日15-113 (ショートコメント)

「ギャラクシー街道」
    

                      2015(平成27)年10月9日鑑賞<東宝試写室>

監督・脚本:三谷幸喜
ノア(ギャラクシー街道にあるハンバーガーショップの店長)/香取慎吾
ノエ(ノアの妻)/綾瀬はるか
ハトヤ(スペース警備隊隊員、正義の味方キャプテンソックスの仮の姿)/小栗旬
レイ(ノアのかつての恋人の元舞台女優)/優香
ズズ(カエル型宇宙人)/西川貴教
メンデス(ノエに言い寄るスペースリフォーム業者)/遠藤憲一
ハシモト(ギャラクシー街道を視察中のスペース国土交通省の役人)/段田安則
ムタ(生真面目なスペースドクター)/石丸幹二
マンモ(ハトヤの恋人のスペース警備隊隊員)/秋元才加
トチヤマ(ハトヤの上司のスペース警備隊隊長)/阿南健治
ババサヒブ(レイの夫)/梶原善
イルマ(宇宙一のテクニックを持つと言われるスペースコールガール)/田村梨果
ゼット(スペース客引き)/山本耕史
ハナ(パニックになると強力な電磁波を出すスペースパートタイマー)/大竹しのぶ
堂本博士(ノアの良き相談相手。人の心を持つコンピューター)/西田敏行
謎の男(ハシモトにまとわりつく、無口な白塗りの老人)/浅野和之
2015年・日本映画・110分
配給/東宝

◆三谷幸喜監督の映画はメチャ面白いものが多いし、近時の作品は軒並み興行的にも成功している。『12人の優しい日本人』(91年)が三谷幸喜監督作品だと知ったのは『SHOW-HEYシネマルーム』を書き始めてからだが、その直後の『ラヂオの時間』(97年)、『みんなのいえ』(01年)、『竜馬の妻とその夫と愛人』(02年)は観ていないものの、その後の『笑の大学』(04年)(『シネマルーム6』249頁参照)、『THE有頂天ホテル』(06年)(『シネマルーム9』288頁参照)、『ザ・マジックアワー』(08年)(『シネマルーム20』342頁参照)、『ステキな金縛り』(11年)(『シネマルーム27』191頁参照)、『清須会議』(13年)(『シネマルーム31』174頁参照)はすべて鑑賞している。そんな三谷幸喜が脚本を書き監督した最新作たる本作は完全オリジナルな「SFモノ」で、そのうたい文句は「SF映画史上最も笑えるスペース・ロマンティック・コメディ!!!」というもの。さて、その面白さは?

◆本作の時代は西暦2265年。そんな「近未来」には、太陽系第5惑星(木星)と第6惑星(土星)の間に浮かぶ、スペースコロニー「うず潮」があった。本作のタイトルになっている「ギャラクシー街道」とは、「うず潮」と地球を結ぶスペース幹線道路・ルート246666のことだ。そして、本作の舞台になるのは、ギャラクシー街道の中央にひっそりと佇むサンドサンドバーガ・コスモ店。その経営者は、ハンバーガー好きが高じてハンバーガーの店を持ちたいという夢を実現させた地球人のノア(香取慎吾)だ。
 しかし、ギャラクシー街道が開通してから150年を経過した今、その老朽化は著しく、そろそろ閉鎖の噂も聞こえているらしい。ノアは愛妻のノエ(綾瀬はるか)と共にさまざまな星から「ギャラクシー街道」にやってくる宇宙人たちを「サンドサンドバーガー・コスモ店」でもてなしていたが、客足も少なくなった昨今、遂に店の閉鎖と地球への帰還を決断したらしい。しかし、それでも今日は、いろいろな客がこの店に・・・。

◆サンドサンドバーガー・コスモ店を訪れてくる客はいずれもあまり上質とは思えないが、本日訪れている客は、①マグロバーガーが大好きなカエル型宇宙人で足下がいつも濡れているズズ(西川貴教)、②スペース国土交通省の役人でギャラクシー街道の現状を視察中のハシモト(段田安則)、③巧みな話術で男性のスケベ心をくすぐるスペース客引きのゼット(山本耕史)と、そのターゲットにされている生真面目な中年男でスペースドクターのムタ(石丸幹二)、さらに④ノアのかつての恋人で舞台女優だったレイ(優香)と、かつては大学で宇宙学を教えていたが、セクハラ事件を起こして退職してしまったレイの夫ババサヒブ(梶原善)、⑤スペース警備隊勤務の若者ハトヤ隊員(小栗旬)と、その上司たるトチヤマ隊長(阿南健治)たちだ。
 ちなみに、ノアの店ではスペースパートタイマーのハナ(大竹しのぶ)が働いているが、その愛想の悪さと性格の悪さはピカイチ。そして、本作のストーリー構成上最大の問題は、スペースリフォーム業者でノエに思いを寄せ、執拗に追いかけ回している両性具有の男メンデス(遠藤憲一)が、何とノエを追いかけてサンドサンドバーガー・コスモ店までノコノコと出かけてきたことだ。
 三谷監督は青春群像劇が得意だが、さてサンドサンドバーガー・コスモ店を舞台に展開するこれら個性豊かな地球人と宇宙人たちが織りなす青春群像劇の展開は?

◆三谷監督映画は自らのオリジナル脚本にもとづくものが多いのが最大の特徴で、そのユーモアのセンスはすばらしい。しかも本作は、綿密な時代考証をしながら進めていった前作の『清須会議』とは真逆で、三谷監督がイメージする架空の宇宙を自由に描くことをテーマとしたため、サンドサンドバーガー・コスモ店の外観、内装はもとより、登場人物たちのキャラや衣装、髪型、造型すべてが三谷監督の想像力にもとづく創造物になっている。また、それぞれ個性豊かな登場人物たちが織り成す人間ドラマも、三角関係あり(?)、不倫あり(?)、風俗あり(?)のドロドロ模様を含む恋愛ドラマ(?)だから、すべてのストーリーが奇妙キテレツなものになっている。そこで問題は、私を含む多くの観客がそんな摩訶不思議な三谷ワールドの想像力と創造力を楽しみながらその世界に入っていけるかどうかだが、さてそれは・・・?
 たしかに、私も子供の頃は白雪姫も桃太郎も面白かったし、メリーポピンズも楽しむことができた。しかし、66歳の今、本作のような三谷ワールドを心の底から楽しむことがホントにできる?ラスト近くハトヤ隊員が正義の味方キャプテンソックスに「変身!」する姿を見て、心の底からそれを楽しいと感じその想像力と創造力に感心できる感性を持ち続けている人は一体どれくらいいるのだろうか?少なくとも、私にはちょっとムリだったなあ・・・。
                                  2015(平成27)年10月14日記