暴化」陰謀の黒幕は誰なのかを追求していくことに。さあ、その結果明らかになったあっと驚く真相とは?その黒幕は一体誰?ここまでやれば、ジュディの活躍は一介の警察官のレベルをはるかに超え、ジェームズ・ボンドやシャーロック・ホームズ並みだが、本作終盤ではそんな高次元の推理モノの解決劇をじっくり楽しみたい。
 その結果、ズートピアに再び平和が戻ってきたのは当然だが、そんな新しい時代状況の下、ジュディはどの地位まで昇進したの?また、ニックが選んだ新たな職業とは?
                                  2016(平成28)年5月12日記