洋16-21

「ドラゴンブレイド(天將雄師/DRAGON BLADE)」

                                             

               2016(平成28)年2月14日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督・脚本:ダニエル・リー(李仁港)
フォ・アン(霍安)(西域警備隊の隊長)/ジャッキー・チェン(成龍)
ルシウス(ローマ帝国の精鋭黒鷲軍団を率いる将軍)/ジョン・キューザック
ティベリウス(ローマ帝国の執政官クラッススの長男)/エイドリアン・ブロディ
ムーン(冷月)(フン族の鉄邪族長の一人娘、弓の名手)/リン・ポン(林鵬)
イン(殷破)(西域警備隊の副官、フォ・アンの部下)/チェ・シウォン
イエントウ(雁頭)(雁門関の隊長)/シャオ・ヤン(肖央)
ラオシュウ(老鼠)(雁門関の隊長の側近の軍医)/ワン・タイリー(王太利)
ショーチン(秀清)(フォ・アンの妻)/ミカ・ウォン(王若心)
プブリウス(執政官クラッススの幼い末息子)/ジョゼフ・リュウ・ウエイト(西蒙子)
パルティアの女王/ロリー・ペスター
フォ将軍(霍去病将軍)(西域警備隊(西域都護府)の創設者)/ウォリアム・フォン(馮紹峰)
クーガー(山豹)(西域警備隊員、フォ・アンの親友)/ユ・スンジュン
サン(紅日)(フン族の鉄邪族長の息子、ムーンの兄)/サミー・ハン(洪天照)
執政官夫人(執政官クラッススの妻、プブリウスの母)/シャーニー・ヴィンソン
2014年・中国、香港合作映画・103分
配給/ツイン

<私は弁護士40年!成龍は襲名40周年!>
 ジャッキー・チェン(成龍)は1954年生まれだから、1949年生まれの私より5歳若い。私は1972年4月~74年3月までの2年間の司法修習期間を経て、1974年4月に大阪弁護士会に弁護士登録した。それに対して、成龍は当初陳元龍という芸名で、ブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』(72年)、『燃えよドラゴン』(73年)など数多くの作品にスタントやエキストラ、武術指導で参加し(その大半はノークレジット)、73年の『タイガー・プロジェクト~ドラゴンへの道 序章』で初主演を果たした。私は2014年3月に弁護士登録40周年を迎え、『がんばったで!40年 ナニワのオッチャン弁護士 評論・コラム集』を出版したが、1976年に成龍を襲名したジャッキーは、今年2016年が「成龍襲名40周年」となった。
 そんなジャッキーが、「成龍襲名40周年」として主演の他、製作、製作総指揮、アクション監督を務め、主題歌を歌うのが本作だ。私は弁護士として40年間十分満足できる仕事をやってきたという自負と誇りがあるが、ジャッキー・チェンは2015年8月にはアメリカの経済誌フォーブスの「世界で最も稼いだ俳優」リストの第2位にランクされたというからすごい。そんなジャッキー・チェンが「映画の常識を超えた歴史スペクタクル巨編!」「映画の歴史に刻まれる偉大なる映画的金字塔!!」に挑戦!本作の製作日数は7年、製作費は中国語映画史上最高の6500万ドル(約80億円)をかけたというから、それもすごい。
 もっとも、日本での事前宣伝は少なく、私ですら劇場公開まで本作の存在を知らなかったが、そりゃ一体なぜ?

<「古代ローマ帝国軍の失踪と落武者伝説」を知ってる?>
 「落武者伝説」と言えば、日本では「平家の落武者伝説」が有名だが、あなたは「古代ローマ帝国軍の失踪と落武者伝説」を知ってる?
 エリザベス・テイラーが主演し、レックス・ハリソンがシーザー役を、リチャード・バートンがアントニー役を演じた『クレオパトラ』(63年)はすばらしい歴史大作だったが、この手の映画を観れば、「シーザーが死んだ」というゴロ合わせで、シーザーが死んだのが紀元前(BC)44年だったことを覚えていたことの価値がよくわかる。パンフレットによれば、その基準時(?)から少し前のBC53年(前漢甘露元年)に、ローマ帝国の執政官クラッススはパルティアへの侵略戦争を起こしたが、“カルラエの戦い”と呼ばれる砂漠での激しい戦いの末に敗れ、クラッススは捕虜となり斬首された。その時、クラッススの息子プブリウスは精鋭部隊6000人あまりを率いて東方へ逃れ、その後行方不明となった。その後、ローマの兵は匈奴に捕まり、前漢の捕虜となって現在の甘粛省金昌市永昌県にある驪靬(れいけん)に定住した、というのが「古代ローマ帝国軍の失踪と落武者伝説」だ。そして、2010年11月にはその伝説を学術的に検証、研究するために地元の蘭州大学に「イタリア文化研究センター」が設立された。この説はもともと1950年代にオックスフォード大学の中国史専門家ホーマー・H・ダブス教授によって最初に発表され、研究が続けられてきたもので、その説が証明される日が近づいている、として盛り上がりを見せているそうだ。
 しかして、本作冒頭には「史実を元に、脚色した物語」という字幕が登場する。したがって、本作はあくまで歴史上の事実にはこだわらず、そんな視点で、「遥か遠い昔、シルクロードで・・・。平和のために戦った勇者たちがいた。」というジャッキー・チェン流の「平和」をテーマとした世界観と、ダニエル・リー監督の演出をタップリと楽しみたい。

<成龍とダニエル・リー監督が歴史大作で初タッグ!>
 成龍はアクションを中心とするオールラウンドプレイヤーだが、私はとりわけ歴史大作が好き。成龍主演の歴史大作はオリジナリティあふれるものが多いが、とりわけ『ドラゴン・キングダム』(08年)(『シネマルーム21』44頁参照)、『ラスト・ソルジャー(大兵小将)』(10年)(『シネマルーム25』100頁参照)は私の大好きな映画だ。他方、香港生まれのダニエル・リー監督も「恋愛モノ」を含むオールラウンド監督だが、私はとりわけ『三国志(THREE KINGDOMS RESURRECTION OF THE DRAGON)』(08年)(『シネマルーム22』184頁参照)や『処刑剣 14BLADES(錦衣衛)』(10年)(『シネマルーム26』139頁参照)という歴史大作が大好き(残念ながら『項羽と劉邦』(11年)は見逃している。)。『三国志』は、マギー・Q扮する曹嬰と対決する、アンディ・ラウ(劉德華)扮する劉備軍の趙雲を主人公とするオリジナリティあふれる映画だった。また、『処刑剣 14BLADES』も、ドニー・イェン(甄子丹)とビッキー・チャオ(趙薇)を中心とした、「キムチ・ウエスタン、ナニするものぞ!」というチャイニーズ・ウエスタン風テイストのオリジナリティあふれる歴史大作だった。そんな成龍とダニエル・リー監督が、紀元前53年のシルクロードを舞台とした、ローマ帝国VS中国前漢西域連合軍という歴史大作で初タッグを!
 本作で、成龍は西域警備隊の隊長フォ・アン役を演じているが、その舞台は広大な砂漠の景色が美しいシルクロード。そして、副官のイン(殷破)(チェ・シウォン)らの陰謀によって、フォたちが異民族との戦闘の最前線にあるシルクロードの辺境、雁門関に送られた後は、その雁門関が主たる舞台になる。そこに、まずは将軍ルシウス(ジョン・キューザック)率いる一群のローマ帝国軍が到着し、続いてシルクロードへの侵攻をたくらむ、暗殺された執政官クラッススの長男ティベリウス(エイドリアン・ブロディ)の大軍が攻め寄せてくるから、そのスケールはデカイうえ、そのストーリー展開はオリジナリティあふれるものになっている。本作の脚本はダニエル・リーの手によるものだが、フォ・アンVSルシウスの対決、フォ・アンVSティベリウスの対決というアクションの見せどころは、当然成龍の手によるものだ。
 さあ、そんなハリウッド映画とは全く異質な、成龍のアクションとダニエル・リー監督の演出、脚本による本作のオリジナリティあふれる楽しさを、タップリと楽しみたい。

<雁門関のセットと西域36部族のキャラに注目!>
 本作で金貨密輸の容疑者とされたフォは地方長官の監視下におかれ、15日以内での雁門関の砦の修復という、本来なら実現不可能な任務を命じられることになる。しかして、本作前半では、それに協力するルシウスたちのローマ帝国式建築技術とその工事模様が焦点になるのでそれに注目!『十戒』(56年)でも、チャールトン・ヘストン扮する王子が、ファラオ(王)のために、当時のエジプト王国の技術の粋を駆使して建築する工事模様が興味深かったが、雁門関の砦の修復工事でルシウスが見せる先進的なローマ帝国流の建築技術とその工事模様も興味深い。砂漠の風景等ではCGも使われているが、雁門関の砦の修復シーンはすべて実際にやっているから、その圧倒的迫力は相当なものだ。
 また、本作の本来の主役はルシウスやティベリウスではなく、シルクロードで生きる西域36の部族たちだから、そのキャラに注目!導入部におけるフォとムーンの対決に見る36部族の面々はあくまで「お飾り」だったが、本作のクライマックスでティベリウス率いるローマ帝国軍の大軍を囲み、疾風の如き騎馬隊で襲いかかっていく西域36部族の兵士たちの迫力はすごい。そこでは、馬だけではなくコンドルとラクダも登場するので、そんな西域36部族の戦いぶりにも注目しながら、ローマ帝国軍VS中国前漢西域連合軍の激突ぶりを楽しみたい。西域36部族の騎馬隊が一気にティベリウス率いるローマ帝国軍を撃滅!西域36部族がローマ帝国軍を取り囲んだ時は一瞬そう思ったが、いやいや盾と槍で武装され、「集団戦」に慣れたローマ帝国軍の底力もすごい。その結果、 イエントウ(雁頭)(シャオ・ヤン(肖央))やラオシュウ(老鼠)(ワン・タイリー(王太利))たちは次々に戦死していったが、最後にクラッススと同盟を結んでいたパルティアの女王(ロリー・ペスター)が登場してくると・・・。
 本作は、「一粒で二度おいしい」というアーモンドグリコのキャッチフレーズと同じように、フォとティベリウスとの「個人戦」というクライマックスの前に、そんな「集団戦」でのクライマックスが登場するので、その第1のクライマックスを楽しみたい。

<ハリウッド俳優の出演料は?だが主役はあくまで成龍!>
 本作でルシウスはとことん善人役で、ティベリウスはとことん悪人役で登場するが、パンフレットのプロダクションノートで説明しているとおり、本作の舞台は想像を絶するほど過酷なロケーションだから、ハリウッド俳優がそんな撮影に参加するのは大変。しかも、ローマ帝国の兵士たちはあくまでローマ帝国軍純正の(?)「集団戦」を見せるが、ルシウスもティベリウスも、「個人戦」では成龍流の香港流アクションで観客を魅せなければならないから、そのための努力は大変だ。また、映画冒頭でフォと対決し、敗北したことによって一転してフォの嫁になろうとする、フン族の族長の娘ムーン(冷月)(リン・ポン(林鵬))も、剣だけではなく弓矢を使った過激なアクションに挑戦するから大変だ。
 ムーンの出演料は「香港基準」でOKだろうが、ジョン・キューザックとエイドリアン・ブロディの出演料はきっと「ハリウッド基準」だろうから、そこでの米中の駆け引きは大変だったはず。さて、総額6500万ドルの製作費のうちジョン・キューザックとエイドリアン・ブロディという2人のハリウッド俳優の出演料はHow Much?
 もっとも、そんな「そろばん勘定」はさておき、本作はあくまで成龍の主演作。フォとルシウスの対決は途中引き分けになったうえ、その後ルシウスはフォの親友になってしまうから、本当はどっちが強いのかの興味は持ち越されることになる。そのうえで、ティベリウスによって逮捕されたルシウスはかなりみじめな姿で死んでいくことになるが、最後のクライマックスとなるフォとティベリウスの対決は如何に?そこでは、既にローマ帝国軍との戦闘でさまざまな傷を負ったフォに大きなハンディキャップがあるから、今にもフォはティベリウスによって首を刎ねられそうになるが、さてそこでフォが見せる起死回生の一手とは?
 同じ日に観た『ディーパンの闘い』(15年)はメチャ難解な映画だったが、成龍映画は勧善懲悪がハッキリしているうえ、最後に忍耐に忍耐を重ねた成龍が勝利するのは自明の約束ゴト。本作もそんな成龍映画の「定番」をしっかり守っているので、そんな第2のクライマックスを楽しみながら、安心してハッピーエンドを迎えたい。
                                  2016(平成28)年2月17日記