洋15-144 (ショートコメント)

「メニルモンタン2つの秋と3つの冬」
    

      2015(平成27)年12月11日鑑賞<ビジュアルアーツ専門学校大阪試写室>

監督・脚本:セバスチャン・ベベデール
アルマン(33歳の独身男)/ヴァンサン・マケーニュ
アメリ(27歳の女性)/モード・ウィラー
バンジャマン(アルマンの美大の親友)/バスティアン・ブイヨン
カティア(言語療法士、バンジャマンの恋人)/オドレイ・バスティアン
リューシー(バンジャマンの妹)/ポーリーヌ・エチエンヌ
2013年・フランス映画・90分
配給/東風、gnome

◆タイトルになっている「メニルモンタン」とは、パリ20区の高台にある下町情緒あふれる街の名前で、アルベール・ラモリス監督の有名な『赤い風船』(56年)(『シネマルーム20』253頁参照)の舞台にもなっているらしい。しかし、そんなことを言われても、そこに行ったことのない私には残念ながら何の具体的なイメージも浮かんでこない。
 本作冒頭は、2009年の秋。そんな街メニルモンタンに住んでいる、ボルドーの美大を卒業した後定職にもつけず、冴えない独身生活を過ごしている男アルマン(ヴァンサン・マケーニュ)が、33歳の誕生日の日にカメラに向かってモノローグするシーンから始まる。彼が誕生日に自らに課した新たな覚悟は、①仕事を見つける②運動をはじめる③タバコをやめるというもの。なるほど、それはいいことだが、さてそれがどうしたの・・・?

◆他方、27歳の独身女性アメリ(モード・ウィラー)は結構美人。パリで人生を模索中の彼女は美術ライターを目指し画廊で働いているが、同じくカメラ目線のモノローグでは、可愛すぎる自分の名前が嫌いらしい。なるほど、しかし、それが一体どうしたの・・・?
 そんな2人がたまたま土曜日の朝、公園でジョギングをしていた時ぶつかったことによってはじめて声を交わしたが、出会いはそれで終わり・・・?いや、それでは映画にならないから、本作を監督、脚本したセバスチャン・ベベデールはかなり衝撃的なシチュエーションで2人を再会させ、その中で瀕死の重傷を負ったアルマンをアメリが看病することによって、2人の距離を縮めていくが、誰がどうみてもこりゃかなり作為的・・・?しかも、そこに登場するアルマンの「臨死体験」はかなりウソっぽい・・・?

◆アルマンには、10年前に美大で出会い5年間の学生時代を共に過ごしただけでなく、卒業後もメニルモンタンの街で親友関係が続いている男バンジャマン(バスティアン・ブイヨン)がいた。そのバンジャマンもアルマンやアメリと同じくカメラの前でモノローグをするが、ある日彼は突然激しい頭痛に襲われてアルマンと同じように生死の境をさまようことに。
 その病名はAVC(脳血管障害)だったが、若い言語療養士のカティア(オドレイ・バスティアン)によるリハビリの甲斐あって、奇跡的な回復を。そして今や、アルマンとアメリ、バンジャマンとカティアの2組の恋人同士はカティアの叔父がやっている山小屋に赴き、峠をトレッキングできるまでになったが、さて、それがどうしたの・・・?

◆私は現在66歳の日本人だから今の30代の日本人の若者の生活感覚や恋愛事情には通じているが、残念ながら30代のフランス人のそれは全然知らない。また、格別面白いメッセージのフランス映画があればそれを楽しみたいが、本作のように淡々とメニルモンタンの街における2組の男女の2つの秋と3つの冬の過ごし方を、モノローグを含むストーリーの中で見せてもらっても、何の興味も湧いてこない。
 今ドキの日本の若い男たちがおしなべて草食系になっているのと同じようにアルマンも草食系なのだろうが、それでもアメリとの出会いの後、必死になってアメリとの再会を目指す姿や、アメリを自宅での食事に誘った後、キスをし結ばれるまでのプロセスの組み立て方を見ていると、やっぱりフランスの若者は日本人の若者よりは肉食系・・・?日本ではアルマンとアメリのような、あるいはバンジャマンとカティアのような恋愛はなかなか成立しないのでは・・・?そんな気がする。しかして、またそれがどうしたの・・・?

◆本作のチラシとプレスシートには、「かつてのヌーヴェル・ヴァーグの映画にあった精神と遊び心のある、最も新しい才能!」「ゴダールにオマージュをささげた、青春映画。これが、今のパリだ!」「現代のパリジャンたちの恋と人生をリアルに描いた傑作」と本作のうたい文句が書かれている。33歳の男の恋愛物語に今さら「みずみずしい」という形容詞はふさわしくないかもしれないが、本作には現代のパリジャンたちの恋と人生のみずみずしさがあふれている。それはそれでよくわかるのだが、やはり66歳の日本人の私が見てもあまり参考にもならず、共感もできないためか、90分間を割とシラケた目線で鑑賞することに。
 さて、こんな映画を日本の30代の男女はどのように鑑賞し、どのように共感するのだろうか・・・?
                                  2015(平成27)年12月15日記