洋15-64

「リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン」
    

                      2015(平成27)年5月21日鑑賞<テアトル梅田>

監督:アンドリュー・ラウ、アンドリュー・ロー
製作総指揮:マーティン・スコセッシ
サニー(中国からの不法移民孤児)/ジャスティン・チョン
ブルーム(FBI捜査官)/レイ・リオッタ
テディ(ポールの知人)/ジョン・キット・リー
ティナ(テディの娘、サニーの恋人)/シューヤ・チャン
ポール(スネークヘッド・ママの息子、青龍のボス)/ハリー・シャム・ジュニア
スティーヴン(サニーが預けられた女のサニーと同い年の息子)/ケヴィン・ウー
サム・ヒギンズ(FBIディレクター)/ジェフ・ピアソン
スネークヘッド・ママ(密入国マフィアの女ボス)/ユージニア・ユアン
サニー(少年期)/アレックス・フォックス
スティーヴン(少年期)/マイケル・グレゴリー・ファン
2014年・アメリカ映画・93分
配給/AMGエンタテインメント、武蔵野エンタテインメント

<同じ「ギャングもの」だが、興行成績は?>
 本作の邦題は、原題の『Revenge of the Green Dragons』をそのままカタカナにしただけのものだが、「グリーン・ドラゴン」とは青龍のこと。そして青龍とは、クイーンズ区フラッシングのチャイナタウンを仕切る、5つの中国系マフィアの一つだ。クイーンズ区はニューヨーク市に置かれた行政上の5つの区の一つで、ニューヨーク区マンハッタン島とブルックリン区の東にある。
 アメリカ・ニューヨークのマンハッタンを舞台とした「ギャングもの」といえば、何といってもマーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02年)(『シネマルーム2』49頁参照)が有名。同作の出来は上々で大ヒットしたが、さて本作の出来は?
 ネット情報によると、「この映画、アメリカでの評価は低く、興行的にも惨敗したらしい(wikipediaによると500万ドルの予算に対し興収6万ドル)」だが、それはなぜ?

<「売り」は、二大巨匠による奇跡のタッグ!>
 本作の「売り」は、『インファナル・アフェア』シリーズで香港アカデミー賞他、多数の映画賞を総なめにし、世界に名を知らしめたアンドリュー・ラウと、『インファナル・アフェア』のハリウッド版リメイク作『ディパーテッド』(06年)(『シネマルーム14』57頁参照)でメガホンをとりアカデミー賞作品賞他3部門を受賞、また、『タクシードライバー』(76年)、『グッド・フェローズ』(90年)、『ヒューゴの不思議な発明』(11年)(『シネマルーム28』15頁参照)、『ウルフ・オブ・ウォ-ルストリート』(13年)(『シネマルーム32』38頁参照)など傑作を連発し、“もっとも重要な映画監督”と称されるマーティン・スコセッシ、という二大巨匠による奇跡のタッグ。その2人が6年の歳月をかけて完成させた本作は、チラシによれば、2014年トロント国際映画祭を衝撃と感動の嵐で揺るがしたそうだが、さて日本では・・・?
 本作導入部では、中国からスネークヘッド(蛇頭)の密航ビジネスによってニューヨークに渡ってきた少年サニー(アレックス・フォックス)とスティーヴン(マイケル・グレゴリー・ファン)が徹底的に差別される中、青龍に入り、幹部にのし上がっていく姿がスピーディーかつスタイリッシュな演出で描かれる。しかして、本作の主要な展開部は?次第に期待は大きくなっていくが・・・。

<中国系マフィアたちの、血で血を洗う抗争劇は?>
 密航ビジネスを仕切るのは、スネークヘッド・ママ(ユージニア・ユアン)。そして、青龍を仕切るのは、その息子ポール(ハリー・シャム・ジュニア)だ。導入部に続いて描かれるのは、5つに分かれた中国系マフィア相互の、血で血を洗う抗争劇。これは、日本のヤクザ映画でも、イタリアのマフィア映画でもよく見る風景だが、あまり頭の良い奴が仕切っていないことが目立つだけに、その展開はイマイチ・・・。
 しかし、インテリマフィアのポールが、知人のテディ(ジョン・キット・リー)と組んで大規模な麻薬販売ルートを手掛けるようになると・・・。もちろん、そこではすっかりいい若者になったサニー(ジャスティン・チョン)やスティーヴン(ケヴィン・ウー)も大きな役割を果たすことに・・・。また、そこではテディの美しい娘ティナ(シューヤ・チャン)とサニーとの恋模様も描かれるが、血で血を洗うマフィアの世界では、所詮美しい恋物語など成立するはずはない。さらに、大規模な麻薬取引ともなると、FBIが動き始めることとなり、FBI捜査官ブルーム(レイ・リオッタ)が大きな役割を果たすことに・・・。

<青龍の掟が破られると・・・>
 サニーとスティーヴンが徹底的に教え込まれた青龍の掟は、①銃で相手を襲うときは頭を撃つこと、②目撃者を残さないこと、③白人を殺さないこと、等だ。③の掟は、中国人同士で殺しあっている限りアメリカの警察は本気にならないが、白人が殺されると徹底的に捜査することになるから、という理屈だ。
 近時、南シナ海の島々での埋め立てや軍事基地の建設を着々と進め、海洋進出を狙う習近平体制下の中国と、何かと「弱腰」と批判されるオバマ大統領率いるアメリカとの間で「米中冷戦」が強まっているが、本作の差別され、痛めつけられ続けている中国人たちが、近時のこの情勢を見れば、歓喜するはずだ。
 それはともかく、ある抗争の中でスティーヴンが白人を殺害したことによって、遂にアメリカの警察の捜査の手が青龍にも入ってくることに。そこでは、白人が殺人の被害者にされたことも大問題だったが、ポールによる大量の麻薬取引やスネークヘッド・ママによる大規模な密入国も大問題。そのため、本作後半では、マーティン・スコセッシ流の色彩が濃くなり(?)、FBI捜査官ブルームの活躍ぶりが目立ってくることに・・・。

<ラストの対決は?ボスたちの処罰は?>
 本作の主人公はサニーだが、子供の頃から一緒に育ち、共に青龍で成長し、幹部になったスティーヴンは、ある抗争の中で惨殺され、恋人のティナも法廷で青龍に不利な証言をした仕返しをきっちり受けさせられることに・・・。
 そんな「体験」を積むうち、悪の根源がどこにあるのかを少しずつ悟っていったサニーは、遂にその矛先をポールに向け、最後の対決となったが、そこに登場してくるもう一人の意外な中国人とは・・・?アメリカへ密航した中国人はタフだから、虐げられる中でマフィアとして成長する男もいれば、白人社会の中に何とか溶け込もうと努力し、差別的待遇を受けながらも警察官として頑張る男もいた。そんな、いわば「陰の男」が本作のラストシーンでは大きな役割を果たすことに・・・。
 すべてのドラマが終わった後、警察やFBIに検挙され、裁判を受けた中国人たちの全貌が明らかにされるが、さてポールの処罰は?スネークヘッド・ママの処罰は?しかして、その中にサニーはいるの・・・?
                                  2015(平成27)年5月22日記