洋15-121 (ショートコメント)

「草原の実験」
    

                 2015(平成27)年10月24日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督:アレクサンドル・コット
ジーマ(父親と大草原に住んでいる美しい少女)/エレーナ・アン
マクシム(白人の少年)/ダニーラ・ラッソマーヒン
トルカド(ジーマの父)/カリーム・パカチャコーフ
カイスィン(地元の少年)/ナリンマン・ベクブラートフ―アレシェフ
2014年・ロシア映画・96分
配給/ミッドシップ

◆今年も10月22日から31日までの10日間、東京国際映画祭が開催中だが、昨年の東京国際映画祭で上映されるや、あまりの衝撃に話題騒然となったのが本作。ロシアの新鋭アレクサンドル・コットが旧ソ連で実際に起きた出来事にインスパイアされて作り上げたという本作は、見事、最優秀芸術貢献賞とWOWOW賞の二冠に輝くと共に、第25回キノターヴル映画祭最優秀作品賞等、多くの賞を受賞している。
 本作の舞台となる草原は、その場所も時代も特定されていない。また、本作にはセリフが一切ないから説明過多の近時の邦画とは大違いで、とにかくじっとスクリーンを見つめる中で、考えなければならないが・・・。

◆最初から最後まで私たち観客の目をひきつけるのは、お下げの髪が美しい少女。本作の登場人物は父親トルカド(カリーム・パカチャコーフ)と2人で暮らすジーマ(エレーナ・アン)という名のその少女と、彼女に好意を寄せる白人の少年マクシム(ダニーラ・ラッソマーヒン)と地元の少年カイスィン(ナリンマン・ベクブラートフ―アレシェフ)だけだが、セリフはなくとも草原での彼らの生活ぶりはよくわかる。また、草原には馬がつきものだが、西部劇とは一味違う大草原にピッタリ映える馬の美しさにもうっとり・・・。

◆本作に描かれるストーリーらしきものは、父親がどんな仕事をしているかということと、ジーマをめぐるマクシムとトルカドの三角関係(?)。といっても、今ドキの不倫ドラマではなく、単純に力と力による男同士の決闘(?)だから見ていてすがすがしいが、さてそんな単調なストーリーがいつまで続くの・・・?本作のテーマは一体ナニ?そしてまた、本作のタイトルは一体どういう意味・・・?

◆2011年3月11日に発生した東日本大震災による津波被害の様子は、連日リアルタイムでテレビで見ることができたから、自然の破壊力のものすごさに唖然。クリント・イーストウッド監督の『ヒア アフター』(10年)での津波シーンもすごかったし(『シネマルーム26』123頁参照)、ラース・フォン・トリアー監督の『メランコリア』(11年)(『シネマルーム28』169頁参照)も、ジェフ・ニコルズ監督の『テイク・シェルター』(11年)(『シネマルーム28』174頁参照)もすごかったが、やはりリアルタイムで見る現実の津波被害の大きさには唖然。
 他方、唯一の被爆国である日本は一貫して原水爆実験に反対してきたが、島国ニッポンでは、砂漠で行われている原水爆実験のイメージは全くつかめない。しかし、アメリカはもちろんソ連でも中国でも現実にはそれをくり返してきたが、さてその実態は?

◆それくらいの「予備知識」を持って本作を観れば、本作の衝撃のラストとそのタイトルの意味もよくわかるが、さて何の予備知識もなく本作を観た人は・・・?美しい大草原でくり広げられてきたそれまでの人間の営みと、このラストをどう対比して考えればいいの?そんなショックの大きさのまま映画は終ったが、さてあなたは本作を観て人間の営みというものをどう考える・・・?
                                  2015(平成27)年10月27日記