洋15-61(ショートコメント)

「ホーンズ 容疑者と告白の角」
    

                  2015(平成27)年5月16日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督:アレクサンドル・アジャ
原作:ジョー・ヒル『ホーンズ 角』(小学館文庫刊)
イグ・ペリッシュ(メリン殺しの容疑者、角が生えた若者)/ダニエル・ラドクリフ
メリン・ウィリアムズ(イグの恋人、街のマドンナ)/ジュノー・テンプル
リー・トゥルーノー(イグとメリンの幼馴染み、弁護士)/マックス・ミンゲラ
テリー・ペリッシュ(イグの兄)/ジョー・アンダーソン
グレンナ・ニコルスン(イグとメリンの幼馴染み)/ケリ・ガーナー
デリック・ペリッシュ(イグの父)/ジェームズ・レマー
リンダ・ペリッシュ(イグの母)/キャスリーン・クインラン
ベロニカ(ダイナーの女店員)/ヘザー・グラハム
デイル・ウィリアムズ(メリンの父)/デヴィッド・モース
2013年・アメリカ、カナダ映画・120分
配給/ショウゲート

◆本作の「売り」は、チラシに書いてある「『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフに角(ツノ)が生えた!」というもの。そして、本作のポイントは、「恋人殺しの容疑者となった男は、誰もが真実を語り出す<角>を使って、真犯人に迫る―」というものだ。しかし、それって一体ナニ?予告編を観ると、たしかに恋人のメリン・ウィリアムズ(ジュノー・テンプル)を殺され、その容疑者とされたイグ・ペリッシュ(ダニエル・ラドクリフ)が怒りと絶望の日々を送っていたある日、目覚めると頭に角が生えていたという設定になっていたから、どうもその設定は大真面目らしい。
 しかして、そんな本作の原作は小説家スティーヴン・キングの息子ジョー・ヒルが書いた人気小説『ホーンズ 角』。スティーヴン・キングと言えば、『ショーシャンクの空に』(94年)、『グリーンマイル』(99年)等の映像化作品で有名だし、近時は『ドリームキャッチャー 』(03年)(『シネマルーム3』234頁参照)、『シークレット・ウインドウ(SECRET WINDOW)』(04年)(『シネマルーム6』48頁参照)、『ミスト』(07年)(『シネマルーム19』435頁参照)等もある。チラシでは、いちいち「その息子」と協調しなければならないところがちょっと辛い・・・。

◆とある小さな町で、ある日イグの恋人メリンがレイプされたうえ、石で頭部を打たれて死亡。その容疑者は何と、その直前にメリンから別れ話を切り出されたイグとされたから、町の人々はビックリ。映画は冒頭、イグの友人の弁護士リー・トゥルーノー(マックス・ミンゲラ)の尽力もあって、まだ逮捕されてもいないのに、容疑者としてマスコミから追い回されているイグの姿が映し出される。父デリック・ペリッシュ(ジェームズ・レマー)、母リンダ・ペリッシュ(キャスリーン・クインラン)の家にいても、イグは町の人々から悪魔だと非難され、家そのものがピケを張る町の人々に取り囲まれる有り様だ。そんな中、犯行現場で開かれた追悼会の後、怒りに溺れたイグは、酒浸りの中で置かれていたマリア像を踏み壊し、追悼ロウソクに小便をかけるという乱暴狼藉に及んだが・・・。

◆イグの頭に角が生えてくるというストーリーは小説のネタとしては面白くても、映像にするのは難しい。しかし、本作はその難題を見事にクリアしているし、ダニエル・ラドクリフもその苦悩を見事に表現している。しかして、この角の前では、人々はその胸の内を隠すことができなくなるというのがジョー・ヒルの原作の最大のポイントだが、さてスクリーン上におけるその表現は?
 イグが駆け込んだ病院の中で医師が角を切る手術に及びながら、途中看護師とどうしても「ヤりたくなった」と本性を晒してセックスに及ぶというシーンをはじめとして、本作中盤のバカげた描写の数々にはかなり違和感がある。また、イグが少年時代にメリンを含む幼馴染みのリー、グレンナ・ニコルスン(ケリ・ガーナー)たちと遊び戯れる回想シーンも、どことなくわざっぽい感じがある。また、小さな町の中でなぜリーだけが弁護士という仕事に就くことができたのかもサッパリわからないから、スティーヴン・キングの息子といいながら、ジョー・ヒルの原作では犯罪もの、サスペンスもの、裁判ものの基本はどう押さえられているの・・・?

◆イグの頭に生えた角にキリスト教的、宗教的な色彩が含まれていることが少しずつわかってくる中、後半に入ると俄然ヘビが大量に登場してくるから、そのキリスト教的、宗教的な色合いが一層明確になってくる。それにしても、メリンの死亡にミュージシャンをしているイグの兄テリー・ペリッシュ(ジョー・アンダーソン)が絡んでいたり、イグの幼馴染みのグレンナが絡んでいたというのは意外だ。また、メリンの父デイル・ウィリアムズ(デヴィッド・モース)がイグを殺したいとまで憎むのは当然だとしても、町のすべての人々から非難されてもイグの無実を信じてあげるべきイグの父デリック、母リンダまでもイグを見放してしまうストーリーも少し意外。そして、最も意外なのは、イグの弁護人としてとことんイグの無罪のために頑張っているはずのリーが、メリン殺しの犯人だったという設定だ。ラストに向けてこんな風に犯人像がミエミエになるのは犯罪もの、サスペンスものとして少し難があるうえ、イグの身体に急に羽根が生えてきたり、火を噴き始めたりすると、アレレ・・・。
 私としては、スティーヴン・キングの息子として作家の道を歩むのなら、やはり父親と同じようなスリルとサスペンスの正道を歩んでほしいと思うのだが・・・。
                                  2015(平成27)年5月18日記