はしがき

 2001年4月24日、「開かれた」総裁選挙の結果、小泉純一郎氏が自民党総裁に選出されました。
そして第87代の内閣総理大臣に選出された小泉氏は、派閥打破人事を断行し、26日発足した小
泉「改革断行内閣」の支持率は今、80%を超えています。これは、混迷を続け、閉塞感に打ちひし
がれていた日本の政治状況の裏返し現象ですが、それはともかく、国民の期待を一身に背負った
船出であることは確かです。
 小泉内閣は「聖域なき構造改革」を掲げ、不良債権の早期処理などと並んで「都市再生」を大き
な施策の1つとしています。これは森内閣が緊急経済対策として掲げたものの踏襲ですが、「小泉
さんなら本当にやってくれそうだ」という期待を持たせるに十分な雰囲気を醸し出しています。
 本年7月には参議院議員選挙が実施されるため、その結果如何によっては、政界再編成を含め、
日本の政治状況に更なる大激震が走る可能性がありますが、何はともあれ、「従来の自民党政治
との決別」、「改革の断行」というモードに入ったことは確かです。
 1993年に、国民の大きな期待を背負い、自ら「新しい歴史の出発点」と評した細川護煕連立政権
が、わずか8ヵ月で崩壊したことを思いおこせぼ、小泉新政権の今後についても楽観できないこと
は当然ですが、「構造改革の断行」という一点においては、大いに期待したいと思います。1945年の
終戦から55年を経た今、私たちの住む日本という国は、良くも悪くもこのような政治状況におかれて
おり、そのような中で改正都市計画法の施行を2001年5月18日に迎えたことになるのです。
 都市計画法は、「母なる法」と呼ぼれる、都市計画の根幹となる法律です。戦後復興を経て、1968
(昭和43)年に成立した都市計画法によって、近代都市法の骨格が完成しました(68年法と呼ぼれて
います)。市街化区域と市街化調整区域の線引き、用途地域、開発許可など、今日おなじみのキー
ワードによって日本の都市計画が進められることになったのです。以降、1970年代の日本列島改造
政策の遂行、1980年代のアーバンルネサンスの展開、未曽有の地価高騰・土地問題の噴出からバ
ブルの頂点へ、そして、そのバブルの崩壊、不良債権の発生、平成の大不況、株価の暴落、デフレ
の恐れ等々、日本の土地や都市をとりまく情勢と経済状況はめまぐるしく変化しました。

 このような杜会の変動に対応しながら、68年法には随時修正が加えられ、1992年には一部の大
改正がなされましたが、線引き、地域地区、用途規制、開発許可などの枠組みは堅持され続けまし
た。しかし、1996年以降、橋本内閣の下で、強力な地方分権・行政改革がおし進められ、ついに都
市計画制度全般についての見直しの審議が開始されました。建設大臣の諮問機関である都市計画
中央審議会は、従来の「都市化社会」から21世紀の「都市型社会」への移行という、時代の変動に
ふさわしい新たな仕組みの都市計画制度を構築すべく、68年法の全面的見直しを開始したのです。
そして、短期集中的な議論を経て、異例の早さで2000年5月19日改正都市計画法が成立・公布さ
れ、2001年5月18日から施行されることになったのです。
 さらに、改正法の具体的運用を委ねられていた政令は2001年3月30日に、また国土交通省令は
4月19日にそれぞれ定められ、いよいよ改正法の全貌が明らかとなりました。

 2001年5月18日から施行される21世紀の改正都市計画法が、真に日本の社会情勢に適合した都
市計画制度になるか否かは、これから検証されることになります。私たち弁護士グループがこの改正
法の解説をQ&Aの方式で出版しようとした意図は序章に書いたとおりですが、とにかく私たちは改正
法が国民に理解されることが何よりも大切だと考えています。「都市計画法なんて難しくてわからない。
また、自分の生活には関係ない」と思われている国民が多いと思います。しかし、それは大きな間違
いであり、都市計画法は国民に密着した法律なのです。そして、また改正都市計画法は、21世紀の
日本のまちづくりはどうあるべきかを考える人すべてにとって、理解しておかなければならない根幹の
法律なのです。「難しい、わからない」と言わないで、是非学習して下さい。
 21世紀を迎え、今後ますます政治・経済・杜会情勢が激動していく中、本書が少しでも日本の都市
計画制度の理解の一助となることを願っています。
 
  2001年6月
                                              弁護士 坂和章平