洋15-104 (ショートコメント)

「奇跡の2000マイル」
    

                  2015(平成27)年8月22日鑑賞<シネ・リーブル梅田>

監督:ジョン・カラン
ロビン・デビッドソン(ラクダ、愛犬と共にオーストラリア砂漠3000kmの踏破を目指す24歳の女性)/ミア・ワシコウスカ
リック・スモーラン(カメラマン)/アダム・ドライバー
ミスター・エディ(現地の男)/ローリー・ミンツマ
クルト・ポセル/ライナー・ボック
2013年・オーストラリア映画・112分
配給/ブロードメディア・スタジオ

本作冒頭からラストまで、4頭のラクダと黒い犬という「共演者」(?)と共に、出ずっぱりの熱演を見せたミア・ワシコウスカは、『嗤う分身』(13年)等で印象に残っていた女優(『シネマルーム35』未掲載)。それまでもあまりセリフのない個性的な役が多かったが、本作でもミア・ワシコウスカは何が何でもオーストラリアの砂漠を越えて「西の海までの2000マイルの旅」を果たしたいという、かなり変わった24歳の女性・ロビン役を演じている。
 家族や友達から離れ、たった一人でオーストラリア中辺部の町アリス・スプリングスにやってきたロビンが町のパブで働きながら牧場でラクダの調教を学ぶ、導入部のシーンはそれなりに興味深い。しかし、これから始まるとてつもなく広大な西部の砂漠を越える苛酷な女の一人旅の服装が、帽子もなくズボンもなく、あんな格好でいいの?また、毎日地図上にコンパスで自分の位置と進路を確認する作業はしているようだが、食料、水の準備はどこまで計算できているの・・・?

◆本作は現実に1977年に7ヶ月を費やして、たった一人でオーストラリア西部の砂漠およそ3000キロを横断するという冒険を成し遂げた旅の記録を綴った回顧録『TRACKS』を映画化したもの。しかし、本作を観る限り、ロビンは徹底的に雑誌社からの取材を拒んでいたが、それとの整合性は?本作ではロビンは資金を得るため最低限のものとして、写真家のリック・スモーラン(アダム・ドライバー)による写真撮影だけを許可し、その他の写真もインタビューもすべて拒否していたはずだ。だのに、なぜ彼女は現実にはそんな本を書き、映画化まで同意したの?それがサッパリわからないから、本作を観ながら、そのギャップに唖然・・・。

◆本作のチラシには「4頭のラクダと愛犬を引き連れ、壮大な人生の冒険へと向かう―日常に居場所を見失った女性が、自分を変えるために挑んだ奇跡の旅」と書かれている。しかし、スクリーンを観ていると、ロビンの砂漠への旅は十中八九死が待っているとしか思えない。現に、食料や水の様子を見ていると、そう思ってしまう。さらに途中でコンパスを落としたり、やっと見つけた帰り道でラクダを見失ってしまったり、ロビンの一人旅は極めて頼りないし、危なっかしい。
 ところが、その都度車に乗ってやってくる写真家のリックがロビンを助けたり、たまたま人家を見つけたことによってそこで助けてもらったり・・・。そんな偶然ばかりが続くので、アレレ・・・。しかもその間ずっと思うのが、ロビンの服装。リゾートホテルで遊ぶのではなく、命をかけた冒険の旅なのだから、もう少し女探検家らしい服装をしたらどうなの・・・?日傘とまではいかなくても、帽子は不可欠だろうし、靴だってせめてナイキかアシックスの一級品を・・・。

◆ラクダは何日間水なしで生きられるのかは知らないが、人間のそれは大体わかる。しかして、ラストはいよいよロビン様御一行も水が尽きて、のたれ死にかと思えたが、そんな予想とは正反対に目の前には青い海の広がりが・・・。その少し前には、ロビンが眠っている間に愛犬が毒を飲んで死んでしまうという悲しいシーンも登場するが、これだってなぜそんなことになったのかがサッパリわからない。
 タイトルの「奇跡の2000マイル」だけをみれば、どんなスリリングな冒険の旅かと思ってしまうが、現実は意外と単純。たまたまいろんな人と出会い、助けてもらったために結果オーライとなっただけのことだ。そんな風に決めつけてしまうと、ロビンやベストセラーになったという『TRACKS』という伝説的なノンフィクションに失礼だが、私にはそうとしか思えないから、本作はその程度のモノ・・・。
                                  2015(平成27)年8月24日記