洋15-135 (ショートコメント)

「午後3時の女たち」
    

                  2015(平成27)年11月14日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督・脚本:ジル・ソロウェイ
レイチェル(専業主婦)/キャスリン・ハーン
マッケナ(ストリッパー兼売春婦)/ジュノー・テンプル
ジェフ(レイチェルの夫)/ジョシュ・ラドナー
レノア(心理カウンセラーの女医)/ジェーン・リンチ
2014年・アメリカ映画・98分
配給/アットエンタテインメント

◆ほとんどの男は女性週刊誌を読むことはないが、男性週刊誌のネタがヌード、セックス、スポーツなら、女性週刊誌のそれはセックス、おしゃれ、食べ物?その中でも、人気を集める定番はセックスレス主婦の悩み・・・?そんなテーマを描いた本作は、サンダンス映画祭で監督賞を受賞するなど、高い評価を受けているそうだが、本作のチラシが何よりも強調しているのは、タランティーノ監督が絶賛したこと。彼は本作を『ブルージャスミン』(13年)(『シネマルーム32』27頁参照)や『フランシス・ハ』(12年)と並べて“2013年ベスト映画10”に選出したらしい。
 そう聞くと、本作の主人公である平凡な主婦レイチェルを演じるキャスリン・ハーンも、レイチェルの人生に大きな変化を与えることになる若きストリッパー兼売春婦マッケナを演ずるジュノー・テンプルも全然知らない女優だが、「こりゃ必見!」と思って映画館へ。

◆チラシでは、レイチェルを「平凡な主婦」と紹介していたが、聞くと見るとでは大違い。レイチェルの夫のジェフ(ジョシュ・ラドナー)は、ブログで大成功をおさめている起業家らしく、この夫婦が住んでいるのはものすごい豪邸だ。そして、夜の生活ではセックスレスながら、夫は常に妻にやさしいうえ経済的に何の不満もないから、レイチェルはボランティア活動に精を出しながら、心理カウンセラーのレノア(ジェーン・リンチ)の下で、セックスレスの悩みを相談していた。
 セックスレスの定義は「病気など特別な事情がないのに、1か月以上性交渉がないカップル」だから、レイチェルもそれに当てはまるが、「するとしたら、いつしたいの?」とのレノアの質問に対するレイチェルの答えは、何と「午後3時!」つまり、カーテンを閉めての「昼下がりの情事」がお望みらしい。なるほど、女性週刊誌における「セックスの悩み特集」はいつもこの手の記事でいっぱい・・・?

◆日本でもストリップ劇場は昔からあり、渥美清やビートたけし、萩本欽一らは子供時代にそこを遊び場にしながら育ったらしい。しかし、本作を観れば、アメリカの金持ちは一方でもっともらしく社会奉仕をやりながら、他方で夫婦やグループでストリップ見学にいくというからビックリ!もっとも、本作で言うストリップは日本のストリップ(小屋)とは全然違うシステムだから、まずはそれに注目!
 そのうえ、アメリカでは別料金を支払えば個室での個別サービスも受けられるようだから、売春宿との区別は難しい。ちなみに、今年の10月8日夜に発生した広島市内の「メイドカフェ」の火災で被害者となった4人の男女がいたのは2階の「エステルーム」と称する個室だが、こりゃ実質みんな売春宿・・・?それはともかく、夫がどんなサービスを受けたのかは本作では描かれないが、レイチェルが19歳と自称するストリッパーのマッケナから受けた個室での特殊サービスの内容は?

◆ある日、レイチェルが街で偶然マッケナと出会ったところから、本作中盤のストーリーが展開していく。何ゴトもあっけらかんと話すマッケナは、服装と化粧の派手さを除けば、そこらの女子大生と同じだから、たちまちレイチェルはマッケナと意気投合。住んでいるところを追い出されたマッケナを見ると、レイチェルはたちまちボランティア精神を発揮して快く「しばらくわが家に泊まりなさい」と申し出たが、そんなことってホントにあり・・・?
 そりゃレイチェルの家は豪邸だから、1人くらい居候がいてもOKだが、一般家庭にこんな女が入り込めば・・・?そんな言い方自体が差別かもしれないが、さてレイチェルの選択をジェフやレイチェルの友人たちはどう受け止めるの・・・?

◆1、2泊だけの泊まりなら問題はないだろうが、続いて大切な2人の子供の「子守り」もマッケナにしてもらうとなると、問題は別。レイチェルは昼間の活動中もあっけらかん(ノー天気に?)とマッケナを友人たちに紹介していたが、友人たちがマッケナがもつ異様な雰囲気に軒並み怪訝そうな顔をしたのは当然だ。
 ジェフとレイチェルの家には、小さいながらもプールがあった。そのプールサイドで大胆なビキニ姿で寝そべっているマッケナを見るといかにも今風の女子大生だが、ある日ジェフの家でパーティーが開かれ、酒の量が増えてくると・・・。女たちは女同士のおしゃべりに夢中だが、酒浸りになってカードに興じている男たちの中に一人マッケナが参加してくると、その部屋はいつの間にか乱交パーティー(?)の様相に。そして、ジェフが招いた友人たちがみんな男なら、ホストのジェフだって男。しかして、その行きつく先は・・・?

◆もっとも、本作はマッケナが主役ではなく、あくまレイチェルが主役。レイチェルはリッチだから退屈で平々凡々の日々を送っていたが、突然マッケナのようなストリッパー兼売春婦との交流の中でさまざまなセックスに目覚めると、当然大きく変わったのが夫とのセックスライフ。もちろん、ジェフもそれを喜んだから、スクリーン上には時としてド激しい夫婦の営みのシーンが登場してくる。
 しかし、そのシーンはかつて日活ロマンポルノで観たようなホントに興奮するような絡みではなく、あくまで欧米流の激しいだけのものだから、私にはそれが大いに不満。さらに、夫との間で新たなセックスの悦びを見い出したレイチェル自身は楽しいだろうが、観客としては中年女のそんな姿に格別魅力を感じないから、結局本作の出来はイマイチ・・・。そこが、タランティーノ監督の感じ方と、何かと淡泊な日本人である私(?)の感じ方との違いかも・・・。
 もちろん、あの事件の直後にマッケナはジェフの家から追い出されることになったが、いったんセックスの味を覚えたレイチェルのような中年女の、それ以降の「午後3時」の過ごし方は・・・?
                                  2015(平成27)年11月18日記