日15-70 (ショートコメント)

「リアル鬼ごっこ」
    

                      2015(平成27)年5月28日鑑賞<東映試写室>

監督・脚本:園子温
原作:山田悠介『リアル鬼ごっこ』(幻冬舎文庫、文芸社刊)
ミツコ/トリンドル玲奈
ケイコ/篠田麻里子
いづみ/真野恵里奈
アキ/桜井ユキ
ジュン/高橋メアリージュン
むつこ/磯山さやか
2015年・日本映画・85分
配給/松竹、アスミック・エース

◆山田悠介が書いた『リアル鬼ごっこ』なる小説が中高校生たちの間で「バイブル」的に大ヒットしていることは知っていたし、それを原作とした映画が製作されていることも知っていた。しかし、私にとって、さすがにそんな映画はノーサンキュー。ところが、私の大好きな園子温監督が、なぜかそんな名作に挑戦!プレスシートを読むと、園子温監督は「“全国の佐藤さん”が鬼に追われ、鬼に殺される」という原作の設定を大胆に変更しただけでなく、「『リアル鬼ごっこ』というタイトルそのものにインスパイアされ、原作をあえて読まず、前からやりたかったこと、企画が結実しなかった作品のプロットをいくつも導入し、一から脚本を書きました」と述べている。
 その結果実現した本作の設定は、
①本作の標的は「全国のJK=女子高生」
②正体不明の何者かに追われる全国のJKたち。誰がJKを追うのか?そしてなぜJKが追われるのか?
③捕まったら、死。恐怖の鬼ごっこがはじまる!
というものに。たしかに、JKは良くも悪くも今の社会のキーワードだが、そんな設定の本作は一体・・・?

◆今年1月に66歳になった私は団塊世代だが、今なお若い女の子は大好きだから、アイドル情報もほどほど把握している。AKB48のセンターだった前田敦子の女優としてのすばらしさは『もらとりあむタマ子』(13年)(『シネマルーム32』125頁参照)や『Seventh Code(セブンスコード)』(13年)(『シネマルーム32』未掲載)に、大島優子のそれについては『紙の月』(14年)(『シネマルーム35』108頁参照)に書いているが、さて、AKBの元メンバーで「お姉さんキャラ」として売っていた篠田麻里子は?もっとも、本作最初のヒロインJKとして登場するミツコ役のトリンドル玲奈も、3番目に登場するいづみ役の真野恵里奈も全然知らないから、やっぱり団塊世代のおじさん(じじい?)のアイドル好きには限界も・・・。
 それはともかく、本作最初の衝撃(大笑い?)は、修学旅行らしきバスの中で楽しくはしゃいでいたミツコとその同級生たちが突然何者かに襲われ、バスもろとも胴体が真っ二つに斬られてしまうシーン。たまたまミツコだけは床に落ちたボールペンを拾っていたため無事だったが、さあこんな衝撃(大笑い?)の中、「リアル鬼ごっこ」のはじまりはじまり・・・。

◆中学・高校の6年間を男子校で過ごした私は、JKの生態や性態をよく知らないが、「リアル鬼ごっこ」の「標的」を全国のJKに変えたくらいだから、園子温監督はそれをよくご存知・・・?同級生たちをすべて失い、茫然自失状態となっているミツコの親友(レズ友達?)として登場し、ラストまでミツコと共闘する(?)アキ(桜井ユキ)との絆を見ていると、園子温監督のJKへの観察力の深さと自信が見えてくるが、私にはサッパリ・・・。夢の中の世界では、突然ワニが登場してJKを喰ってしまっても不思議ではないし、突如吹いてきた風にJKのスカートがめくれパンツが丸見えになっても不思議ではないが、別に観客席に座ってわざわざそんな風景を観なくても・・・。
 『ラブ&ピース』(15年)では“血が出ない”“誰も死なない”“エロくない”、奇想天外な世界観をスクリーン上に表現したが、園子温監督の本来の持ち味は、『愛のむきだし』(08年)(『シネマルーム22』276頁参照)、『冷たい熱帯魚』(10年)(『シネマルーム26』172頁参照)、『恋の罪』(11年)(『シネマルーム28』180頁参照)等で「魅せた」過激なエロやグロ。本作ではミツコ、ケイコ(篠田麻里子)、いづみという3人の主役のJK(?)を中心に、そんな園子温色を炸裂させているが、私にはギャグにしか見えない本作でのその可否は?

◆織田信長は比叡山の延暦寺焼き討ちや、徹底した本願寺門徒攻めを代表として、「中世的なもの」を次々と破壊し、信長独自の近代的な価値観を「天下」に「布武」したが、そこには良いものと悪いもの(その客観的な判断は難しいが・・・)があったし、好感の持てるものと好感の持てないもの(この判断は主観的だから簡単だが・・・)があった。それと同じように(?)園子温監督の映画づくりには、既存のものを破壊し、園子温独自の価値観を見せつけるものが多いが、そこにも、良いものと悪いものがあり、好感の持てるものと持てないものがあるようだ。
 本作のプレスシートで園子温監督自身も、「この『リアル鬼ごっこ』はみんなが僕に求めているもの、期待している園子温を久々に出せると思います」と語っているが、園子温監督に「求めているもの、期待しているもの」は人によって違うわけだ。しかして、本作に見る私の園子温監督への期待は大きく裏切られたが、さてあなたは・・・?
                                  2015(平成27)年5月29日記