洋15-140

「コードネーム U.N.C.L.E.」
    

               2015(平成27)年11月23日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督:ガイ・リッチー
ナポレオン・ソロ(CIA工作員)/ヘンリー・カビル
イリヤ・クリヤキン(KGB工作員)/アーミー・ハマー
ギャビー(ガブリエラ)・テラー(自動車整備工場で働くドイツ人科学者の娘)/アリシア・ヴィキャンデル
ヴィクトリア・ヴィンチグエラ(国際犯罪組織の女ボス)/エリザベス・デビッキ
アレキサンダー・ウェーバリー/ヒュー・グラント
サンダース/ジャレッド・ハリス
アレグザンダー/ルカ・カルバーニ
ルディ/シルベスター・グロート
/クリスチャン・ベルケル
/ミシャ・クズネツォフ
2015年・アメリカ映画・116分
配給/ワーナー・ブラザース映画

<『007』派だった?それとも『0011』派だった?>
 来たる12月5日にシリーズ第24作となる『007 スペクター』(15年)が公開される、『007』シリーズの第1作たる『007/ドクター・ノオ』(62年)(当時の邦題は『007は殺しの番号』)が公開されたのは1962年。東西冷戦の時代に英国諜報機関のスタッフだったイアン・フレミングの原作でつくられた『007』シリーズは、当初はシリアスさが売りだった。とりわけ、第2作『007 ロシアより愛をこめて』(63年)は、『引き裂かれたカーテン』(66年)等と並んで、米ソ冷戦時代の中でこそ生まれたシリアスなスパイ映画の傑作だった。
 「007」というコードネームは当初の邦題どおり「殺しの番号」(ライセンス)だが、イギリスのMI6に所属するスパイ・ジェームズ・ボンドの向こうを張って、アメリカのCIAに生まれた殺しのライセンスを持つスパイが国際機関アンクル(U.N.C.L.E.)(United Network Command for Law and Enforcementの略)のエージェントになっている、コードネーム「0011」のスパイ・ナポレオン・ソロ。こちらも、ジェームズ・ボンドと同じく「女たらし」が持ち味だが、女以外はすべて完璧なジェームズ・ボンドに対して、根が不真面目でかなりとぼけた性格のスパイがナポレオン・ソロだ。もっとも、そんな彼にはイリヤ・クリヤキンというナポレオン・ソロとは性格が正反対のクソ真面目な相棒がついているから、ナポレオン・ソロはコードナンバー「002」のイリヤ・クリヤキンとセットで一人前だった。
 アメリカでは1964年から68年まで4シーズンにわたって放送されたテレビドラマが、日本で放送されて人気を博したのは1966年から70年まで。したがって、私は大学受験が最も大変な高校3年生の時にそれを観ていたことになる。このテレビドラマをめぐっては、あなたはナポレオン・ソロ派?それともイリヤ・クリヤキン派?の議論が話題を呼んだが、それと同時に、あなたは「007」派?それとも「0011」派?の議論もあった。『007 スペクター』は去る11月10日に鑑賞したが、それに続いてあの1960年代の人気テレビドラマ『0011ナポレオン・ソロ』を映画化した本作が公開されるとは何ともラッキー。しかし、2015年の今、東西冷戦時代に生きたスパイであるナポレオン・ソロやイリヤ・クリヤキンは一体どんなスパイ活動を?また、テレビドラマでの彼らの「宿敵」は国際犯罪組織スラッシュ(THRUSH)だったが、さて本作における「宿敵」は?

<国共合作があるなら、CIAとKGBの合作だって!>
 去る11月7日には、1949年の「中台分断」後、初の中国国家主席・習近平と台湾総統の馬英九のトップ会談が実現した。日中戦争時代の中国では、蒋介石率いる国民党と毛沢東率いる中国共産党は犬猿の仲だったが、共通の敵・日本に対抗するためには「国共合作」が不可欠とされ、第1次国共合作(1924年)、第2次国共合作(1937年)が成立したことは歴史上の重要な事実だ。他方、東西冷戦の主役国は、もちろんアメリカとソ連。そして、その両国を代表するスパイ組織がアメリカのCIAとソ連のKGBだ。したがって、東西冷戦時代には、戦国時代における伊賀忍者と甲賀忍者のように、闇の世界で両者が激しく争っていたわけだ。
 テレビドラマにおけるナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンは同じアンクル所属のスパイだった。しかし、本作におけるナポレオン・ソロはCIAのスパイ、そしてイリヤ・クリヤキンはKGBのスパイ。したがって、両者はもともと相対立するスパイ同士だが、アメリカとソ連が開発競争をしている核兵器の技術を横取りすることによって世界征服を夢みる国際犯罪組織が登場してくると、その敵に共同で対抗するためには、国共合作と同じようにCIAとKGBの合作が不可欠。
 そんな設定のため、本作冒頭、自動車整備工場で働く娘ギャビー(ガブリエラ)・テラー(アリシア・ヴィキャンデル)をめぐって激しく争っていたナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンは、上部の指示によってしぶしぶ手を組むことに。

<魅力的なヒロインに注目!その変身ぶりに注目!>
 『007 スペクター』にヒロイン役として登場したフランス人女優レア・セドゥは豊満な魅力にあふれていたが、本作でギャビーを演じるアリシア・ビカンダーはキュートな魅力いっぱいのスウェーデン人女優。彼女が国際犯罪組織の核開発のために協力している科学者の娘であることをつきとめたCIAとKGBは、何とか彼女を味方にしてその父親と接触し、核兵器の開発を中止させるべく説得してもらおうというのが、本作の基本ストーリー。
 そこで、イリヤ・クリヤキンをギャビーの婚約者にでっちあげたうえ、まずはギャビーのおじさん(アンクル)と接触する計画を立てたが、筋肉ムキムキの体育会系で激情型、そして恋や愛とは全く縁のないような男イリヤ・クリヤキンにそんな恋人役がつとまるの?誰がどう考えてもその役目はナポレオン・ソロの方が適役だが、CIAとKGBの上層部はなぜこんな誤った人選を?
 ちなみに、『007 スペクター』もかなり凝ったストーリー展開になっていたが、本作も魅力的な自動車整備工場で働く(素人)娘と思っていたギャビーが、後半以降はあっと驚く本性を見せて大変身するので、それに注目。

<妖艶かつ残忍な女ボスにも注目!>
 他方、『007 スペクター』ではタイトルどおり、後半に『007』シリーズ始まって以来のジェームズ・ボンドの宿敵スペクターが登場する。そのスペクターを演じたのが、タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(09年)(『シネマルーム23』17頁参照)で残忍なナチス将校役を演じたクリストフ・ヴァルツだけに、ジェームズ・ボンドの少年時代における微妙な人間関係の解明を含めて大きな存在感を放っていた。
 それに対して、本作で謎の国際犯罪組織の女ボスになるのは、ヴィクトリア・ヴィンチグエラ(エリザベス・デビッキ)。こちらはギャビーのような若いベッピンではつとまらず、当然年相応の人妻だが、高級ドレスと高級ジュエリーのおかげもあってこちらも妖艶な美人。もっとも、華やかなパーティーでギャビーやその婚約者イリヤ・クリヤキンを接待する分にはその妖艶さにうっとりだが、いざワルの部分を見せ始めると、この女実はかなり残忍。そのため、ギャビーの父親は利用されるだけ利用された挙げ句にあっさりと・・・。

<ド派手なカーアクションにも、懐かしさと安心感が>
 ローマを舞台にした映画の代表作と言えば、オードリー・ヘプバーンが主演した『ローマの休日』(53年)。そこでは、新聞記者ジョー・ブラッドレーのバイクに乗った王女アンが楽しそうにローマの街を見学する姿が印象的だった。それと同じように、本作にもローマに乗り込んだナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンがある日バイクに相乗りしてローマの街を疾走するシーンが登場するが、その魅力はイマイチ・・・。
 他方、騙し騙されのストーリー展開の他にもアクションを売りにするスパイ映画ともなれば、カーアクションが不可欠。『007』シリーズでは、それがどんどん進化し続けてきた。したがって、ジェームズ・ボンドが乗りこなすスーパーカーのハイテク装備ぶりとそのスピードにはビックリだが、さて本作に見る東西冷戦が続く1960年代のカーアクションは?
 古き良き昭和の時代を描いた『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年)ではミゼット三輪車がその1つの象徴だった(『シネマルーム9』258頁参照)が、ハイテクという言葉自体が存在しなかった1960年代では、導入部に見るド派手なカーアクションもたかが知れているのは当然。そこでは何と猛スピードで逃走しようとするナポレオン・ソロ運転の車を、体力抜群のイリヤ・クリヤキンが走って追いかけていたから、いやはや・・・。そんな時代のド派手なカーアクションに、一種の懐かしさと安心感を覚えたのは私だけ・・・。

<スーツは戦闘服!3人のスパイのベストドレッサーは?>
 『007 スペクター』のプレスシートには、「仕事着=戦闘服としてのスーツ」という小見出しで、「ジェームズ・ボンドのアクションは、スーツ姿でキメるからカッコいい。それは、イオン・プロが50年余年間守り通してきた『ボンド映画の公式』でもある」と書かれている。たしかに、初代のショーン・コネリーから6代目のダニエル・クレイグまで、ジェームズ・ボンドを演じた俳優たちはすべてスーツ姿がバッチリ決まっていた。
 他方、同じスパイ映画だが、とことんシリアスさにこだわった『裏切りのサーカス』(11年)では、複雑なストーリー展開に興味の重点が置かれていたため、スパイたちのスーツ姿にはあまり目がいかなかった(『シネマルーム28』114頁参照)。しかし、『キングスマン』(14年)では、ロンドンにある高級スーツ店「キングスマン」を本拠地にしているだけに、コリン・ファース演じる、どの国にも属さない世界最強のスパイはとことんスーツ姿にこだわっていた。また、本作でナポレオン・ソロの相棒として登場するイリヤ・クリヤキンはハイネックのセーターにアクティブなジャケット、ハンチング帽がトレードマークだが、遊び人のナポレオン・ソロは常に乱れないスリーピースの着こなしが最大のポイントだ。
 運動能力は抜群だが岡田准一と同じように少し小柄なダニエル・クレイグは、蝶ネクタイ姿もよく似合っている。しかし、『キングスマン』のコリン・ファースも、本作のヘンリー・カビルも大柄なだけに、蝶ネクタイ姿での勝負はない。しかして、この3人のスパイの中で、あなたが選ぶベストドレッサーは?
                                  2015(平成27)年11月26日記