はしがき        
 1999(平成11)年11月12日(金)、13日(土)、14日(日)、15日(月)の4日間、大阪弁護士会に所属する弁護士である私は、出身地である愛媛県松山市の愛媛大学法文学部において、はじめて約100名の学生を前に、集中講義を行いました。
 講義のタイトルは「都市法政策」。れっきとした二単位の集中講義です。この日程は既に2月に決定していましたが、偶然にも大学祭とダブってしまいました。そのため受講する学生が少ないのではないかと心配しましたが、予想に反して約100名の学生が熱心に私の講義を聞いてくれました。またこの集中講義の2日目にあたる11月13日(土)の午後(第3限)は、「公開講座」とし、一般市民も参加する「講演」を兼ねたものになりました。
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 4日間の集中講義で私が学生諸君に伝えたかったのは、都市計画法などの複雑極まりない都市法の条文の説明ではなかったし、ほとんど理解不可能と思われる地方分権一括法の解釈でもありませんでした。私が提供したかったのは、大阪駅前再開発問題研究会への参加、阿倍野再開発訴訟の提起さらに震災復興まちづくりの模索などさまざまなまちづくり活動を私が実践する中で感じ、考えたこと、そのものでした。そしてまた、それをストレートに伝えることによって、戦後54年を経た1999年11月時点における「日本の民主主義の問題」、「公と私のあり方の問題」を考える視点を示すことでした。
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 集中講義の単位を付与するために与えた問題に対しては、約80通の答案(レポート)が提出され、また「自由に感想文を書いて欲しい」という要請にも、ほぼ半数の学生から熱い回答がありました。その1枚1枚を丹念に読んでいく中で、多くの学生が都市法政策を切り口とした私のメッセージを受けとめてくれたことが実感でき、私は非常に感激しました。そしてこの感激が本書出版の動機となりました。
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 本書は、その4日間にわたる集中講義をほぼ忠実に再現したうえ、読みやすく編集し直したものです。再現・編集にあたっては、まず4日間の講義を100%完璧に録音したテープを忠実に文章化しました。その枚数は400字詰め原稿用紙で約900枚にのぼる膨大な量でした。そしてそれを読みやすくするため、講義日程の流れを生かしながら大見出しを決め、随時小見出しをつけました。また講義の流れと雰囲気を残すため、配布「レジメ」をそのまま本書末尾に掲載するとともに、重要な「資料」は本文の中に随時、挿入・掲載しました。
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 本書の狙いは、日本の複雑・難解なまちづくり法を解説するものですが、『実況中継──まちづくりの法と政策』というタイトルからわかるとおり、まちづくり法は無色透明なものではなく、時の政治権力のとる都市政策や土地政策に対応して変化するものであるため、地方分権や行政改革の問題さらには土地バブルや金融再生の問題も重要なテーマとして扱っています。また、映画評論や社説・コラムを多用しているのは、都市問題への切り口を理解してもらい、興味をもって実況中継を聞いてもらいたいためです。
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 本書は、私の出身地である愛媛県松山市はどんなまちか、また私が中学・高校時代を松山でどんなことを考えて過ごしたかという話からスタートします。そして「まちづくり法体系化の試み」や「まちづくり法の時代区分」を中心として、タイトルどおり、わが国の『まちづくりの法と政策』について、縦横無尽に『実況中継』します。
 学術書としての価値はさておき、本書は「読める本」に仕上げたつもりです。したがって学生諸君はもとより、戦後五五年の節目を迎え、地方分権のスタートをはじめとしてあらゆるまちづくりのシステムが変わろうとしている今、一人でも多くの皆様が本書を読まれることによって、『まちづくりの法と政策』に興味をもって頂きたいと願っています。
 

  2000(平成12)年 5 月 30 日
                              弁護士 坂  和  章  平