洋15-79 (ショートコメント)

「トゥモローランド」
    

                2015(平成27)年6月14日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督:ブラッド・バード
フランク・ウォーカー(謎めいた「トゥモローランド」を知る男)/ジョージ・クルーニー
デイヴィッド・ニックス(少年時代のフランクと対面した男)/ヒュー・ローリー
ケイシー・ニュートン(宇宙飛行士を夢見る17歳の少女)/ブリット・ロバートソン
アテナ(ケイシーとフランクを引き合わせた謎の美少女)/ラフィー・キャシディ
少年時代のフランク/トーマス・ロビンソン
エディ・ニュートン(ケイシーの父、NASAのエンジニア)/ティム・マッグロウ
ネイト・ニュートン/ピアース・ガニォン
ウルスラ/キャスリン・ハーン
ヒューゴー/キーガン=マイケル・キー
2015年・アメリカ映画・130分
配給/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

私は本作に描かれる1964年のニューヨーク万国博や、江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展した1867年のパリ万国博は知らないが、1970年の大阪万博は、日本人にとってはまさに「未来」を感じた一大イベント。したがって、科学者を夢見る11歳の少年フランク・ウォーカー(トーマス・ロビンソン)がニューヨークの万国博を訪れ、「トゥモローランド」の存在を知ったことによってその人生観が大きく変わったのは当然。「トゥモローランド」を案内するのは年をとらないAA(オーディオ・アニマトロニクス)のアテナ(ラフィー・キャシディ)だが、11歳のフランクにとってそんなことがわかるはずがない。
 20世紀のエンタテインメントの礎を作った、類い稀な人物であるウォルト・ディズニーが生前に残したアイテムをもとに構想された本作の壮大なストーリーはまさにディズニー映画の「夢」がいっぱい。11歳の少年フランクのように、科学に興味のある人はある人なりに、科学に興味のない人はない人なりに、「トゥモローランド」の世界を楽しみたい。

他方、時代は変わり、現代。そこでも、ここフロリダでは幼い頃から宇宙旅行を夢見てきた17歳の女子高生ケイシー・ニュートン(ブリット・ロバートソン)が、スペースシャトル計画が終わり、NASAの発射台が廃棄されかけている現状に不満を抱き、夜な夜な宇宙センターに侵入し、その解体作業を阻止しようとしていた。今や「世界唯一の大国」だったアメリカの地位は低下し、中国からは「太平洋を二分しよう」との提案まで受けているが、ケイシーにとってそんな21世紀の社会はうんざりするほどの終末的な世界観に覆い尽くされているらしい。
 ところが、ケイシーがある日見慣れない「T」のロゴをあしらったピン・バッジを見つけ、それに触れると、突然目の前に小麦畑が広がり、遠くには巨大な超ハイテクビルがそびえ立つ別世界が!まさに、これぞトゥモローランド!これぞケイシーが夢見ていた理想の世界!そう喜んだのも束の間、ピン・バッジのパワーが失われると、ケイシーは再び現実の世界に引き戻されることに・・・。

本作中盤は、再びあの未来都市に赴くために、ピン・バッジを探し求めるケイシーに迫ってくる危機を、アテナが助けるストーリーが描かれる。しかし、現代を生きるケイシーは「夢見る少女」といっても所詮人間。それに対し、アテナは1964年にフランクを案内した時と同じ姿のオーディオ・アニマトロニクスだ。ケイシーがそんなアテナに違和感を持ったのは当然だが、どうもこのアテナがピン・バッジの贈り主であり、あの別世界からやってきたらしいことがわかると・・・。
 他方、1964年から約50年が経ち、今や孤独な中年男としてニューヨーク州で暮らしているのがフランク(ジョージ・クルーニー)。アテナがそんなフランクにケイシーを引き合わせたことによって、再びフランクの中には「ある衝動」が生まれることに。そして、ケイシーが憧れるトゥモローランドに向かうべく、ケイシーとアテナ、そしてフランクの3人による奇妙な「連合軍」が誕生することに・・・。

立体的に超高層ビルが建ち並び、列車や車が空の上を飛んでいる未来都市の姿はリュック・ベッソン製作の『TAXi』(97年)、『TAXi 2』(00年)、『TAXi 3』(03年)、『TAXi 4』(07年)(『シネマルーム16』166頁参照)等でもお馴染みだが、さて、ディズニー映画の描く未来都市「トゥモローランド」の姿は?「トゥモローランド」の総督は、1964年にニューヨーク万国博覧会の発明コンテストで審査員を務め、少年時代のフランクと対面し、アテナの強い勧めで一度はフランクを受け入れたデイヴィッド・ニックス(ヒュー・ローリー)。「トゥモローランド」で“モニター”を作ってしまったフランクを追放した後は、このデイヴィッドが「トゥモローランド」のすべてを牛耳ってきた。
 そんな彼の思想は、実用的なプラットフォームを研究すること。つまり、彼にとって人生とは終わりのない科学的探究であり、人がこの世に存在する理由は知識の蓄積と向上にあると信じているわけだ。その点において、いつも夢を追い求め、既に11歳の時に未完成ながらジェットパック(=人間が空を飛べる装置)を発明したフランクとは全く違う価値観を持っているわけだ。
 本作後半からクライマックスにかけては、3人の「連合軍」の協力による「トゥモローランド」での大冒険とアテナの死亡(死滅?)という悲劇を伴いながらも想定外の展開を見せていくデイヴィッドとの大決戦(?)に注目!子供達には是非本作描くそういう世界観を見せ、それぞれの夢を育んでもらいたいが、さて私たち団塊世代のジジイたちは・・・?
                                  2015(平成27)年6月19日記