洋16-55 (ショートコメント)

「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」
    

                     2016(平成28)年4月25日鑑賞<ギャガ試写室>

監督:ジュリアン・ジャロルド
エリザベス王女/サラ・ガドン
マーガレット王女(エリザベス王女の妹)/ベル・パウリー
王妃エリザベス1世(エリザベス王女とマーガレット王女の母)/エミリー・ワトソン
国王ジョージ6世(英国王)/ルパート・エヴェレット
ジャック・ホッジ(兵士)/ジャック・レイナー
2015年・イギリス映画・97分
配給/ギャガ

◆日本では終戦記念日の1945年8月15日は『日本のいちばん長い日』(15年)(『シネマルーム36』16頁参照)として有名だが、ヨーロッパにおける第二次世界大戦の戦勝国では1945年5月8日のVEday(Victory in Europe Dayの略、日本語ではヨーロッパ戦勝記念日)が有名。この日は、ナチス・ドイツが連合国に無条件降伏する文書にサインをした日だ。
 ナチス・ドイツが敗色を濃くしていく中でのヒトラーの動きを追った映画は『ヒトラー~最期の12日間~』(04年)(『シネマルーム8』292頁参照)、『ワルキューレ』(08年)(『シネマルーム22』115頁参照)、『イングロリアス・バスターズ』(09年)(『シネマルーム23』17頁参照)等たくさんあるし、1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦を描いた映画も『史上最大の作戦』(62年)、『プライベート・ライアン』(98年)等がある。しかし、『日本のいちばん長い日』のように、戦勝記念日という1日の動きを追った映画はないはずだ。
 しかして本作は、その戦勝記念日の一晩だけ、国王ジョージ6世(ルパート・エヴェレット)と王妃エリザベス1世(エミリー・ワトソン)の許可を得て、お忍びで街にくり出したエリザベス王女(サラ・ガドン)とマーガレット王女(ベル・パウリー)姉妹の冒険(?)物語。

◆そんな設定を聞けば、誰でもオードリー・ヘプバーン主演の『ローマの休日』(53年)を思い起こすはずだ。『ローマの休日』でアン王女役を演じたオードリー・ヘプバーンの瑞々しい魅力は今でも全世界の人々の記憶に強く残っているから、それと本作で若き日のエリザベス女王役を演じたサラ・ガドンを比較するのは酷というもの。プレスシートによると、サラ・ガドンはデヴィッド・クローネンバーグ監督の『危険なメソッド』(11年)(『シネマルーム29』121頁参照)で、キーラ・ナイトレイらと出演、世界的に存在を知られ、「世界で最も美しい顔ベスト100」に2012年~2014年の4年連続ランクインするなど、今最も注目度の高い女優の一人と書かれている。彼女は、『コズモポリス』(12年)(『シネマルーム30未掲載』)、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(14年)(『シネマルーム35』237頁参照)、『アンチヴァイラル』(12年)(『シネマルーム31』260頁参照)、『複製された男』(13年)(『シネマルーム33』275頁参照)等に出演しているから、私もこれまで何度も観ているはず。しかし、特に名前と顔を覚えているわけではないから、私の印象度はイマイチだったのだろう。また、妹のマーガレット王女役を演じているベル・パウリーも私は本作ではじめて見る女優だが、美人度は十人並み。本作のような映画は何と言っても女優の魅力で魅せる映画だから、その魅力がイマイチとなると・・・。

◆王女姉妹がそろってバッキンガム宮殿を離れて、ごった返す街に繰り出し、リッツ・ロンドン、メイフェア、トラファルガー広場等のロンドン名所やカーゾンクラブ、娼館等の怪しげな場所にも次々と出撃(?)していくことに。もちろん、当初2人には国王が任命した2人の護衛(お目付け役)がついていたし、王妃の指図によってリッツ・ホテルの特別室では紳士、淑女との謁見がセットされていたが、最初にマーガレット王女が意気投合した男と共にお目付け役を巻いてしまうと、あとはハチャメチャ。妹に比べると何かと分別臭い(?)姉のエリザベスは、以降、そんな妹捜しのために走り回ることになるが、その相棒になるのが、偶然バスで隣に乗り合わせた男ジャック・ホッジ(ジャック・レイナー)だ。
 2人姉妹が2人とも、はじめて出会った男と一緒に、ごった返すロンドンの街を歩き回るのはきわめて危険。下手すると大変なスキャンダルになる可能性もあるが、そこは映画のこと。王女様がほどほどの冒険をしながら庶民の生活を肌で感じとり、ちょっと魅力的な男との「恋愛ごっこ」を体験した後、再び宮殿に戻り、行く行くは立派な王妃様に・・・。そんなストーリーが決まっているだけに、安心といえば安心だが、ハッキリ言ってその点が映画としてはイマイチ・・・。

◆今年2016年は、エリザベス2世の生誕90年の年。去る4月21日に90歳の誕生日を迎えたエリザベス2世の生誕90年を率直に喜びたい。また、エリザベス2世は昨年9月9日にはヴィクトリア女王を抜いて、イギリス史上在位最長記録を更新したから二重に喜ばしい。日本の天皇陛下は現在82歳だが、エリザベス2世は天皇陛下以上にお元気そうだから、まだまだ長生きするだろう。
 それはそれでおめでたい話だが、本作が描いた1945年の戦勝記念日の時代のイギリス首相であった保守党のチャーチルは国民から絶大の支持を得ていた。しかし、戦後長い間概ね自民党政権が続いた日本と違って、イギリスは保守党と労働党が「政権交代」をくり返してきた。そして、2010年に労働党から政権を奪取し、保守党と自由民主党の連立政権を組んだキャメロン政権は、2016年の今、欧州連合(EU)からの離脱をめぐって大変な選択を迫られている。そのうえ、去る4月3日には「パナマ文書」が公にされたことによってキャメロン首相自身も大変な危機状態に追い込まれているから、さてその政権の行方は・・・?
 本来ならキャメロン首相はエリザベス2世と共に本作をじっくり楽しみたいところだが、そんな危機的状況下ではそんなことはとてもとても・・・。さて、キャメロン政権の行方は?
                                  2016(平成28)年4月26日記