洋15-24 (ショートコメント)

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(FIFTY SHADES O F GREY)」
                                 

               2015(平成27)年2月22日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督:サム・テイラー=ジョンソン
原作:E・L・ジェイムズ『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(早川書房刊)
アナ・スティール(女子大生)/ダコタ・ジョンソン
クリスチャン・グレイ(27歳の巨大企業CEO)/ジェイミー・ドーナン
クララ・ウィルクス(女子大生)/ジェニファー・イーリー
グレース博士/マーシャ・ゲイ・ハーデン
ジェイソン・テイラー/マックス・マーティーニ
ミア・グレー/リタ・オラ
エリオット・グレイ/ルーク・グライムス
ケイト・カバナー(アナの親友の女子大生)/エロイーズ・マンフォード
レイ・スティール/カラム・キース・レニー
アンドリア/レイチェル・スカーステン
ホセ・ロドリゲス/ヴィクター・ラサック
ロビン“ボブ”アダムス/ディラン・ニール
2015年・アメリカ映画・125分
配給/東宝東和

◆ロンドン在住の一般女性が趣味でネットに投稿した小説が、全世界累計1億部突破の空前のベストセラーに!それが、E・L・ジェイムズ原作の『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』だ(そうだ)。なぜそんな社会現象が?チラシによれば、本作のうたい文句は、「その扉を開けたら、もう引き返せない。あなたなら、どうしますか・・・?」というもの。
 これだけでは、何のことかわからないが、「禁断の実」がおいしそうに見えるのは、アダムとイブの時代から今日まで変わることなく続いている。しかして、本作にみる「禁断の実」とは?

◆体調不良の親友ケイト・カバナー(エロイーズ・マンフォード)に代わって、今日はアナ・スティール(ダコタ・ジョンソン)が、巨大企業を率いる若き27歳のCEO、クリスチャン・グレイ(ジェイミー・ドーナン)のもとに取材に行くことに。現在、アナの就職活動がどこまで進んでいるのかは知らないが、卒業直前だというのに、そんなピンチヒッターの仕事をしていて大丈夫?そう思っていると、案の定、巨大ビルの中にある巨大な社長室での2人きりのインタビューにアナはあがり気味。しかも、スクリーン上でみせる、お世辞にも上手とは言えないインタビュー内容では、1分単位で動いているCEOのグレイはさぞかしご不満。そう思っていたが、意外にもグレイのアナに対する優しさや目つきは・・・?
 他方、完璧に洗練されたグレイの知的ムードに、アナもクラクラ・・・。ケイトとシェアしている部屋に戻ってからのアナのグレイに対する評価は、「美の権化」という最高級のものだったから、その直後にグレイから食事のお誘いがかかると・・・。

◆大ヒットする女性向けの恋愛小説や恋愛映画・ドラマには、いろいろなパターンがある。『冬のソナタ』(02年)をはじめとして、日本でも大流行した韓流ドラマでは、美男、美女の登場と純愛、悲恋が定番だった。それに対して、本作が大ヒットしたのは、圧倒的な財力をもつ完璧な美男と、逆に何の力もない卒業前の女子大生という、「格差」を前提とした支配と被支配(服従)をテーマにしたうえ、グレイの「ある性的志向」を全面に押し出したこと。
 男の魅力の1つがやさしさにあることは、昨年11月10日に亡くなった健さんこと高倉健を見れば明らかだが、やさしさだけではダメ。男には、やはり圧倒的な強さが不可欠・・・?しかして、グレイの場合の強さとは、カネと支配力だ。デートの小道具はヘリコプター、プレゼントは車、与える部屋は超リッチだが、その代償としてグレイがアナに求めたものとは・・・?
 ちなみに、名詞としてのshadeは①陰②濃淡、色合い③相違、ニュアンス。したがって、「シェイズ・オブ・グレイ」(shades of GREY)とは、グレイ氏の50の陰(色合い、相違)ということ。江戸川乱歩の小説『怪人二十面相』で見た怪人は20の顔の濃淡だったが、ひょっとして、グレイ氏には50の顔の濃淡が・・・?

◆これまで男との恋愛体験もなく、男とのセックス体験もなかったアナがグレイに求めたのは、普通の女の子としての恋愛。ところが、デート(?)を重ねる中でグレイがアナに求めたのは、秘密保持契約書と調教契約書という2通の契約書への調印だった。しかして、本作中盤は、その調教契約書の調印をめぐるグレイとアナの駆け引きがメインストーリーとなる。
 そんなグレイの提案にアナが戸惑ったのは仕方ないが、スクリーン上でその様子を延々と描かれても、私には筋書きがすぐに見えてしまうので、少々退屈。本作中盤では、契約前の予行演習としての性行為を何度も重ねながら、契約条項の解説や「プレイルーム」の見学等々、調教契約書への調印をめぐる2人のやり取りが進んでいくが、さてその展開は・・・?

◆私が不思議に思うのは、その間もグレイの会社は日々動いているはずなのに、なぜかグレイが仕事をしている様子が全く感じられないこと。弁護士稼業に忙しい私に言わせれば、私以上に忙しいCEOがプライベート用としてSMに特化した調教契約書を交わすのなら、人選だけは自分がやり、あとの交渉は秘書にまかせればいいのでは・・・?
 まあ、世の女性諸氏には、そんなプロセスの1つ1つが楽しく、かつ刺激的なのかもしれないが、私はグレイのヒマさ加減と我慢強さにいい加減ウンザリ。

◆「愛人契約」は公序良俗に反するため無効。日本の法律や判例ではそれが定着しているから、いくらキレイ事を言っても、アナとの調印を目指している調教契約書は法廷に出れば無効に決まっている。しかし、本作に見る程度のSM志向性はそれほどアブノーマルではないうえ、アナには拒否権や修正権があるのだから、適度に修正して調印すればいいのでは・・・?
 しかも、アナは最初からグレイのノーマルなセックス能力に満足していることは明らかなうえ、ちょっとだけ体験してみたSM的プレイにも意外な快感が。これなら、私でも少しずつハマっていけるのでは・・・?アナはそう思い、そう感じていたはずだ。スクリーン上にはそんな雰囲気が漂っていたから、調教契約書への調印はキマリ!そう思っていると、結末は意外にも・・・。そんな、ちょっと肩すかし気味の結末は、あなた自身の目でしっかりと。
                                  2015(平成27)年2月24日記