洋15-122

「マイ・インターン」
    

              2015(平成27)年10月25日鑑賞<TOHOシネマズ西宮OS>

監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ
ベン(シニア・インターン)/ロバート・デ・ニーロ
ジュールズ(ファッションサイトの社長)/アン・ハサウェイ
フィオナ(ベンと恋におちる女性)/レネ・ルッソ
ジェイソン(インターンの指導員)/アダム・ディヴァイン
マット(ジュールズの夫)/アンダーズ・ホーム
ペイジ(ジュールズの娘)/ジョジョ・クシュナー
パティ(ベンに恋する近所の女性)/リンダ・ラヴィン
ルイス/ジェイソン・オーリー
デイビス/ザック・パールマン
キャメロン(重役)/アンドリュー・ラネルズ
ベッキー(ジュールズの秘書)/クリスティーナ・シェラー
2015年・アメリカ映画・121分
配給/ワーナー・ブラザース映画

<このじいさん(失礼?)カッコ良すぎ!>
 今や男も女も寿命が延びているが、そうなってくると、「若大将」こと加山雄三がTVコマーシャルでいうように、「健康寿命」の大切さが痛感されてくる。さらに、日本では戦後の高度経済成長による一億総中流意識の中、会社人間一色になったから、定年退職を迎えた男の生き方(生き甲斐探し)が近時大きなテーマになってきた。とりわけ、私たち団塊世代がそうで、弁護士の私には定年はないが、会社勤めだった同窓生たちは全員退職し、それぞれ悠々自適を含む第2の人生を模索している。
 しかして、本作でロバート・デ・ニーロ演じるベンは電話帳製作会社に40年間勤め、亡き妻を今も愛する70歳の老人。なぜ子供がいないのかはわからないが、大きな家に一人で住んでいるベンは、知性と品格を備え、トラッドなスーツにネクタイを締めた、今ドキ絶滅危惧種ともいえるカッコ良いじいさんだ。日本でも近時老人モノの映画は多いが、ビートたけしが演じるじいさんは概ねガラが悪いし、『赤い玉、』(15年)で見た奥田瑛二が演じた老映画監督はかなりエロかった。それに比べると、ベンはクローゼットの中の整理ぶりを見ただけでも、その紳士ぶりがよくわかるし、劇中に登場する「男のハンカチは女性の涙を拭くためにあるんだよ」とのセリフを聞けば、そのカッコ良さに唖然!
 ストーリーの展開につれてこのじいさん、いや70歳のいぶし銀の老紳士の魅力が一層光り輝いてくるので、それに注目!しかし、それにしても、このじいさんあまりにカッコ良すぎ!

<起業家として大成功した、若き女社長は?>
 日本でも、ソフトバンクの孫正義や楽天の三木谷浩史に続けとばかりに、さまざまな業界で「起業」が競われているが、アメリカや中国では日本以上にそれがさかんだ。しかして、本作のもう一方の主人公となるアン・ハサウェイ扮するジュールズは、1年半前にファッションサイトの会社を立ち上げてニューヨークのブルックリンにオシャレなオフィスを構え、今では220名の社員を抱える企業に急成長させた女性で、現在30歳。そのモデルになったのは、今全米で注目を集めている「ABOUT THE FIT」。当初は、現在CEOを務めるジュールズ・オースティンが、ブログ上にさまざまな服を試着し、コメント付きでアップ。日増しに閲覧数が増え、人気に火がついたことで、話題を呼んだ会社だ。
 何よりも時間を無駄にすることが嫌いなジュールズは、そんな急成長した会社の中を自転車で走り回っているが、最低限①デザイナーとして、②経営者として、③営業責任者として、の仕事をこなさなければならないから大変だ。ジュールズは優しい夫マット(アンダーズ・ホーム)と一人娘のペイジ(ジョジョ・クシュナー)と共に生活しているが、妻の仕事に理解を示すマットが主夫をしてくれているからありがたい。しかし、このままではいつかパンクしてしまうのでは・・・?
 そこで、現在急浮上しているのは、デザイナーとしての仕事と経営を分離するべく、ベテランの社長をCEO(最高経営責任者)としてヘッドハンティングする案だ。それはそれで株主を納得させる上でも一案だが、下手するとせっかく自分の才覚で創設し、急成長させた会社を乗っ取られてしまう危険があるのでは・・・?さらに、今はマットとの仲はうまくいっているようだが、彼はいつまで主夫の立場でジュールズを支え続けてくれるの?主夫として必然的にジュールズの「ママ友」たちと接しているうちに、ひょっとして浮気の1つでもされたら、たちまち家庭は・・・?

<この女優の本来の持ち味は、明るさ!>
 アン・ハサウェイは、『レイチェルの結婚』(08年)(『シネマルーム22』65頁参照)で、清純派美人女優のイメージをかなぐり捨てて薬物中毒患者の役に挑み、第81回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたが、残念ながら敗退。そのアン・ハサウェイが、『レ・ミゼラブル』(12年)(『シネマルーム30』48頁参照)のファンテーヌ役でアカデミー賞助演女優賞を受賞したときは、その演技力と歌唱力に驚くとともに涙が溢れ出た。しかし、この美人女優の本来の持ち味はあくまで明るさにある。
 その明るさを前面に押し出して一躍脚光を浴びたのが、彼女の代表作『プラダを着た悪魔』(06年)(『シネマルーム12』367頁参照)だ。そこでは、メリル・ストリープ扮するファッション誌のカリスマ編集長ミランダと、入社したばかりなのにこの独裁編集長のアシスタントに採用されたアン・ハサウェイ扮するダサい文学少女アンドレアとの間の丁々発止のやりとりが最大のポイントだった。2人の間に入るクッション役の先輩の援助よろしきを得て、アンディは何かとミランダと対立し合いながらも大きく成長していた。
 そんな、アン・ハサウェイが本作では、30歳の若輩ながら、『プラダを着た悪魔』と同じような(?)独裁社長として日々奮闘していたが、やはり何かとムリにムリを重ねている感が・・・。

<やっぱり女同士より、男女のコンビの方がベター?>
 そんなジュールズは、会社の福祉事業として始めたシニア・インターンとして入ってきた70歳の新人ベンに当初は何の興味も示さなかったが、日々少しずつベンの的確な助言を受けていると次第に信頼感が生まれてくることに。それが飛躍的に高まったのは、ベンがジュールズの運転手を務め始めたことと、ベンがジュールズと会社の重役キャメロン(アンドリュー・ラネルズ)との間で交わされていたCEOの招聘を巡る会話を聞き、それにアドバイスを与えてから。また、運転手の仕事の延長としてジュールズの家庭を訪れ、専業主夫をしているマットとも打ち解けて話をするようになると、今やベンはジュールズにとって実の父親以上の存在に。
 過去、『恋愛適齢期』(03年)(『シネマルーム4』331頁参照)や『ホリデイ』(06年)(『シネマルーム13』14頁参照)等で大人の女性の仕事と恋をテーマとして描いてきた、1949年生まれの女流監督ナンシー・マイヤーズが描くこんなストーリーを見ていると、やっぱり、女同士より男女のコンビの方がベター?

<事業の拡大がすべて!そんな人もいるが・・・>
 かつて新しいIT時代の風雲児だったホリエモンこと堀江貴文氏は、刑務所暮らしを経た今も会社経営やTVの世界で独自の地位を築いているから立派なものだ。もっとも、プロ野球の近鉄球団を買収するときの競争相手だった、楽天の三木谷浩史氏が今やプロ野球球団「楽天」のオーナーになっているのを見ると、悔しい思いがあるはずだ。
 このように起業に成功し、自分の分身のような会社が大きくなり、上場にも成功していくと、人間には拡大欲、膨張欲があるから、それに走ってしまう人も多い。「ユニクロ」を中心とした企業グループの持株会社であるファーストリテイリングの柳井正氏などがその典型だ。また、私たち弁護士の業界でも、弁護士事務所の規模の拡大を最大の目標にしている弁護士もいるが・・・。

<ホントに何が大切?それをしっかり見定めなくちゃ!>
 現在ジュールズがデザイナーとしての仕事と経営の仕事を分離し、新しいCEOの招聘を検討しているのはそんな事業の規模の拡大のためだが、そこには大きなリスクがあるのは当然だ。ベンをお供として飛行機に乗って訪問した某CEO候補との面談は思いの他好感触だったらしい。本来、そんな事項の決定は社内に持ち帰り、取締役会にはからなければならないが、ジュールズは一回の面談で即断即決したというから、ベンはその判断を尊重しながらも、何かと不安そうだ。そんな動きの中、宿泊先のホテルで、ある事情によって2人が同じ部屋の同じベットの上に寝ころんで話をするシーンは、いかにもナンシー・マイヤーズ監督らしい面白いシークエンスだ。
 これは見方によってはセクハラともパワハラとも言える状況だが、実は人間はいくつになっても、また男でも女でも、こんな風に弱みを見せることができる状況下でやっと本音を語れるもの。ジュールズにとって会社の仕事はいくら忙しくてもそれはOKだったが、やはり夫の浮気はどうにも割り切れない悩みだったらしい。そんな状況下でいったんはCEOの招聘を決定したジュールズだったが、人生経験豊かで人間力にあふれ、女の涙を拭くためのハンカチの出しどころも心得ているベンのアドバイスを心から受け入れる中、最終的にジュールズが下した決断とは?
 やはり、人間ホントに何が大切?それをしっかり見定めなくちゃ!

<高齢者の再雇用や学生のインターンシップ状況は?>
 2015年最大のニュースは、5月から9月にかけて国会内外で注目された、集団的自衛権の限定行使を可能とする新たな安全保障法制の成立だが、近時は労働法制も大きく変容している。そんな中、一方では定年退職した高齢者を再雇用する制度や学生のインターンシップの制度が注目されている。高齢者の再雇用には政府の援助金がついてくるのが魅力だが、私の経験ではやはりイマイチ・・・。また、私の事務所では毎年夏に某大学の学生2人を2週間ずつインターンシップとして受け入れているが、これは受け入れ側としても面白い。もちろん、学生の質はピンキリだが、中には是非我が事務所に採用したいと思う人材も・・・。
 10月26日付日経新聞は「さあ準備 会社デビュー 内定後インターン」という見出しで、就職内定後に内定先とは別の企業でインターンシップに参加する学生の様子を報道したが、さてその広がりは・・・?「目標が具体的になった」「遊ぶよりもスキル」「自分に足りない点を知る」というメリットがあることはたしかだが、私に言わせれば、それもこれも学生の自覚と主体性の問題に帰着すると思うのだが・・・。
                                  2015(平成27)年10月30日記