〔門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟〕


1 門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟とは
 
 大阪府門真市の「門真市一番柳田町北土地区画整理事業」(場所 門真市一番町、柳田町の各一部 面積約6.1ヘクタール)をめぐり、この事業に反対する地元住民らの相談を坂和章平が聞き、坂和を団長とする総勢5名の弁護士で弁護団を組織して、土地区画整理組合の設立認可処分の取消と仮換地指定処分の取消を求めた裁判が門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟です。


2 門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟の経過

  平成2年7月30日 促進区域都市計画決定・区画整理事業都市計画決定
  平成2年10月24日 取消訴訟を大阪地方裁判所に提起
  平成3年6月4日   一審判決言渡し(訴 却下)
  平成3年6月15日  控訴提起
  平成3年10月24日 二審判決言渡し(控訴 棄却)
  平成3年8月19日  大阪府知事、門真市一番柳田町北土地区画整理組合の設立を認可
  平成3年10月28日 府知事を被告として組合設立認可取消訴訟提起
                (平成3年(行ウ)第90号)
  平成4年7月14日  仮換地指定
  平成4年10月9日  組合を被告として仮換地指定処分取消訴訟提起
                (平成4年(行ウ)第56号)
  平成7年7月28日  判決言渡し(組合設立認可取消と仮換地指定処分等の取消)
                (完全勝訴)
  平成7年8月9日   組合・府知事ともに控訴提起
  平成8年2月21日  控訴審で組合と和解成立により終了
  平成8年2月22日  府知事を被告とした事件について、訴の取下げにより終了

                      経過・及び裁判概略メモ


3 一審判決−完全勝訴

 主文(平成7年7月28日言渡)
(1) 平成3年(行ウ)第90号 土地区画整理組合設立認可処分取消請求事件
   原告 辻本仁三郎外25名
   被告 大阪府知事
1 原告辻本仁三郎、同有限会社寿商事、同門口千代野、同辻本吉一、同西澤俊教を除くその余の原告の訴えを却下する。
2 被告が平成3年8月19日にした門真市一番柳田町北土地区画整理組合の設立認可処分を取り消す。 
    (以下、省略)。
  
(2) 平成4年(行ウ)56号 仮換地指定処分取消請求事件
   原告 辻本仁三郎4名
   被告 門真市一番柳田町北土地区画整理組合
1、被告が平成4年7月14日付門一柳組第44号をもってした、原告辻本仁三郎に対する別紙仮換地目録(一)記載の仮換地指定処分を、(・・・中略・・・)取り消す。
    (以下、省略)
                        記者レクチャーレジメなど


4 新聞記事など


 本件判決は、行政が行った組合設立認可処分、そして組合が行った仮換地指定処分が、いずれも誤っていた(違法であった)ことを認定した画期的な判決であったため、新聞各紙などに大きく報道され、話題となりました。
                       新聞記事

                       「区画再開発つうしん」NO308(1995年8月)


5 控訴審および控訴審での和解

(1) 一審の判決言渡し後も、組合は本件事業にかかる工事を続け、組合の公文書において「事業としては、今年度でほぼ完成予定であるので、関係諸官庁の指導の下に本事業の完遂を図る必要があり、その決意を新たにしている」旨、明らかにしました。そこで、坂和(原告住民)は、一審判決が事業を違法と認定している以上、組合に対しては工事を中止するよう要求し、また、大阪府知事に対しては、組合が本件事業のための工事を中止するよう行政指導を行うように申入れをしました。
 また本申入れにもかかわらず、工事を続行した場合は、組合設立認可処分と仮換地指定処分の執行停止の申立等の法的手続をとる旨、通知しました。

(2) 控訴審においては、組合から、敗訴判決を前提とした和解の申入れがなされました。

(3) そして最終的には、平成8年2月21日、@組合は原告らに陳謝する、A桜並木を建設する、B区域内の権利者については「減歩なし」とする、C区域外の隣接原告については基盤整備等を実施する、D原告らの訴訟費用を補填する(解決金を支払う)という内容にて組合側と和解が成立することになりました。そしてこれに伴って、大阪府知事を被告とした事件については、もともとの訴を取下げるという形で終了することになりました。


6 門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟の意義

 府知事が土地区画整理組合の設立を認可するためには、土地区画整理区域内の土地所有者と借地権者のそれぞれについて、3分の2以上の同意が必要とされています。
 反対者がいても、それを排除して団体的な事業を進めていくについて、現行法が定める絶対的な要件です。
 しかるに本件では、土地区画整理事業の反対者が多かったため、借地権者の数を「水増し」しようとした推進派(組合側)は、親子・夫婦間で借地契約を「デッチ上げ」て、借地権者の数を増やし、3分の2の定数をクリアさせていたのです。
 反対派(原告ら住民)は、この点を明確に主張するとともに、各種の証拠書類を提出し、さらに法廷での証人尋問によって「水増し」の実態を暴いたため、一審判決は明快に「賃貸借契約は不自然、不合理で賃借権は認められない」と判断し、「9人の借地権者のうち7人が同意した」ことを前提として組合成立が認可された本件事業については、「実際の借地権者は4人で、うち2人の同意が得られたにすぎない」と認定して、大阪府知事による組合設立認可処分を違法と認定したのです。
 また、原告らへの仮換地処分は、違法に設立認可された組合が行なった処分ですから、これも当然違法と認定したのです。
 本件事業は、大阪府と門真市から約12億円の補助金を受けて実施される土地区画整理事業ですが、このような「公的な」事業について、明確に「借地権者の水増し」と認定されたことは、全国的に見ても、極めて異例のことです。
 私たち原告ら住民側は、ねばり強く、借地権者「水増し」の実態を主張し、多方面からこれを立証したことによって、この画期的判決を勝ちとることができたのです。
 全国の土地区画整理事業の事例で、参考になるケースとして、画期的な意義のある裁判でした。


7 判例集にも掲載

 門真市一番柳田町北土地区画整理事業訴訟の判決は、前述のとおり画期的な意義のある判決であるため、判例集にも掲載されました。
       判例地方自治(ぎょうせい)NO146(平成8年5月号) 65〜69P 掲載