洋15-96

「ジュラシック・ワールド」
    

                 2015(平成27)年8月9日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督・脚本:コリン・トレボロウ
原案:マイケル・クライトン
オーウェン(恐竜行動学の研究施設に勤務する元軍人)/クリス・プラット
クレア(パークの安全を管理するオペレーション・マネージャー)/ブライス・ダラス・ハワード
カレン(クレアの姉)/ジュディ・グリア
ザック(カレンの16歳の長男)/ニック・ロビンソン
グレイ(カレンの11歳の次男)/タイ・シンプキンス
ロウリー(パークで働くテクノロジーに精通した操作監督)/ジェイク・ジョンソン
ヴィヴィアン/ローレン・ラプクス
バリー(オーウェンのチームの主任調教師、オーウェンの親友)/オマール・シー
ヘンリー・ウー博士(DNAを使って恐竜を再現する主任遺伝学者)/B・D・ウォン
サイモン・マスラニ(インジェン社からパークを受け継いだ目立ちたがりの億万長者)/イルファン・カーン
ヴィック・ホスキンス(ラプターの戦場使用を企むインジェン社の人物)/ヴィンセント・ドノフリオ
2015年・アメリカ映画・125分
配給/東宝東和

<子供たちはジュラシック・ワールドに大興奮だが・・・>
 私は大人になってから白浜の「ワールドサファリ」に2度行ったことがあるが、それだって子供時代に体験すればすごいもの。しかして、16歳のザック(ニック・ロビンソン)と11歳のグレイ(タイ・シンプキンス)の2人にとって、ジュラシック・ワールドに数日間滞在して、恐竜たちをタップリと見学できるというのはすごい体験だ。しかも、母親カレン(ジュディ・グリア)の妹であるクレア(ブライス・ダラス・ハワード)はジュラシック・パークの経営と安全を管理するオペレーション・マネージャーというから、フリーパスをもらえるほか、さまざまな特典も・・・。
 白浜の「ワールドサファリ」は大阪からJRに乗ればすぐ近くだが、様々な恐竜たちのテーマパークであるジュラシック・ワールドは、ひとつの島を借り切って建設されているから、大阪のユニバーサル・スタジオや東京のディズニーランド以上の規模だ。団塊世代の私が今さらジュラシック・ワールドを観ても大興奮できないのは仕方ないが、夏休み中とあって、劇場は子供たちを連れた家族連れでいっぱい。

<経営陣のあり方は?>
 ジュラシック・ワールドほどの大きさの規模になると、私は経営面の大変さと技術面の大変さに興味を持ってしまう。インジェン社からパークを受け継いだ、目立ちたがり屋の億万長者のマスラニ役に、『スラムドッグ$ミリオネア』(08年)(『シネマルーム22』29頁参照)や『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12年)(『シネマルーム30』15頁参照)、『めぐり逢わせのお弁当』(13年)(『シネマルーム33』45頁参照)で大活躍したインド人俳優イルファン・カーンがなぜ起用されたのかは分からないが、ジュラシック・ワールドの経営ともなれば、いわゆる「投資ファンド」が登場するのも当然だから、インド人のCEOがいてもおかしくないのかも・・・。
 日本の大塚家具や韓国のロッテ・グループのように、経営方針をめぐる紛争が起きているわけではないが、ジュラシック・パークの中で一人だけ異質かつ異端なのはホスキンス(ヴィンセント・ドノフリオ)という男。彼はインジェン社の人間で、恐竜の戦場での活用を企んでいるようだが、ジュラシック・パーク内の恐竜が現在は人間のコントロールに服しているとはいえ、そりゃいくらなんでも不可能では・・・。そう思うのだが、本作後半からはマスラニの死亡後、経営のあり方をめぐって、このホスキンスの存在が急浮上してくることに・・・。

<技術陣のあり方は?>
 他方、本作のヒロインとして登場するクレアは、マスラニからの信頼が厚いようだが、彼女の役割はあくまでオペレーション・マネージャー。ジュラシック・パークの生命線となる遺伝子操作という技術面の根幹を扱っている男は、DNAを使って恐竜を再現する主任遺伝学者のヘンリー・ウー博士(B・D・ウォン)だ。「より目立つものを!」「より凶悪なものを!」という経営陣からの要請に応じて、次々と遺伝子を操作して、巨大で凶悪な恐竜を作り続けていくのが、彼ら技術陣の仕事らしい。
 『ジュラシック・ワールド』シリーズの第4作となる本作の主人公となる恐竜は、体長約12メートルのインドミナス・レックス。これは最強最大の肉食恐竜ティラノサウルス・レックスをベースに、カルノタウルス、マジュンガサウルス、ルゴプス、ギガノトサウルスやその他未公表種のDNAを含む遺伝子構造を持つ恐竜らしい。しかも、インドミナス・レックスは人間を欺き、巧妙に檻から逃げ出す知恵があるなど、『ジュラシック』シリーズ史上最も賢く、その能力については“創造者”ウー博士も表面的なことしか理解していなかったという代物だから、もしこいつがジュラシック・パークの外に逃げ出してしまえばそりゃえらいこと。しかして、ウー博士ら技術陣が遺伝子操作でこんな代物を作り出すことの是非は・・・?なお、本作のパンフレットにはその他にもさまざまな恐竜の解説があるので、グレイと同じように恐竜に興味のある方は、それらのお勉強もしっかりと。

<人間と軽量級恐竜との心の交流は?>
 『ゴジラ(1954)』(54年)の主役は1匹だけのゴジラだった(『シネマルーム33』258頁参照)が、本作の主役となる恐竜は①ジュラシック・パークの檻から脱走した最凶暴な恐竜インドミナス・レックス、②全長14~17mの海棲爬虫類「モササウルス類」の代表的な存在であるモササウルスの他、③全長2~2.5mの軽量級の恐竜であるヴェロキラプトルもいる。本作冒頭から、ブルー、チャーリー、デルタ、エコーと名付けられたこれら4体のヴェロキラプトルの調教を続ける中で、彼らと心の交流ができている(らしい)男が、本作の主人公となる人間・オーウェン(クリス・プラット)。彼はもちろんホスキンスの方針には猛反対だが、恐竜を使って大儲けしようとするCEOのマスラニの方針にも懐疑的らしい。
 そんな彼は黙々とブルー、チャーリー、デルタ、エコーらの調教に励んでいたが、ある日インドミナス・レックスが逃亡したことによって、観客はもちろんパーク内の生物すべてに危機が迫る中、彼の卓抜した行動力が本作のストーリー展開のポイントになっていくことに。もっとも、所詮人間一人の力量なんて知れてるが、本作ラストのクライマックスとなる「恐竜同士の対決」では、意外にもオーウェンとブルー、チャーリー、デルタ、エコーという4体の軽量級恐竜との心の交流が大きな意味を持つことに・・・。

<恐竜対決はエンタメとして?それとも・・・?>
 2014年のハリウッド1番の話題作は、『GODZILLA』(14年)(『シネマルー33』254頁参照)だったが、日本ではその公開にあわせて『ゴジラ(1954)』も上映されたから、ゴジラの「新旧対決」は興味深かった。日本版では、後半のストーリーの焦点は、平田昭彦扮する芹沢博士が発明した、オキシジェン・デストロイヤーと名付けられた水中酸素破壊剤でゴジラを倒す(殺す)ことができるかどうかに集中していったが、ハリウッド版ではオスとメス2匹(2羽)のムートーVSゴジラ対決というエンタメ色豊かなものになっていた。
 それと同じように、本作のクライマックスも、凶悪に暴れ回るインドミナス・レックスに対して、オーウェンの心を察した4体の軽量級恐竜たるブルー、チャーリー、デルタ、エコーが協力して立ち向かうという「恐竜対決」になる。そのエンタメ色は、最新の撮影技術を駆使したムートーVSゴジラと同じようにレベルの高いものだが、さてその賛否は?、『GODZILLA』について、「私はどちらかというと否定的。」だったが、それは本作についても同じだ。
 相当な数の人的被害を出した今回のジュラシック・パーク騒動の後始末は大変だろうが、それ以上に大変な問題は、今後もこれまでと同じように遺伝子操作によってより凶悪な、より悪がしこい恐竜をつくり出していくのかどうかということ。さて、あなたはそんな本作の余韻をどのように読み解く?
                                 2015(平成27)年8月13日記