洋15-134 (ショートコメント)

「サヨナラの代わりに」
    

                  2015(平成27)年11月14日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督:ジョージ・C・ウルフ
原作:ミシェル・ウィルドゲン『You’re Not You』
ケイト(筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した主婦)/ヒラリー・スワンク
ベック(ケイトが介助人として雇った女子大生)/エミー・ロッサム
エヴァン(ケイトの夫、弁護士)/ジョシュ・デュアメル
マリリン(ALSの黒人女性)/ロレッタ・ディヴァイン
エリザベス(ベックの友人)/マーシャ・ゲイ・ハーデン
ウィル(ベックに惚れこむ男)/ジェイソン・リッター
グウェン(マリリンの夫)/フランシス・フィッシャー
2014年・アメリカ映画・102分
配給/キノフィルムズ

◆映画冒頭、ケイト(ヒラリー・スワンク)と夫エヴァン(ジョシュ・デュアメル)とのシャワールームでの激しい「絡み」をはじめとして、「これでもか!これでもか!」という幸せの絶頂を見せつける短いシーンが続いていく。そして、その直後、1年半後の車イス生活へドスン!映画の演出方法としては「なるほど」だが、こりゃちょっとわかりやすすぎる感も・・・。
 また、エヴァンは弁護士らしいが、この夫婦が住んでいる家はものすごい豪邸だし、妻に対する優しさは冒頭ではもちろん、車イス生活となったケイトの朝の化粧まで完璧にしてやっているから、並大抵ではない。そんな点でも、ミシェル・ウィルドゲンの原作にもとづく難病モノの本作は、ちょっと現実感に欠けるきらいが・・・。

◆介助人は、ALS患者であるケイトの介助の仕事を粛々と完璧にこなしてくれる人がベスト。エヴァンの考え方はそうだが、ケイトはそうではなかったらしい。その結果、ケイトは現在の(完璧な)介助人を勝手にクビにし、自分で面接した、何の資格もないうえ介助の経験もなく家事さえロクにできない大学生のベック(エミー・ロッサム)を夫の反対を押し切って雇ったが、その理由は?
 それは、「私の話しを聞いてくれそう」という一点からだったが、エヴァンが完璧主義者ならケイトも完璧主義者。そんな2人は、ベックのようないい加減なダメ女(?)とはうまくいくはずはないのでは・・・?

◆ケイトを演じるヒラリー・スワンクは、『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)(『シネマルーム8』212頁参照)で2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞したビッグネーム。他方、ベックを演じるエミー・ロッサムは『オペラ座の怪人』(04年)のヒロイン・クリスティーヌ役で「天使の歌声」を聴かせ、私を含む全世界のミュージカルファンを魅了した女優だ(『シネマルーム7』156頁参照)。
 そんなエミー・ロッサムが本作導入部では、教授と不倫するわ、酔っぱらった勢いで手当り次第に男とエッチするわ、のハチャメチャな女子大生ベック役を演じている。しかし、私の目には、その演技自体に少し無理が目立つうえ、そんなベックのキャラと、ケイトが求める介助役にベックがピッタリだったという本作のストーリーの筋にも少し違和感がある。また、本作後半にベックが見せる男関係での意外な固さ(?)を見ると、導入部でのベックのキャラの見せ方は、ケイトの幸せ度を強調しすぎたのと同じように、少し強調しすぎでは・・・?

◆ケイトの不満って一体ナニ?それが本作最大のテーマだが、その本来のテーマに踏み込む前に、ベックが住み込みの介助人となった直後に起きる騒動は、ケイトがベックに無理強い(?)をして、エヴァンのメールを盗み見したことによって判明したエヴァンの不倫。しかし、男の私に言わせれば、エヴァンはこれだけケイトのために尽くしているのだから、不倫の1つや2つくらい・・・。
 大邸宅で開催される友人たちを招いたパーティを見ている限り、エヴァンもケイトもその両親がリッチで交友関係も広いことが明らかだが、どうもケイトにとっては、そんな環境自体が重荷になっていたらしい。したがって、ベックと共に家を飛び出しベックが友人のエリザベス(マーシャ・ゲイ・ハーデン)と一緒に住んでいる安物のアパートに転がり込むと、以降はベックと一緒に遊ぶわ、遊ぶわ・・・。ナニ、これが本来ケイトが求めていた「自由」というもの?ちょっと、そこらあたりにも違和感が・・・。

◆ALSは末期には呼吸困難になるため、人工呼吸器をつけなければならなくなるらしい。ベックの介助を受ける中で知り合った、同じALSの重症患者である黒人の女性マリリン(ロレッタ・ディヴァイン)とその夫グウェン(フランシス・フィッシャー)からケイトは多くのことを学んだが、そのマリリンが人工呼吸器をつけて苦しそうに死期を迎える姿を見ていると、ケイトは・・・?
 本作ラストには、意識が亡くなった後に人工呼吸器をつけるか否かの決断を誰にさせるかについて、患者の意思をどう扱うかという、法的にも倫理的にもシリアスなテーマが登場する。その決定権を争うのは、ケイトが指名したベックとそれを認めようとしないケイトの母親だが、法的にはともかく、本作が描くその展開は?
                                  2015(平成27)年11月16日記