洋15-78 (ショートコメント)

「追憶と、踊りながら」
    

                      2015(平成27)年6月13日鑑賞<テアトル梅田>

監督・脚本:ホン・カウ
リチャード(ゲイのイギリス人男性)/ベン・ウィショー
ジュン(介護ホームで暮らす初老のカンボジア系中国人女性)/チェン・ペイペイ
カイ(死亡したジュンの息子。リチャードのゲイの恋人)/アンドリュー・レオン
アラン(介護ホームで暮らす、ジュンに想いを寄せる初老の男)/ピーター・ボウルズ
ヴァン(英語と中国語の女性通訳)/ナオミ・クリスティ
2014年・イギリス映画・86分
配給/ムヴィオラ

現在の英国の若手人気俳優ベン・ウィショーとか、アジア映画界の伝説のヒロインとして知られるベテラン女優チェン・ペイペイとか言われても、知らないものは知らない。ただ、本作冒頭に流れる李香蘭(山口淑子)が歌った「夜来香」の歌だけは私もよく知っているから、チラシで読み、予告編で何度もイメージした「息子の真実を知らない母。真実を隠し続けようとする恋人。悲しみが二人を分かち、そして二人を結びつける」というキャッチフレーズ(?)に惹かれて、半分義務感で映画館へ。

日本語は述語が文章の最後にくるのでまどろっこしいが、英語も中国語も主語の次に述語がきたうえで、その後に目的語や補語がくる点では文法が共通。したがって、日本人よりイギリス人の方が中国語は理解しやすいのでは?私はそう思っているが、本作の主人公リチャード(ベン・ウィショー)とジュン(チェン・ペイペイ)との会話を聞いていると、そうでもないらしいことがわかる。

介護ホームに入っているカンボジア系中国人の初老の女性ジュンに対して、イギリス人青年リチャードがさかんに気を遣いながら会話しているが、どうもジュンはリチャードのことを嫌っているらしい。それは一体なぜ?他方、介護ホームの中でも老人同士の恋の花が咲くのは常。ジュンに対して想いを寄せているイギリス人の初老の紳士アラン(ピーター・ボウルズ)は、さかんにジュンに対してモーションをかけているが・・・。

◆最近、同性愛の映画、とりわけ近時観た『トム・アット・ザ・ファーム』(13年)(『シネマルーム35』252頁参照)のようなゲイの映画が目立つが、本作も亡くなったジュンの一人息子カイ(アンドリュー・レオン)とリチャードが共に裸でベッドに入ったまま会話を交わすシーンが登場するので、なるほどなるほど・・・。
 そりゃ自分の一人息子が自分を介護ホームに入れて、ゲイのお相手と2人で生活していることを知れば、母親のジュンが悲しむのは当然。カイ亡き今、リチャードは一生懸命ジュンを元気づけようとしているのだが、それが空振りに終わっているのは、どうもそこらあたりに原因がありそうだ。

◆そんなリチャードが思いついたアイデアは、リチャードがジュンとアランの「愛のキューピッド」の役割を果たすため、2人に通訳を紹介すること。互いの想いを告げるだけでなく、日常のたわいもない会話を積み重ねるためにも、共通の言語が不可欠。しかし、英語のしゃべれないジュンと中国語のしゃべれないアランでは、意思疎通が不十分なことは明らかだ。そこで、女性通訳ヴァン(ナオミ・クリスティ)をその間に立てて2人のスムーズな会話を積み重ねていけば、ひょっとして2人はいい友達になれるばかりか、それ以上の進展も・・・。
 リチャードのそんな思惑の中、本作中盤は英語と中国語の通訳の女性ヴァンを介した意味シンな会話劇が進行していくことになる。この展開は英語と中国語の勉強には最適だが、どうも言葉が通じれば通じるほど、2人の性格の相違、価値観の相違が目立っていくようで、かえってマイナス効果も・・・。

◆本作は英国期待の若手俳優ベン・ウィショーの魅力の他、死亡したカイを演じるアンドリュー・レオンの「美しさ」も味わえるから、若い女性客は大いに興奮するかもしれない。しかし、団塊世代の私には、初老の女性ジュンの魅力だけで90分弱の会話劇を楽しむのはちょっとしんどい。それぞれが役に応じた演技をきっちりこなしていることは認めるものの、元々の設定された空間と枠組みが狭すぎるため、私にはかなり退屈感も・・・。まあ、それはしょせん好みの問題だが・・・。
                                  2015(平成27)年6月16日記