日15-56(ショートコメント)

「パトレイバー 首都決戦」
    

                2015(平成27)年5月5日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督・脚本:押井守
原作:ヘッドギア『機動警察パトレイバー』
後藤田継次(警察庁警備部特科車両第二小隊隊長)/筧利夫
泉野明(第二小隊一班・操縦担当)/真野恵里菜
塩原佑馬(第二小隊一班・指揮担当)/福士誠治
カーシャ(第二小隊二班・指揮担当)/太田莉菜
太田原勇(第二小隊二班・操縦担当)/堀本能礼
山崎弘道(第二小隊一班・キャリア担当)/田尻茂一
御酒屋慎司(第二小隊二班・キャリア担当)/しおつかこうへい
シバシゲオ(特車二課・二代目整備班長)/千葉繁
淵山義勝(整備班副長)/藤木義勝
/森カンナ
/吉田鋼太郎
高畑慧(警視庁公安部外事三課の警部)/高島礼子
2015年・日本映画・94分
配給/松竹

◆いろいろと、情報としては聞いて知っていた『機動警察パトレイバー』シリーズの実写版、劇場版を、はじめて鑑賞。ウィキペディアによれば、「この実写プロジェクトは、他アニメ作品の実写版で良くある、『基本設定だけを共通とし世界観やストーリーは完全に別もの』や『歴代作品のテイストを活かしたリメイク的な作品』とは異なり、過去シリーズの歴史的流れを踏まえつつ、最も未来(2013年)で起こった出来事を描く構想となっている」そうだ。したがって、「過去作品の主な舞台となった警視庁の組織『特科車両二課第二小隊』が引き続き物語の中心に位置」しているらしい。
 もっとも、そんな事前情報はなくとも、本作冒頭のナレーションによるそれ相応の説明があるので、それを聞けば、なるほど、なるほど・・・。

◆「平和が日常となったわれわれの上空で、見えない脅威は、そのときを待っていた」。そんな不穏なナレーションどおり、本作は、横浜ベイブリッジが何者かによって破壊されるという大事件の発生から始まる。ひょっとして、それが最新鋭の戦闘ヘリを自衛隊から強奪したテロリスト集団による、計画どおりの展開だったとしたら・・・。
 本作では、自衛隊から強奪した戦闘ヘリが最新の熱光学迷彩を身にまとった、“視認できない戦闘ヘリ”「グレイゴースト」というところがミソ。後藤田継次(筧利夫)を二代目の小隊長とする、警察庁警備部特科車両第二小隊隊長の個性的な面々は、警視庁公安部外事三課の警部である高畑慧(高島礼子)からの「要請」に対していかに対応するの・・・?

◆『極道の妻たち』シリーズ(99年~)で岩下志麻の跡目を継ぎカッコいい啖呵を切って二代目アネゴ役をしっかり確立させた高島礼子が、本作では日本国の安全の根幹を担う警視庁公安部外事三課の高畑警部役をカッコよく演じている。高島礼子の出演は、彼女のファンである押井守監督の依頼によって実現したそうだからその存在感に注目!
 ストーリーの中には警視庁警備部の上層部が緊急事態の発生を受けて緊急の会議を開くシーンが登場するが、そこでの会議の運営を見ているとウンザリ。こんな上層部だからこそ、本作が描くような国を想う若者たちの暴走が生まれてきたのだろう。そう考えると、本作に見るテロ事件はあたかも1932年の5.15事件や1936年の2.26事件のようなもの・・・?

◆もちろん、軽々しくそんな対比をするのは厳禁だが、AH-88J2改グレイゴースト、機関砲、対地ロケット等々、聞いていてもサッパリワケのわからない各種兵器の威力に感心するだけではなく、それらを使いこなす人間の立場で、なぜ本作が描くような事件(テロ?)が起きてきたのかをしっかり分析する必要がある。
 その意味で、理屈っぽすぎるとはいえ、本作では高畑警部と後藤田第二小隊長との再三にわたる会話(?)に注目!

◆1945年に入り、敗色濃くなった日本では、アメリカ軍のB-29による爆撃が大変だったし、1960年から15年間続いたベトナム戦争では、B-52による北爆が大変だった。それに対して、2001年からのアフガニスタン戦争や2003年からのイラク戦争では、目に見えないステルス爆撃機が威力を発揮したし、近時はドローンと称する小型無人機の存在が注目を集めている。ちなみに、去る4月22日には総理官邸に小型の無人ドローンが墜落するという事件が起きたうえ、取りつけてあった直径約3センチ、高さ約10センチの茶色いプラスチック容器からセシウム由来の放射線が検出されたそうだが、そんなバカな・・・。
 しかして、謎のテロリスト集団(?)に最新の熱光学迷彩を身にまとった、視認できない戦闘ヘリ1機が乗っ取られ、それを自在に活用されると、首都東京の防衛がこれほど脆いということにビックリ。東京都庁がゴジラに踏みつぶされるのは仕方ない(?)としても、都庁や警視庁の高層ビルが戦闘ヘリ1機の銃撃で崩壊してしまうのは、あまりにあまりだ。しかして、そのテロリストを退治するため緊急出動することになった、第二小隊による警察用のロボットの活躍ぶりは・・・?

◆今年5月3日の憲法記念日を、日本国民はかなりの緊張感を持って迎えた。それはいよいよ、安倍晋三内閣の下で憲法改正の議論が本格化しようとしているためだ。押井守監督による本作の脚本には、現実の国際政治上も緊張状態の続く東アジア情勢に関する情報が盛り込まれているそうだが、あなたはそれをどう受けとめる?
 憲法改正の議論の前に、これからの国会で開始される「集団的自衛権の法制化」の議論が現実問題だが、それを真剣に考えるうえでも本作を十分参考にしたい。
                                  2015(平成27)年5月8日記