日15-60(ショートコメント)

「白河夜船」
    

                  2015(平成27)年5月16日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督・撮影:若木信吾
原作:よしもとばなな『白河夜船』(新潮文庫刊)
寺子/安藤サクラ
しおり/谷村美月
岩永(寺子の恋人)/井浦新
2015年・日本映画・91分
配給/コピアポア・フィルム

◆有名な思想家、詩人、評論家である吉本隆明の娘・吉本ばななが1987年に発表した『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞したことは知っていたが、どうせその感性は理解できないだろうし、同感できないだろうと思って読んでいなかった。また、その後彼女がいろいろと書いていることも知らなかったし、『白河夜船』という映画の原作が吉本ばななということも、チラシを見るまでは全く知らなかった。

◆しかし、『白河夜船』の主演が安藤サクラで共演が井浦新だと知ると、俄然興味が。だって、安藤サクラは『0.5ミリ』(13年)(『シネマルーム35』180頁参照)と『百円の恋』(14年)(『シネマルーム35』186頁参照)で、近時すばらしい演技を見せているし、2014年の第88回キネマ旬報ベスト・テンでは主演女優賞に選ばれているのだから。さらに、安藤サクラと井浦新のコンビは梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督の『かぞくのくに』(12年)では、兄妹役ですばらしい味を見せていた(『シネマルーム29』86頁参照)から、本作には大いに期待!

◆タイトルとなっている『白河夜船』がいかなる意味を持つのかは、辞書を引かなくてもわかると思うが、本作鑑賞後ネット情報を調べてみると、吉本ばななの原作『白河夜船』には、『白河夜船』、『夜と夜の旅人』、『ある体験』の3編が収録されているらしい。その共通のテーマは「眠り」だ。
 映画冒頭から、安藤サクラ扮する寺子がベッドの中で下着姿のまま眠っている姿が映し出され、何となく色っぽく感じる面もあるが、要するに本作のテーマはそれ。そして、スクリーン上だけではその微妙な女ゴコロが観客に伝わらないと思ったためか、安藤サクラ自身が語るナレーションが多用されている。なるほど、若い女の子って、眠りながらこんなことを感じ、考えているの・・・?そんな理解が深まる点はプラスかもしれないが、さてさて、これはあくまで吉本ばななだけの文学作品上の感性・・・?

◆川端康成の小説『眠れる美女』や、それを映画化した『眠れる美女』(05年)(『シネマルーム18』297頁参照)の感性ならおじさんの私にもわかるが、寺子と谷村美月扮するしおりとの女の子同士の対話の中に登場する、しおりのお仕事、「添い寝」についての、吉本ばななの感性はちょっと・・・。
 近時、JK(女子高生)のバイト(職業)として、下着を見せながら折り鶴作りをする行為の犯罪性が問われているが、さて「添い寝」の犯罪性は?

◆『百円の恋』では、過激なファイト姿を見事に見せつけた安藤サクラが、本作では全裸でのベッドシーンを含む、いかにも女らしい役を徹底して演じており、それはそれで十分サマになっている。井浦新とのベッドシーンもいいし、海辺で戯れる2人の自由な演技も、スクリーン上の絵としてはかなりグッド。さすが気鋭の写真家として知られている若木信吾氏が監督、撮影した作品だと感心させられる。また、不思議な味を出しているのが、しおりを演ずる谷村美月で、安藤サクラとの女同士の対話のシーンもおじさん的には十分面白い。
 しかし、いかんせん、まともなストーリーの展開がなく、「眠り」をテーマにしたエピソードの羅列だけではやはり少し退屈・・・?原作者・吉本ばななも本作の完成を「奇跡」と呼んだそうだが、たしかにそのとおりかも・・・。
                                  2015(平成27)年5月18日記