洋15-149 (ショートコメント)

「ビューティー・インサイド」
    

                     2015(平成27)年12月17日鑑賞<ギャガ試写室>

監督:ペク
ホン・イス(アンティーク家具専門店の店員の女性)/ハン・ヒョジュ
キム・ウジン/キム・デミョン、ド・ジハン、ペ・ソンウ、パク・シネ、イ・ボムス、パク・ソジュン、キム・サンホ、チョン・ウヒ、上野樹里、イ・ジェジュン、キム・ミンジェ、イ・ヒョヌ、チョ・ダルファン、イ・ジヌク、ホン・ダミ、ソ・ガンジュン、キム・ヒウォン、イ・ドンウク、コ・アソン、キム・ジュヒョク、ユ・ヨンソク 他102人
サンベク(ウジンの親友)/イ・ドンフィ
ウジンの母/ムン・スク
ウジンの父/イ・ギョンヨン
イスの父/チェ・ヨンミン
イスの姉/イ・ミド
イスの上司/シン・ドンミ
2015年・韓国映画・127分
配給/ギャガ・プラス

◆韓国映画『怪しい彼女』(14年)は、「青春写真館」に入り、店主から「私が50歳若くしてあげますよ」と言われたことによって、70歳のおばあさんが突然青春時代に戻るというバカバカしいアイデアの映画だった。しかし、「一人二役」の面白さを堪能できたうえ、コメディ全開の中でもついホロリとさせられるストーリー展開があり、それなりの出来だった(『シネマルーム33』282頁参照)。
 「映画はアイデア勝負!」だから、近時は「全員ろうあ者」の『ザ・トライブ』(14年)(『シネマルーム36』246頁参照)とか、「車の中の一人劇」の『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(13年)(『シネマルーム36』251頁参照)とかいろいろあるが、本作は「寝て目覚めると外見が変わってしまう」というアイデアで勝負!
 もともと男の子だったウジンは18歳の時からそんな「病気」にかかったそうだが、その姿は男、女、老人、子供から外国人まで・・・。しかし、いくら映画はアイデア勝負だといっても、ホントにそんなアイデアで映画ができるの?

◆俳優や歌手などの芸能人は観客に顔を見せるのが商売だが、芸能人でなくても顔は大事。顔が毎日変わったのでは、特定の誰かと継続的な人間関係を結んだり、継続的な商売ができないのは当然だ。しかし、インターネットが発達した今では、本作が描くように、顔を見せなくても「商品」だけで商売できる分野はあるらしい。つまり、ウジンのように、才能を活かして自分の工房の中だけで家具デザイナーの仕事をするのは、人と接触しなくても可能というわけだ。ウジンの「病気」のことを知っているのは、母親(ムン・スク)と親友のサンベク(イ・ドンフィ)だけだ。
 他方、スクリーン上を見る限り、男女、年齢、国を問わず、眠りから目覚めれば姿形が変わる「病気」では、髪のセットや着る服が大変。その他、めがねも視力に応じて各種揃えなければならないし、靴のサイズだって・・・。そう考えると現実にはそんな病気への対応は不可能だが、アイデア勝負の映画では、それをいかに楽しく見せるのかが勝負の分かれ目になる。
 本作にはキム・ウジン役を100人以上の俳優が演じているが、ウジンは男にも女にもなるから、何と日本の美人女優・上野樹里もウジン役の一人として登場し、重要な役割を演じているので、それにも注目!

◆目覚めるたびに顔の違うイケメンに姿形が変われば、毎日違う女の子とデートしたり、ベッドインしたりできるが、爺さん顔になってしまうとそれはムリ。また、特定の女性を好きになった場合、2日、3日と不眠状態を続けなければその女の子とデートを続けるのはムリだが、それは所詮人間には不可能だ。
 本作中盤には、ウジンが訪れたアンティーク家具専門店で出会った店員のホン・イス(ハン・ヒョジュ)にホレ込んでいくシークエンスが描かれる。ウジンは3日間は不眠のままでイスとのデートを続けたが、電車の中でつい眠ってしまい、目覚めるとアレレ、自分の顔が一転しておじさん顔に・・・。これではイスの前に出て行ってもウジンとわかるはずはないから、これにてイスとの恋はジエンド・・・?

◆いやいや、イスとの恋を続けようとすれば、自分の「病気」を正直に告白し、イスがそれでも付き合ってくれれば、十分可能。そう考えたウジンは、ある日女の子の姿のまま自分の病気を告白。イスがそれに驚いたのは当然だが、イスも相当したたかだ。ならば、眠った後に姿形が変わるウジンを見届けるため一緒に眠ろうと大胆な提案をしたから、なるほど なるほど・・・。その結果、イスと、毎日姿形の変わるウジンとの間にケッタイな形での恋愛が成立することに。そして、2人は毎日のようにデートを重ねたが、これを第三者が見ると、イスは毎日男をとっかえひっかえしているようになってしまうのでは・・・?
 しかして、本作後半は、2人の幸せいっぱいのデート風景と、次第にその矛盾が露呈していく姿が描かれる。しかし、そんな珍奇な物語(?)がホントにプレスシートに書いてあるように「カンヌも、観客も心を奪われた、感性を揺さぶる新しい愛の形。2人の最高に特別な恋が始まる!」と言えるの?

◆とは言っても、後半以降のイスの悩む姿を見ていると、本作は意外にシリアスなドラマにもなっている。そりゃ、毎日姿形がかわる男(女?老人?外国人?)を恋人として付き合っていくのは疲れるはず。当初は「愛してる、今日のあなたがどんな姿でも」と言えても、友人に自分の彼氏を紹介することもできないのはつらい。また、いきなり手を握られて「今日はこの姿のボクがウジンだよ」と言われても、毎日毎日そう簡単に「あっそう」と言えなくなっていくのは当然だ。
 そんなイスにとっては、ウジンからの結婚の申し込みは大きな負担に。その結果、秘かに飲んでいた睡眠薬の量が増え、イスは入院してしまう羽目になったが、こんな大きな「矛盾」の解決策はあるのだろうか?本作ラストに向ってはウジンの母親の物語も絡めて更に意外な展開になっていくのでそれに注目!
                                  2015(平成27)年12月18日記