洋16-28 (ショートコメント)

「グランドフィナーレ(YOUTH)」
    

                  2016(平成28)年3月4日鑑賞<ギャガ試写室>

監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
フレッド・バリンジャー(80歳の老作曲家・指揮者)/マイケル・ケイン
ミック・ボイル(フレッドの親友、老映画監督)/ハーヴェイ・カイテル
レナ・バリンジャー(フレッドの娘)/レイチェル・ワイズ
ジミー・トリー(ハリウッドスター)/ポール・ダノ
ブレンダ・モレル(ミックと親友の大女優)/ジェーン・フォンダ
スミ・ジョー/本人
パロマ・フェイス/本人
ヴァイオリニスト/ヴィクトリア・ムローヴァ
2015年・イタリア、フランス、スイス、イギリス映画・124分
配給/ギャガ

◆本作を監督したイタリアのパオロ・ソレンティーノ監督は、「カンヌに愛されたイタリアの奇才」「21世紀の映像の魔術師」と呼ばれているそうだが、残念ながら私は彼の過去のそんな実績を全く知らなかった。そんな彼の最新作である本作は「世界各国の映画祭からも絶賛された最高傑作!」で、一度は引退した著名な音楽家が、キャリアの最後に大輪の花を咲かせるべく、人生のすべてを賭けて大舞台に挑むまでの愛と葛藤を描ききったもので、「一番の感動作」「愛おしい物語」「感情豊かな映画」と、数々のメディアから最大級の賛辞が贈られているそうだが、さて・・・?

◆本作の舞台は、アルプスのリゾート地にある高級ホテル。引退した80歳の老作曲家・指揮者のフレッド・バリンジャー(マイケル・ケイン)は今、そのリゾートホテルでサウナ、マッサージ、プールを楽しむ毎日を過ごしていた。これは、一人娘レナ・バリンジャー(レイチェル・ワイズ)が父親の健康を気遣ったためだ。ある日、エリザベス女王の使者がフレッドのもとを訪れ、フレッドの名を世界中に知らしめた不朽の名曲『シンプル・ソング』を、フィリップ殿下の誕生日に指揮してくれという名誉あるオファーをしたところから物語がスタートする。
 ところが、BBC交響楽団の演奏で、偉大なソプラノ歌手スミ・ジョーが歌うと言われても、フレッドはもう引退したからとそのオファーを拒否。健康上の理由なら仕方ないが、フレッドにはまだまだ晴れの舞台で晴れの指揮をするくらいの体力と気力はありそうだ。だのになぜ、フレッドはそんなに頑なに拒否するの?本作はそんなテーマをめぐって、その後のストーリーが展開していくことに。

◆このリゾートホテルには、フレッドの他、映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)や、ハリウッドスターのジミー・トリー(ポール・ダノ)、更に元サッカー選手など世界中のセレブが集まっているようだから、本作前半はそんなアルプスの高級リゾートホテルのあり方や、そこでの過ごし方に注目!
 フレッドはリタイアを決め込んでいたが、フレッドの親友であるミックの方は、遺作にする覚悟で『人生最後の日』という新作の打合せに精力的に取り組んでいたから、老後の生き方の姿勢は大違い。しかし、そこにミックの作品のうち11本で主演女優を務めている往年の大女優ブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)が登場し、「あなたの新作には出演しない!」と断られると、事態は一変することに・・・。

◆本作中盤から終盤にかけては、フレッドが晴れ舞台での『シンプル・ソング』の指揮を頑なに拒否する理由が、その曲にまつわる、フレッドの妻(=レナの母親)への「ある想い」の中にあることが示唆されていく。フレッドの妻は、今フレッドとは別に一人でヴェネチアで過ごしているそうだが、それはなぜ?夫婦の間には娘の知らない秘密の1つや2つがあって当然だが、さてフレッドとその妻との間に秘められた『シンプル・ソング』の誕生にまつわる秘密とは?

◆本作ではリゾートホテルに集う客の一人にミスユニバースの女性がいるので、その「入浴シーン」には、フレッド、ミックならずとも、お口があんぐり。しかし、それ以上に私がおどろいたのは、1960~70年代にかけて「抵抗する女」の代表のように思われていたジェーン・フォンダが、往年の大女優ブレンダ・モレル役で登場し、何ともケバイ化粧と服装でミックと対峙するシーンだ。
 本作の「売り」は、何と言っても第88回アカデミー賞で主題歌賞にノミネートされ、本作ラストではフレッドの指揮の下で演奏される『シンプル・ソング』の美しさだが、私にはジェーン・フォンダの圧倒的な存在感の方が印象的だった。

◆本作の原題『YOUTH』と邦題『グランドフィナーレ』は、ある意味では全く正反対の概念。しかし、本作では、「21世紀の映像の魔術師」と呼ばれるパオロ・ソレンティーノ監督らしい美しい映像の中で、全体を通じて感じられる『YOUTH』と『グランドフィナーレ』の両方を、これまた美しい楽曲『シンプル・ソング』を鑑賞しながら十分に味わいたい。
                                  2016(平成28)年3月8日記