洋16-46 (ショートコメント)

「マクベス」
    

                       2016(平成28)年4月14日鑑賞<東映試写室>

監督:ジャスティン・カーゼル
マクベス(ダンカン王の臣下、グラミスの領主)/マイケル・ファスベンダー
レディ・マクベス(マクベスの妻)/マリオン・コティヤール
バンクォー(ダンカン王の臣下、マクベスの戦友)/パディ・コンシダイン
ダンカン王/デヴィッド・シューリス
マクダフ(ダンカン王の臣下、ファイフの領主)/ショーン・ハリス
マクダフ夫人(マクダフの妻)/エリザベス・デビッキ
マルコム王子(ダンカン王の息子)/ジャック・レイナー
2015年・イギリス映画・113分
配給/吉本興業

◆2016年に没後400年を迎えたシェイクスピアの「四大悲劇」の代表は『ハムレット』だが、あなたは他の3つもちゃんと言うことができる?そこで、『ロミオとジュリエット』と答えようものなら、あなたの教養もたかが知れたもの・・・。シェイクスピアの「四大悲劇」は再三舞台で上演され、また映画化されているが、有名な『ハムレット』と『リア王』に比べれば、『オセロー』と『マクベス』は少し影が薄い。しかし、黒澤明監督が『マクベス』の「日本語版」として、三船敏郎を主演させた『蜘蛛巣城』(57年)は日本的優美さでいっぱいのすごい映画だった。
 第18回英国インディペンデント映画賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、技術賞にノミネートされるなど高く評価された本作が、なぜか吉本興業の配給によって日本に公開された。ちなみに、マクベスを演じたマイケル・ファスベンダーやレディ・マクベスを演じたマリオン・コティヤールはよく知られているが、あなたはオーストラリアの新鋭監督ジャスティン・カーゼル監督の名前を知ってる?

◆シェイクスピア劇はどれも重厚で、大仰なセリフ回しが多いのが特徴。しかも、マクベスが展開する「権力闘争」の舞台はスコットランドの荒れた土地(?)だから、スクリーンはその荒涼感でいっぱい。撮影技術の高さもあって、その風景は美しい。
 他方、ストーリー自体は単純(?)だから、わかりやすい。しかし、自ら王になろうとする野望のためにダンカン王(デヴィッド・シューリス)を殺害し、さらに戦友のバンクォー(パディ・コンシダイン)までも殺害したことで苦悩するマクベスの姿をずっと見ているのは結構しんどい。映像の美しさは抜群だから、それが救いだが、そんなしんどさのために途中少しウトウトしてしまうのは仕方なし・・・?

◆マクベスがダンカン王の信頼を得たのは、反乱軍の攻勢で窮地に陥ったダンカン王への忠誠を誓うマクベスの獅子奮迅の働きによるものだった。しかして、本作冒頭に展開されるその戦闘シーンの迫力は・・・?『プライベート・ライアン』(98年)の冒頭20分間に及ぶ激しい戦闘シーンは語り草になっているが、スローモーションを多用した本作のそれに私は少し不満がある。
 戦闘後、おびただしい数の死体が散乱する荒野でのマクベスと3人の魔女との出会い、そこで魔女から告げられた「マクベスがコーダーの領主となって出世し、スコットランド王になるだろう」との言葉がその後のマクベスの運命を大きく変えたことを考えれば、この導入部の戦闘シーンは、もっと迫力満点にした方がよかったのでは・・・。

◆『恋におちたシェイクスピア』(98年)は、メチャ面白いシェイクスピア劇(?)だった。また、レナード・ホワイティングとオリヴィア・ハッセーが共演した映画『ロミオとジュリエット』(68年)は、2人の共演者のみずみずしさでいっぱいの超魅力的な映画になっていた。シェイクスピアはもともと演劇として上演されるものだから、その映画化は難しい。
 ちなみに、近時、劇団☆新感線の舞台公演をデジタル録画・編集して映画館で上映する「ゲキ×シネ」や、歌舞伎の舞台公演を撮影し、映画館でデジタル上映する「シネマ歌舞伎」が大人気となっている。劇団☆新感線のいのうえひでのり、中島かずきらによるその企画に、歌舞伎界の市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助らが賛同し、『ヤマトタケル』(05年)や『歌舞伎NEXT阿弖流為<アテルイ>』(16年)等が次々と映画館で上映されてきた。私は近々『歌舞伎NEXT阿弖流為<アテルイ>』を鑑賞する予定なので、それと本作を比べてみたい。多分私には、少し居眠りしてしまった本作よりも『歌舞伎NEXT阿弖流為<アテルイ>』の方が大きな感動を呼ぶだろう。
                                  2016(平成28)年4月15日記