洋16-47 (ショートコメント)

「アウトバーン」
    

                     2016(平成28)年4月15日鑑賞<ギャガ試写室>

監督:エラン・クリーヴィー
ケイシー(天才的な腕を持つアメリカ人の自転車泥棒)/ニコラス・ホルト
ジュリエット(アメリカ人女性、ケイシーの恋人)/フェリシティ・ジョーンズ
ケイシーの友人/マーワン・ケンザリ
ゲラン(ドイツのマフィアのボス)/ベン・キングズレー
ハーゲン・カール(ヨーロッパの実業家、麻薬王)/アンソニー・ホプキンス
2016年・イギリス、ドイツ映画・99分
配給/アスミック・エース

◆本作は、『アウトバーン』というタイトルから想像されるとおりの、カーアクションを売りにした映画。『007』シリーズや『ボーン』シリーズ等のスパイ映画でもカーアクションは不可欠だが、それはあくまでたくさんの「売り」のうちの一つの要素。それに対して、『トランスポーター』シリーズや本作は、カーアクションが唯一無二の売りで、ストーリーはあくまでそれを盛り上げるための一つの手段・・・?

◆てなわけで、本作の導入部は、天才的な自動車泥棒としてアメリカで活躍していたケイシー(ニコラス・ホルト)がドイツのケルンにやってきた中で、なぜか巨大なクラブで働いているアメリカ人女性ジュリエット(フェリシティ・ジョーンズ)に一目惚れするストーリーから始まっていく。異国の地ドイツで、アメリカ人同士の男と女が一瞬の出会いから運命的な恋へ・・・。およそカーアクションを売りにする映画には不釣り合いな導入部だが、このジュリエットが私もビックリするほどキュートで可愛い女性であるため、この設定も妙に説得力がある。
 しかして、ケルンでも、マフィアのボス・ゲラン(ベン・キングズレー)の下で働いていたケイシーはヤクザな仕事から足を洗い、ジュリエットとともに堅気として生きる決心をしたが、そこでジュリエットが腎臓移植をしなければ命が危うい大病にかかっていることが判明。移植手術に必要な大金を手に入れるためには、大きなリスクはあってもゲランが仕掛けようとする「ある大仕事」に乗らなければ・・・。

◆本作における、ヤクと女に取り囲まれたゲランの異様ぶりは際立っており、もし本作の日本版ができれば、「ゲラン役は竹中直人に決まり!」となるはず。そんなゲランに対して、表の顔はヨーロッパ全体の物流を手中に収める実業家でありながら、裏では麻薬王としてゲランを部下として使っているハーゲン・カールは、アンソニー・ホプキンスが演じているだけにあくまで紳士的。そんなハーゲンに対して、ゲランはある日、部下ではなく対等なパートナーシップ関係になることを申し入れたが、ハーゲンから「君のような人格の卑劣な男とはパートナーシップは結ばない」とピシャリと言われたため、おかんむりだ。
 その結果、ゲランはケイシーを使ってハーゲンを出し抜き、チリから大量に密輸した膨大なコカインをトラックごと奪うという計画をたてたが、さてその展開は?ジュリエットとの堅気の生活を夢見ていたケイシーは当初この計画への協力を断っていたが、手術のための大金が必要になると、ジュリエットの反対を押し切ってこの計画にのめり込んでいくことに・・・。

◆認知症を患う高齢者による車の運転の危険が社会問題化している中、近時日本でも高速道路の逆走等の事故が急増している。ケイシーによる大量のコカインの強奪がハーゲンの知るところとなった中盤以降は、本作のメインテーマであるアウトバーンの走行をメインとするケイシーのカーアクションが展開される。それが高齢者による高速道路逆走レベルの問題でないことは明らかだが、さてその迫力は?
 車同士の追いかけっこは、スピードが早すぎて動きがわかりづらいのが欠点。また、いつも思うのは、カーアクションでは同時にマシンガンがぶっ放されるシーンが多いが、なぜあれが車や人に当たらないのかということだ。運転席に命中すればもちろん、タイヤに一発でも当たればたちまち車はアウトだが、カーアクションを売りにする映画ではまずマシンガンの弾は車に当たらない。そのため、ある意味安心して観ていられるが、それってホントはおかしいのでは・・・。
 また、『007』シリーズではジェームズ・ボンドが乗る車は毎回特殊能力を備えたスーパーカーだが、ケイシーが乗る車は偶然そこにあった車。したがって、その車がなぜアウトバーンで300km近い時速を出せるのか、また横転してもなぜ燃え上がらずケイシーはそこから脱出できるのかが非常に不思議だ。その他、あれこれ考えればおかしなことだらけだが、本作を楽しむには、そんなことは無視し、ケイシーの不死身ぶりに納得しながらじっと見守ればいいのかも・・・。

◆もっとも本作では、ケイシーが単に車の運転に天才的な腕を持つだけの自動車泥棒ではなく、ゲランの計画に乗っかるについて「ある保険」をかけていたことが大きなミソ。その「保険」のおかげで、ゲランが殺されてしまった後もケイシーはハーゲンと直接取引できる立場をキープできたわけだから、本作後半ではそんなケイシーの知恵者ぶりにも注目!
 しかして、本作は大金を入手し無事ジュリエットの手術を成功させた2人のハッピーエンドとなるが、ハッキリ言って途中からはそんな展開がミエミエ。いくら「カーアクション」を売りにした映画といっても、そこにはもう少し何らかの工夫が必要なのでは・・・?
                                  2016(平成28)年4月19日記